ツリフネソウ(釣船草/吊舟草)とは?
ツリフネソウは、日本全国どこにでも分布する、特徴的な形をした赤紫色の花が鮮やかな野草です。影の多い湿った場所や川辺に群れで生えていることが多く、夏から秋にかけて赤紫色の花を一面に咲かせる姿は見応えがあります。きれいな花が魅力的ですが、有毒植物のため危険です。今回は、ツリフネソウとはどのような植物なのかご紹介します。
ツリフネソウの基本情報
分類 | ツリフネソウ科 ツリフネソウ属 |
学名 | Impatiens textori |
別名 | ムラサキツリフネ(紫釣船) |
英名 | touch me not |
分布 | 東アジア、ヨーロッパ、カナダ、北アメリカ |
生態 | 一年草 |
草丈 | 40~80cm |
花色 | 赤紫、白色 |
開花時期 | 8~10月 |
日本でツリフネソウが見られる地域は、北海道から九州まで全国です。夏から秋にかけて、赤紫色の花を咲かせますが、ごくまれにシロツリフネと呼ばれる品種の、白色の花を咲かせるものもあります。「キツリフネ」というツリフネソウによく似た植物があり、キツリフネが黄色の花をつけることから、別名「ムラサキツリフネ」とも呼ばれています。
有毒植物のため注意が必要
ツリフネソウの花の奥には甘い蜜がたっぷり詰まっています。子どものころに、蜜を吸って味わったことのある人もいるのではないでしょうか。しかし、ツリフネソウには、植物全体に有毒性があり、花や葉自体を食べると吐き気などが起こるため注意が必要です。
名前の由来
ツリフネソウ(釣船草/吊舟草)の名前の由来は、花の形が、釣り船のように見えたり、茎から舟に似た形の花が吊るされているように見えたりすることから付けられました。学名の「Impatiens」には「我慢できない」という意味があります。本来は熟した果実から自然と種がこぼれ子孫を残しますが、ツリフネソウは、果実がある程度熟すと、さやを触るだけで種子が弾け飛ぶ性質があり、この様子が、学名と、英名「touch me not」の名前の由来です。
ツリフネソウの野草としての特徴
ツリフネソウは群れで生えていることが多く、草丈も比較的大きくなります。特に夏から秋にかけてはよく目立ち、赤紫色の花が茎から吊り下がるように咲くのが特徴的です。ツリフネソウの特徴と、ツリフネソウによく似たキツリフネとの見分け方についてご説明します。
葉・茎の特徴
茎は赤みがかった緑色で、地面に対し垂直に縦に高く伸びます。葉は茎のそれぞれ別の場所から互い違いにつき、葉の形は長さが5~13cmほどの比較的大きな楕円形です。葉に毛は生えておらず、縁がギザギザとした鋸歯型をしています。
花の特徴
ツリフネソウの花は、赤紫色の花びらに黄色の模様が入っており、3枚の花びらと3枚のガク片が合わさって1つの花を形成しています。花の後ろ側まで伸びる「距」と呼ばれるガク片の1つがあり、ツリフネソウの距は、先端が渦巻きの形をしているのが特徴です。距にはたっぷりの蜜が詰まっており、昆虫が花粉を運ぶことで子孫を残します。また、通常ツリフネソウ科の植物は、葉の下側に花を咲かせますが、ツリフネソウは、葉の上側に花を咲かせる、他とは異なる特徴があります。
果実・種子の特徴
1~2cm程度の緑色の果実をつけます。果実がまだ未熟な時は、空に向かって伸びるように成長しますが、花のつき方と同じように、吊り下げられたように垂れ下がってくると、果実が成熟した証拠です。成熟した果実のさやに触れると、中から種子が弾け飛び、広い範囲に種子を拡散させます。
キツリフネとの見分け方
ツリフネソウとキツリフネの見分け方は、葉と花の特徴にあります。キツリフネの葉色はツリフネソウよりもやや薄い緑色をしており、葉の縁にあるギザギザはツリフネソウのほうが細かく鋭いです。花がついている場合は、キツリフネは葉の下側に黄色の花を咲かせるため、簡単に見分けることができます。また、ツリフネソウの花の特徴である距の先端の渦巻きは、キツリフネにはありません。
ツリフネソウの花言葉
ツリフネソウの花言葉には、「安楽」「心を休める」「期待」「詩的な愛」「私に触れないで」の意味があります。「私に触れないで」の意味は、学名と英名の名前の由来にもなっている、果実のさやに触ると種子が弾け飛ぶ様子から付けられました。
プレゼントする際の注意点
ツリフネソウは、9月19日の誕生花です。ツリフネソウには素敵な意味の花言葉がたくさんあり、誕生日のプレゼントとして贈るのに向いています。しかし、「私に触れないで」という花言葉は印象があまりよくないため、ツリフネソウをプレゼントに贈る場合は注意が必要です。誤解を招くことのないよう、ツリフネソウを人に贈る際は、素敵な意味の花言葉を書いたメッセージカードを添えて、贈ってみてください。
まとめ
ツリフネソウの野草としての特徴や見分け方、花言葉についてご紹介しました。日本であればどこででも、赤紫色のツリフネソウの花が群生して咲いている様子を見ることができます。機会があれば、ツリフネソウの花が一面に咲きほこる景色を、一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。
出典:写真AC