チューリップとは
チューリップは中央アジアから地中海沿岸の高原地帯に生息する、ユリ科の植物です。原種は色や形がさまざまで、草丈も現在のように大きくありません。和名は鬱金香(うこんこう)といい、日本へは江戸時代後期に入って来ましたが、人気が出たのは大正時代になってからです。現代では園芸品種としてたくさんの種類が市販されています。
チューリップの多彩な品種
早生種
チューリップといえばこの形が想い浮かぶはず。早生種には一重咲きのほかに、八重咲きもあります。
中生種(トライアンフ系)
中生種のチューリップにはトライアンフ系やダーウィンハイブリット系があります。トライアンフ系は花色が豊富で覆輪が多く、ダーウィンハイブリット系は一重咲きと原種の交配によって花も大きく、草丈は50cm~70cmにもなります。
晩生種(ビリティフローラ系)
晩生種のチューリップにはユリのように花弁が反り返って咲くユリ咲き系品種や、花弁の縁に深い切れ込みが入るパーロット系、そしてビリディーフローラ系は花弁の中央が緑色をしています。
チューリップの球根の選び方
チューリップの球根を増やすには、最初によい球根を選ばなければなりません。こちらでは、よい球根を選ぶ条件をご紹介します。
よい球根の見極め方
チューリップの球根はキズが付いたり乾燥していると、水の吸収が悪くなり根が生えてきません。球根を購入するときは、まず触れてみて重みがあり、硬くしっかりとしたものを選びましょう。
わるい球根の見極め方
チューリップの球根で避けるべき条件は、キズがあるものや根が出はじめているものです。球根は根が出る部分がとても重要で、この部分が茶色に変色しているものもやめましょう。
球根の皮はむけていても大丈夫
チューリップの球根を購入するとき茶色の外皮がむけていても、成長には影響ありません。むしろ球根の生産者は、植えるときに外皮をむいてしまいます。その理由は根が出る部分を外皮が覆っていると、まっすぐに根が伸びる邪魔となるからです。
見た目では分からない球根の病気
チューリップの病気にはウィルス感染によるモザイク病や、チューリップ・ブレーキング・ウィルス(TBV)、褐色斑点病などがあります。治療できないモザイク病は雨が多いことで発生し、葉や花に色割れを起こします。病気を広げないためにも、開花する前のつぼみのときに摘み取ることが一番の予防方法です。
治療よりも予防を
チューリップのウィルス感染は、アブラムシによっても広がります。ウィルス性の病気は開花後に勢いを増すので、感染を広げない方法として1つでも病気の株を見つけた場合は抜き取り、アブラムシ防ぐ肥料などを利用して予防をしましょう。
チューリップの球根の増やし方
チューリップの球根を増やすには、まず正しい植え方をする必要があります。その準備をしていきましょう。
チューリップの増やし方①植える時期と用土
チューリップの球根を植え付ける時期は、紅葉が見ごろとなる11月です。球根の根が伸びる温度は10度~15度といわれ、9月から販売されていますが、この時期はまだ温かいので植えてはいけません。用土は市販の培養土か、水はけがよくなるよう赤玉土と腐葉土を混ぜて使います。
チューリップの増やし方②肥料
チューリップの肥料は球根自体に栄養があるので、それほと必要ありません。植え付けるときに元肥えとして緩効性肥料か、または堆肥を地表面に与えます。葉が出てからは液肥を週に2回~3回与えると、大きな花が咲きます。開花後のお礼肥えは球根が腐る原因になるので、チューリップでは与えません。
チューリップの増やし方③植え付け方
チューリップを地植えにするときは、球根2つ分くらいの深さに埋めます。鉢植えの場合は根が十分に張れるよう深さが30cmはあるものを用意し、球根1つ分の深さに埋めましょう。株間は地植えは2つ分、鉢植えは1つ分くらいを空けます。
球根を植える場所
チューリップを地植えにするなら、日当たりのよい場所を選びましょう。鉢植えも室内ではなく日当たりのよい外へ置きます。チューリップは開花するための条件として4度~-9度の寒さが必須です。
チューリップの増やし方④水やり
チューリップの球根は根を張るために水が必要です。球根を植えて2週間は水やりを忘れないように注意しましょう。冬場はとくに忘れると球根が乾燥し、あわてて与えても後の祭りとなって水を吸収しなくなり、葉は育ちますが花が咲きません。
水やりのポイント
チューリップの水やりのポイントは、時間を掛けてたっぷりと与えることです。一度にたくさんの水を与えても、土が水分を含む前に流れてしまいます。そこで、ジョウロにいっぱいの水を、数回に分けて与えてみましょう。しっかりと水を含んだ目安は、鉢植えを持ち上げてずっしりと重くなっていれば大丈夫です。
水やりを忘れない工夫
なにも植わっていない鉢植えや花壇は水やりを忘れがちです。そうならないために、チューリップの球根と一緒に草花を植えるようにしてみましょう。冬は雨が当たるように軒下から出しておくと、水やりの手間を省けます。
チューリップの増やし方⑤花摘み
チューリップの球根を増やすには、花を摘む必要があります。数日間ほど花を愛でて花摘みをしますが茎は残して、花びらのすぐ下で折り取りましょう。このときハサミは病気の感染が心配なので、手でちぎり取ります。摘み取った花びらは地面に放置せず、集めてコンポストなどへ処分しておくと病気の予防になります。
球根を大きくしたい場合
チューリップの球根を増やす条件として花を咲かせるエネルギーを減らすため、開花後ではなくつぼみの状態で花摘みをします。すべてのつぼみを摘み取のが心苦しいならば、数個のつぼみを残しておくのもよいでしょう。
花摘み後も水やりを
チューリップの花摘みをした後も、葉が緑色をしている時期は水をしっかりと与えます。花が咲く時期に球根も大きくなるので、開花後はなるべく早めに摘み取り、葉は全部残します。
チューリップの掘り上げ方
いよいよチューリップの球根を堀り上げます。大切に育てた球根をキズ付けないように、上手な掘り上げ方法や時期についてご紹介します。
チューリップの掘り上げ方①時期
チューリップの球根は葉が黄色くなった時期を目安に掘り上げます。品種によって成熟度が違うので、1つ試し掘りをしてみて外皮が茶色くなっていれば堀り上げ可能です。夏になると土の温度が上がってくるので、梅雨前(5月~6月ごろ)に掘り上げましょう。
チューリップの掘り上げ方②収穫
チューリップの球根を収穫する場合、キズを付けないよう茎を目印にシャベルは離れた場所へ入れます。球根が見えてきたら手で全体をひねるように持ち上げましょう。球根は分球という小さな球根がたくさん付いている状態なので、それぞれを切り離して保存します。
チューリップの掘り上げ方③保存
チューリップの球根を収穫した後は、土は水で洗わずに手で落とします。同様に茎と根も取り除き、新聞紙の上に広げて風通りのよい日陰に置いて表面が乾く程度に自然乾燥させます。保存方法は軽く湿らせた「バーミキュライト」または「おがくず」をビニール袋に入れて、熱がこもらない涼しい場所で保管しましょう。ビニール袋の上部には空気穴をいくつか開けて置きます。
まとめ
チューリップの花はたくさん咲いていてもひとつであっても、かわいらしさは同じです。小さな球根は翌年に花を咲かせませんが、庭の片隅へ植えて置くと時間を掛けて成長すればりっぱな花を見せてくれます。それを楽しみに、小さな分球も捨てずに育ててみてはいかがでしょうか。
出典:BOTANICA