タラヨウの概要
タラヨウ(多羅葉)は「はがきの木」という別名を持ち、日本の本州中部以西~九州に分布している常緑性高木です。雌雄異株の木で開花時期に入ると、それぞれ雄花、雌花をつけます。秋になれば雌株に実がつきますが、実際に結実するのは2年~3年に1回のことです。また、この木には葉裏に傷をつけると、その痕跡が黒く残るという珍しい特徴があります。昔はこの特性を情報のやり取りや占術に利用していました。
タラヨウの基本データ
学名 | Ilex latifolia |
科名 | モチノキ科 |
属名 | モチノキ属 |
別名 | はがき(葉書)の木、郵便局の木、ジカキバ(字書葉)、エカキバ(絵描葉) |
原産地 | 日本(本州関東~九州)、中国 |
草丈・樹高 | 8m~15m |
用途 | 庭木、公園樹、街路樹、寺社の植栽 |
開花時期 | 5月~6月 |
花色 | 黄緑色 |
名前の由来
紙が発明される前の時代の人間たちは、さまざまな媒体を使って文字を書き残していました。木簡や羊皮紙、パピルスなどが有名ですね。古代インドの場合は、植物の葉を加工したものを媒体にしていました。これを「貝多羅葉(ばいたらよう)」、略称で「貝葉(ばいよう)」といいます。この貝葉の原材料はタラジュ(多羅樹)という木です。このことと、字が書き残せる特徴とを結び付けて、「多羅葉」という名前になりました。
はがき(葉書)の語源
タラヨウの葉は文字が書けるという特徴から、戦国時代においては情報のやり取りに利用されていました。これがはがき(葉書)の語源になったといわれています。「はがきの木」という別名の由来でもありますね。また、1997年(平成9年)には、当時の郵政省(現在の日本郵政公社)によって「郵便局の木」に制定されています。そして全国各地の郵便局に、タラヨウの植栽が奨励されました。
おもに中部地方以西に分布しているタラヨウだけど、関東などにも植樹されているから、意外と身近な木でもあるんだよ。
タラヨウの特徴
特徴①字が書ける
タラヨウの最大の特徴は葉の裏面に字が書けることです。葉は肉厚で表面に光沢があります。長さは10cm~20cmほどです。この葉の裏に釘や爪などで字や絵を書くと、その部分が黒く変色します。しかも枯れても残るため、比較的長い間記録として残すことが可能です。この特徴を活かして、平安時代は経文の記録、戦国時代は情報のやり取りに利用されていました。
タラヨウの葉を火であぶると、黒い模様が浮かび上がります。昔はその模様で吉凶を占っていたんですよ。
特徴②赤い実
雌雄異株の植物であるタラヨウは、秋になると雌株に赤い実をつけます。とても小さい実で直径8mmほどしかありませんが、たくさんの実をつけるので見応えがありますよ。ヒヨドリなどの鳥によく食べられます。なお、タラヨウの実は有毒ではありませんが、エグ味が非常に強く食用には向きません。口にしないように注意しましょう。
特徴③葉(新芽)は茶になる
タラヨウの葉、特に新芽は茶の代用品として用いられています。中国海南島産のタラヨウの新芽で作った「苦丁茶(くていちゃ/くちょうちゃ)」は、美容と健康によい高級品質の茶として人気です。代謝促進や便秘改善に効果があるとされ、「減肥茶」とも呼ばれています。苦丁茶は中国では2000年前の宮廷へ献上されていたという、古い歴史を持つ茶です。ただし、とても苦い茶のため飲む際には注意しましょう。
苦丁茶の名前は「苦(にがい)」と「丁(ねじる)」という2つの言葉に由来しているんだ。
とても苦いことと、葉を棒状にねじって作ることから、この名前がつけられました。
苦いけど昔は宮廷に献上されていただけあって、美容・健康効果は抜群に優れているんだよ。
風邪の予防や頭痛・疲労・発熱・コレステロールなど、多様な症状のサポート効果がある健康茶として中国では飲まれています。
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タラヨウが「はがき(葉書)の木」「郵便局の木」と呼ばれている由来です。