ラクウショウってどんな木?
落葉針葉樹ラクウショウ
ラクウショウは、樹高50mを越える大木に成長する北アメリカ原産の落葉針葉樹です。属性はヒノキ科ヌマスギ属。別名として『ヌマスギ』と呼ばれることからも分かるように、沼地で生育できること、老樹になると気根を生やすこと、生育速度が非常に早いことなどがラクウショウの特徴としてあげられます。
落羽松【ラクウショウ】とよばれる理由
落羽松(ラクウショウ)の名前は、枝ごと落ちた葉が鳥の羽のようだというところからきています。よく似た葉の形であるメタセコイアと間違われやすいのですが、ラクウショウの長さ1cmほどの繊細な葉は互生で枝に対して互い違いについているのに対し、メタセコイアの葉は対生で枝に対して向かい合わせについていますので、葉の付き方の特徴を見ればその違いは一目瞭然です。
ラクウショウの生態
気根を出すラクウショウ
まるで鍾乳石を思わせる不思議な光景ですが、ラクウショウの大きな特徴は気根を出すということです。気根という耳慣れない言葉ですが、呼吸根や膝根(しつこん)とよばれることもあります。この気根とは植物の呼吸を助ける役目をしており、地上に根を出すことにより、水中下に根を下ろしているラクウショウの成長に必要な酸素を補給する役割を担っています。
ラクウショウの花
地味であまり目立つことのないラクウショウの花ですが、中央の黄緑色のごつごつした部分が雌花、先端の茶色の部分が雄花になります。茶色の雄花の部分はこれからどんどん伸びていき、10cmほどの穂が数本垂れ下がったような状態になります。枝先についた黄緑色の雌花はふきのとうのような形に開き、やがて実になります。
ラクウショウの実
ラクウショウの実はごつごつとした2~3cmぐらいの球形で、松ヤニのような針葉樹特有の香りがあります。実はもろく、放置しているとすぐに割れていきます。熟した実には油分が多く含まれており、水に落ちたラクウショウの実の周辺には油が浮かんでくるほどです。
紅葉するラクウショウ
落葉針葉樹であるラクウショウは秋になると紅葉します。その葉はまるで赤い羽根のようですね。紅葉の時期に生い茂った赤い葉を水面に映し出したようすはみごとです。落葉針葉樹という種類自体がとても少なく珍しい植物でもあるので、赤い鳥の羽のような針葉は一見の価値ありといえるのではないでしょうか。
資材としてのラクウショウ
ラクウショウの木材としての価値は高く、木質は精油分を適度にふくみ、軽くて耐久性があります。特に湿気に強くて腐りにくい材質ということから建築、土木、造船とさまざまな分野で役立っています。また木材としての用途とは違いますが、その樹高と幹の太さからラクウショウを防風林として使っている地域もあります。
ラクウショウの歴史
ラクウショウの発見
恐竜の時代である中生代の地層から化石も見つかり、セコイア・メタセコイアと並び『生きた化石』とうたわれる三大植物のひとつともいわれるラクウショウ。その寿命は長く、1000年を越えるものまであります。最大樹高50m、直径5mと巨木の名に相応しい風格です。
日本にやってきたラクウショウ
ラクウショウが日本に輸入されてきたのは明治20~30年ごろといわれ、新宿御苑に植えられているものが最も古いとされています。そのほかにもラクウショウが見られる場所をご紹介しておきます。
- 東京都新宿区・新宿御苑(気根が見られる)
- 福岡県篠栗(ささぐり)町・「篠栗九大の森」(池の中で育つラクウショウが見られる)
- 青森県五所川原市・菊ケ丘運動公園
- 愛知県豊橋市・豊橋市役所
- 滋賀県彦根市・曽根沼湖岸緑地(気根が見られる)
ラクウショウを育てるには
湿地でなくとも育つラクウショウ
沼地で育つ特性を持つことからヌマスギとも呼ばれるラクウショウですが、水の中でないと育たないというわけではありません。地面でも普通に成長することができます。その際、湿地や沼地で生育した時に見かけるような気根はあまり出てきません。また、地際の根元が肥大して板根状になっているのは酸素を効率よく取り込むためといわれています。
ラクウショウの育て方
ラクウショウは病害虫の心配もなく湿地に強い性質です。園芸店でも苗木を売られていますし、育て方はむずかしくないのですが、成長がとても早くて大木になること、落葉の量がとんでもなく多いこと、気根が周囲10m範囲にもおよび、その勢いはアスファルトを突き抜けるといった事例もあります。ということで育て方はともかく、植えるには一般の庭ではむずかしいかもしれませんね。
まとめ
落羽松という美しい名称もさることながら、幻想的な姿にユーモラスな気根と、ラクウショウの不思議な生態には驚かされるばかりですね。残念ながら個人の庭での栽培はむずかしそうですが、名所となっている公園もありますので、新緑や紅葉の時期を狙ってラクウショウの魅力を観賞されてみてはいかがでしょうか。