ハシリドコロの見分け方
野草は独特の風味と苦みが好まれ、栽培されているもののほか、野山で摘んだものを食べられることも多いです。ハシリドコロを食べることがないよう、ハシリドコロと間違えやすい野草の特徴と見分け方を紹介します。
フキノトウとの違い
これは、フキノトウの芽の写真です。フキノトウの芽は、成長するにつれて硬くなり苦みも強くなるため、新芽の柔らかいものを好まれます。新芽のフキノトウは、ハシリドコロとの違いがわかりにくく誤食されることがあるため、ハシリドコロとフキノトウの見分け方は、ぜひ知っておいてください。
フキノトウとは
和名 | フキ、フキノトウ |
英名 | Petasites japonicus |
科・属 | キク科・フキ属 |
分布 | 北海道から九州まで日本全国 |
草丈 | 30cm〜70cm、品種により2m以上 |
花期 | 2月〜3月 |
春が来たことを告げる山菜として、フキノトウを思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。フキノトウは、早春に芽を出し、花を咲かせた後、葉柄を伸ばしながら葉が大きくなります。この花のつぼみがフキノトウ、葉や葉柄がフキです。フキノトウは天ぷらやふきのとう味噌に、フキは煮物や佃煮にして食べられています。
フキノトウとの見分け方
ハシリドコロの新芽の写真です。ハシリドコロとフキノトウのの新芽はよく似ていますが、毛とつぼみの違いが、2つの野草を見分けるポイントです。フキノトウの新芽には白い毛が生えていて、葉を開くと中に花のつぼみが入っています。ハシリドコロの新芽は、毛が生えておらず、葉を開いてもつぼみがありません。この違いをしっかり確認して、間違えて食べないようにしましょう。
ハシリドコロとフキノトウの違い
- ハシリドコロの葉には、毛が生えていない。フキノトウの葉には、毛が生えている。
- ハシリドコロの新芽には、花のつぼみがない。フキノトウの新芽には、花のつぼみがある。
オオバキボウシとの違い
オオバギボウシは、湿った場所に生えていて、葉が開かずに丸まっている若芽の様子がハシリドコロと似ていて、間違えられることがあります。オオバギボウシは、バイケイソウとも間違われることがあります。この機会に、オオバギボウシの特徴も理解しておきましょう。
オオバギボウシとは
和名 | オオバギボウシ(うるい) |
英名 | Hosta sieboldiana |
科・属 | ユリ科・ギボウシ属 |
分布 | 北海道から九州まで日本の広い範囲 |
草丈 | 50cm~100cm |
花期 | 6月~8月 |
オオバギボウシは、春に食べる山菜の「うるい」としてご存知の方も多いのではないでしょうか。うるいは、山や野に野草として自生しているほか、食用に栽培もされています。クセがなく、様々な調理法で食べられています。オオバギボウシは、名前にもあるようにシェードガーデンを色鮮やかな緑で彩ってくれるギボウシの仲間です。
オオバギボウシとの見分け方
この写真は、ハシリドコロです。見分け方のポイントととなる違いは、葉です。ハシリドコロは茎から葉が出ていますが、オオバギボウシには茎はなく、葉の1枚1枚が直接地面から伸びています。また、色にも違いがあり、ハシリドコロは濃い緑色で、オオバギボウシのほうは黄緑色です。
ハシリドコロとオオバギボウシの違い
- ハシリドコロには茎があり、茎から葉が出ている。オオバギボウシには茎がなく、葉は地面から伸びている。
オオバギボウシについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。間違えやすい野草はハシリドコロだけではないので、ぜひ読んでください。
ハシリドコロの薬への利用
ハシリドコロは、ハシリドコロの全部分に薬となる成分を含んでいますが、特に多い部位である根と根茎が、ロートコンとして薬の原料に利用されています。
ハシリドコロの処理方法
ハシリドコロの根と根茎を、天日でしっかり乾燥させます。それからアルコールに浸して、薬効成分を根から抽出します。これがロートエキスで、薬の成分を抽出し、安全に利用するには、高い技術が必要です。この後粉末にして薬に配合したり、薬効成分だけを取り出して利用されたりします。
ハシリドコロの薬効成分
ハシリドコロの持つ毒性成分のうち、ヒヨスチアミンとアトロピン、スコポラミンが薬効を持つ成分です。これが、ロートエキスの主成分になります。また、アトロピンとスコポラミンは、それぞれ単独で薬に利用されています。薬を作るときに、中毒症状を起こさないように加減してあるので、決められた薬の使用量で中毒症状を起こすことはありません。
ハシリドコロの使われている薬
ハシリドコロから作られる代表的な薬は、「ロートエキス」です。ロートエキスは劇薬に分類されています。劇薬とは、効果が強く取り扱いに注意が必要な薬です。ロートエキスは、胃やお腹の痛み止めの効果があります。薬局で売られている胃腸薬にも配合されているほど、広く使われていて効果も期待できる薬です。
ロートエキスにも含まれている、ハシリドコロの毒性成分のうち、アトロピンとスコポラミンは、それぞれ単独に薬として利用されています。アトロピンは、注射薬が胃やお腹の痛み止めに、目薬が目の見え方の調節をする薬として、スコポラミンは、注射薬が麻酔薬の副作用を抑える薬として使われています。
まとめ
ハシリドコロは、春に芽を出し、夏には葉が枯れてしまう野草です。しかし、ハシリドコロの根が地面の中で成長し続けるので、多年草に分類されます。ハシリドコロは、草全体に毒を持っており、誤って食べてしまうと中毒が出てしまいます。ハシリドコロと間違えやすい野草は、フキノトウです。ハシリドコロの特徴や他の野草との違いを覚えて、春の野草摘みやハイキングを楽しみましょう。
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出典:写真AC