はじめに
庭木として有名なモッコクは、プロのみならず素人にも人気の高い樹木です。しかし、素人が剪定をするときには、細心の注意を払いながら行う必要があります。どのような点に気をつけるべきなのか、育て方を含めてご紹介していきます。
モッコクとは
モッコクは園芸店やホームセンターでは「モッコク」か「木斛」の表記で販売されています。ツバキ科の常緑樹で、庭木として古くから愛されており、江戸時代の庭造りには欠かせない樹木のひとつでした。その風格漂う佇まいは、「庭木の王様」という愛称で親しまれているほどです。
名前の由来
モッコクは、セッコクに似た香りの花をつけることから江戸時代に命名されたと言われています。セッコクとは、日本の中部から南の地方にかけて広く分布する小型のランです。大木のほか、岩の上にも着生するセッコクは、漢字では「石斛」と表記します。その石斛とよく似た香りの花をつける木だから「木斛」なのですね。
モッコクの特徴
特徴①花と実
モッコクは夏の時期に花を咲かせ、秋の時期になると小さな赤い実を一気に実らせます。花は白や淡い黄色のものが一般的ですが、なかにはピンク色の花をつけるものもあります。葉にはツバキ科特有の光沢があり、深い色合いの幹には経年につれ風格が出てきます。
特徴②雌木と雄木が存在
モッコクには雌木と雄木が存在します。雌木は小さな赤い実をつけますが、雄木は実をつけません。そのため素朴な木を育てたい場合は雄木で、季節感を味わいたい場合は雌木を選ぶのがおすすめです。
種は出回っていない
ただし、モッコクの雌木と雄木は種では出回っていません。そのためモッコクを庭木として育てたい場合は、苗木から購入して植えつけましょう。苗から育てる場合は、しっかりとした庭木になるまでに5年から7年程度かかります。根気は必要ですが、剪定によって自分好みの形に育てられるというメリットもありますね。
特徴③木材としての使用も可能
庭木として人気があるモッコクですが、実は木材として使用されることもあります。一般的な材質ではありませんが、加工しやすく、床の間の柱や寄木細工などに使用されます。一般家庭でも、DIYなどに重宝しそうですね。観てよし、使ってよしなところも、モッコクの魅力のひとつと言えるでしょう。
特徴④寒さに弱い
モッコクには寒さに弱いという特徴もあります。モッコクは比較的暖かな気候では育ちやすいものの、寒い気候では育ちません。ですから、元気に育てたい場合は植える場所をしっかりと考えてあげる必要があります。初心者には少し難しいかもしれませんが、育て甲斐のある庭木ですので、決心がついたらぜひチャレンジしてみてくださいね。
モッコクの剪定方法
剪定時期
剪定を行ううえで、まず知っておかなければならないのが剪定時期です。モッコクの剪定時期の目安は、夏に入る直前の6月と、秋から冬に変わる11月の年2回です。他の木と比べて成長速度がゆるやかなモッコクは、定期的な剪定によって自分好みに成長しやすくなります。
剪定方法
剪定は清潔な剪定ばさみで行いましょう。枝が絡み合っている部分の、元気がない枝を切り取ります。枝が3つに分かれている場合は、真ん中の枝を切るようにしましょう。育てたい枝を残し、それ以外の枝を切ることによって、残した枝に栄養が行き渡ります。
ボタニ子
剪定のときは、枝だけでなくできれば葉っぱも剪定してあげましょう。育てる葉っぱだけ残せば、残した葉っぱがよりしっかりと育ちます。
剪定の目安
きれいに育てるためには葉っぱや枝を剪定していくことが大切ですが、剪定のしすぎにも注意が必要です。剪定のしすぎは無意味に木を傷つけてしまうことになり、最悪の場合は大切な木が枯れてしまいます。葉っぱや枝をきれいに剪定した際に、反対側が透けて見える程度が剪定の目安です。
ボタニ子
剪定をやらない・上手にできていないと、病害虫の被害にあう可能性があります。切りすぎに注意しつつ、剪定をしっかりと行いましょう。
モッコクの育て方
剪定も大切ですが、モッコクをきれいに育てたい場合は育て方も把握しておく必要があります。庭木として品格ある美しい姿に育つよう、育て方を把握して手間をかけてあげましょう。
植える場所
モッコクを育てる際にまず意識したいのが植え場所です。植える場所を間違えると、上手に手入れをしていたとしても枯れてしまう可能性があります。前述のようにモッコクは寒さに弱いので、日当たりがよい場所に植えないといけないのですが、直射日光にも弱いので西日が当たりすぎないところを選びましょう。
土選び
土はなるべく水はけがよいものを選びましょう。モッコクを育てる際には水はけがかなり重要で、水はけが悪いと水分がたまって病気になってしまう可能性があります。
水やりの頻度
水やりのタイミングは、土が乾いている状態のときです。ただし水やりの頻度は、鉢で育てるか地植えで育てるかによって変わります。鉢植えの場合は水はけがよいので早い頻度であげるべきですが、地植えの場合は土がしっかりと水を蓄える場合が多いので、土の状態をよく確認してからあげるようにしましょう。
ボタニ子
水やりの回数や量が少ないと枯れてしまいやすく、逆に水やりの量や回数が多いと病気になってしまいやすいので気をつけましょう。
肥料の頻度
栄養となる肥料は、モッコクの場合は基本的には必要はありません。肥料をあげすぎてしまうと、栄養を過剰に摂取しすぎて逆に枯れてしまう可能性があります。肥料をあげるとしたら、モッコクを育てていて元気がないような場合です。遅効性の肥料を、2月から3月の範囲にあげるのがおすすめです。
支柱が必要
苗から育てる場合は、支柱を立ててあげましょう。そのまま育てていてもきれいに育つのですが、風が強かったり雨が強かったりすると、木が倒れてしまう可能性があります。
モッコクの育て方まとめ
- 日当たりがよく、西日が当たりすぎない場所に植える
- 水はけのよい土を選ぶ
- 土が乾いている状態を確認して水やりをする
- 肥料は基本的にあげない
- 支柱を立てる
モッコクの病気や害虫対策
最後はモッコクの病気や害虫対策の方法についてご紹介していきます。モッコクは繊細なので、害虫や病気になってしまうと枯れてしまいます。病気や害虫対策は、しっかり把握しておきましょう。
すす病の病気対策
すす病はその名のとおり、枝や葉っぱがまるですすがかかったような状態に変わってしまう病気です。すすがかかっているように見える部分は復活しないので、除去を行う必要があります。害虫の糞にカビが生えることによってすす病になるので、害虫に対する薬剤散布をして対策をしましょう。
ハマキムシの害虫対策
モッコクにつきやすい害虫はハマキムシです。ハマキムシは葉っぱを糸で丸めて葉巻状にしてから食べる虫です。放置してしまうと葉っぱがボロボロになってしまうだけでなく、糞をしてそこからカビが生え、すす病になる可能性があります。ジメジメした場所や夏の時期を好むため、剪定で通気性をよくして対策を行うのがおすすめです。
ボタニ子
葉っぱが独特な形になるので、ハマキムシがいる場合はわかりやすいです。数匹いたら大量発生している可能性が高いので注意しましょう。
まとめ
モッコクは繊細な庭木ですが、手をかければかけるほど美しい姿を披露してくれます。特に白・黄ピンクの花を咲かせる夏の時期と、小さな赤い実をつける秋の姿は見ものです。ぜひ今回紹介した内容を参考に樹形を整えて、庭木の王様の風格をあますことなく堪能してくださいね。
出典:写真AC