アカザとは
アカザは日本全国の畑や荒れ地で見られる双子葉植物です。花を咲かせ、種を残して枯れる1年草です。草本から木に変わることから低木としても分類されます。ヒユ科に分類され、種類は1400~1500種あります。まずはアカザの基本情報から見ていきましょう。
基本情報
学名 | Chenopodium album L. var.centrorubrum Makino |
英名 | Fat hen,Lamb’s Quarters |
和名 | 赤座 阿加佐 |
生薬名 | 藜(レイ) |
分類 | ヒユ科アカザ属 |
原産地 | インド |
アカザの原産国はインドです。古くは中国経由で日本へ伝わりました。薬草としての側面から、生薬として用いられ、平安時代の書物にアカザの名が残されているのです。また、古い遺構の土にアカザの種が含まれていることから、食用としても重宝されていたことが窺えます。詳細は後ほど紹介しますね。
アカザの学名の意味
アカザの学名のchenopodiumは、ギリシャ語でchen=ガチョウ、podion=小さい足を意味しています。葉の形がガチョウの足に似ていることからこの名前がつきました。
初めは食用に栽培されていたものが、徐々に野生化していったよ。
繁殖力の強い植物なんだね。アカザのことをもっと知りたくなってきた。
アカザの英名の意味は“鶏”?
英名のFat henは、丸々とした雌の鶏という意味で、鶏の餌としても利用されています。“丸々とした鶏”という言葉がつくことから、栄養が豊富なアカザを食べることで、健やかに鶏が育つ様子がわかります。
“藜”という漢字の意味
中国の古典である菜根譚には、アカザが登場します。藜羹という2文字が書かれており、「レイコウ」と読みます。粗食という意味です。アカザを具にしたお吸い物を意味します。菜根譚の著者である洪自誠は「足るものを知っている者は、アカザのお吸い物のような粗末な食べ物であっても美味しいと思い…(中略)…心は王より勝っている」と書いています。
その昔はアカザが身近な野菜だったことがわかるわね。次はアカザの特徴について紹介するね。
さまざまな意味があるんだね。知らないことばかりだったよ。意味を知ると賢くなった気分。
アカザの特徴
アカザはシロザの変種で、若芽に赤い粉がついたものをアカザといいます。茎は1~1.5mの高さまで伸びます。初めは食用や生薬に用いられる葉が育ちますが、次第に茎の繊維質が硬くなり、木質化するのです。葉の形は菱形に近い三角で、縁はギザギザとしており、葉の形の分類では鋸状にあてはまります。
アカザの花
赤い花を9~10月に咲かせ、蕾のような花は小さく丸い形をしており、密集して咲きます。粒のように見える花は雄しべが5つあり、花柱は2つです。花が咲き終わると花被片は胞果を包みます。花粉を風に乗せて運ぶ、風媒花であるため花粉が飛びやすいことが特徴です。花がつく頃は総状花序で次第に広がりを見せ、円錐花序の形をとります。
杖になるアカザの木
木質化した部分は、杖として昔から重宝されてきました。松尾芭蕉も“宿りせむ藜の杖になる日まで”と詠んでいます。現代語に訳すと、宿りせむ=「泊まらせてもらおう」、藜の杖になる日まで=「藜が杖になる日まで」です。旅の途中の芭蕉が和尚のもてなしを快よく思い、藜が木となり杖となる時期まで泊まりたいと思ったことがわかる句です。軽くて丈夫な藜の杖は、良寛和尚や水戸黄門など多くの偉人を魅了しました。また、アカザの杖は中風に効くという俗説が流れるほどでした。今でも、道の駅などで購入することができます。
アカザは木質化する上に杖になるとは、暮らしに役立つ植物だね。
アカザの魅力はまだ尽きないのよ。どんどん紹介していくわね。
生薬としてのアカザ
アカザは薬草で、生薬として効能があります。生薬としてのアカザの活かし方を紹介します。
アカザ茶として服用する
アカザの若葉を天日でよく乾燥させます。天候を気にせずに行うには、フライパンで煎り乾燥させる方法もあります。乾燥させたアカザの葉を、湯で煮出し服用します。葉を煮出すときは、鉄と銅製の鍋は避け、土鍋など焼き物が適しています。煮出した煎汁は朝・昼・晩の1日に3回、食間に服用します。1回分の服用量は、100mlまでです。飲みすぎないようにしましょう。
アカザ茶の効能
アカザ茶の中に含まれるオレイン酸とリノール酸が、さまざまな生活習慣病に働きかけます。高血圧・動脈硬化の予防・心筋梗塞の予防・脳こうそくの予防など効果的です。また、胃を強くすることにも役立ち、ビタミンが豊富でお腹の調子を整えます。
アカザのお茶を服用するときの注意点
- 通院されている方、持病のある方、妊娠されている方は、服用してよいかを医師に相談してください。
- 1日の摂取量を守り、飲みすぎないようにしましょう。
- 体調が優れない場合、体質に合わない場合は飲むことを中止しましょう。
アカザの効能
薬草としてのアカザは次のような症状に効果があります。アカザの効能は、のどの痛み・利尿作用・滋養強壮・歯痛・虫刺され・胃を強くするなどです。虫刺されには、生の葉の汁を塗ります。以下にアカザの他の使用法を紹介します。
諸症状へのアカザ使用法
文献から引用した、アカザの生薬としての使用法を紹介します。
全草/のどの痛みに乾燥茎葉を20g、水500ccで半量に煎じ、1日に3回分服します。いぼ、あざをとる秘法として大塚敬節博士は、アカザ全草を黒焼きし、石灰と砥粉を等量混ぜて、それが隠れる程度水を入れ、糯米5~6粒を入れ、日に当てておくと粘膜ができます。これを幹部に塗り、和紙で覆います。
アカザにはさまざまな効果が期待できるわね。次のページで、アカザの仲間を見ていきましょう。
出典:写真AC