ハンカチの木ってどんな木?
ハンカチの木は、ミズキ科ハンカチノキ属の落葉高木です。中国南西部(四川省、雲南省付近)に分布しており、標高1500~2000mに自生しています。樹木は5mから、大きいものだと20mにも達します。白いハンカチのような花が特徴的で、近年植物園などで見られるようになりました。
白いヒラヒラした花が特徴
ハンカチの木の一番の特徴は、この白いヒラヒラした花です。遠くから見てもとても目立ち、まるでたくさんのハンカチがぶら下がっているように見えます。この白い部分は、初めは黄緑色をしていますが、開花に合わせて徐々に大きくなり、白くなります。他の樹木には見られない珍しい花の形です。
白いヒラヒラしたものは葉
実は、この白いヒラヒラしたハンカチのように見える部分は、花びらではなく葉が変形した部分で、「苞葉(ほうよう)」といいます。ハンカチの木の苞葉は2枚あり、フラボノイドと呼ばれる紫外線を吸収する成分が多量に含まれていることが明らかになっています。この白い苞葉は、太陽の紫外線をから花を守る傘の役割をしているのです。ミズバショウやドクダミも同じように白く花びらに見える部分がありますが、これらも苞葉です。本当の花は、苞葉の中心にかたまっています。
ハンカチの木の実
ハンカチの木の特徴のひとつに、硬い実があります。この実は、開花後につき始めます。しだいに大きくなり、秋にはクルミくらいの大きさの茶色の実なります。実は枝にしっかりとついているため、葉が落ちても実だけが木に残ります。とても硬いので、手で割ろうとしても難しいです。ムクドリやカラスなどは時々この実を食べます。
ハンカチの木の実は食べられるの?
秋になると、カラスなどの鳥がこの実をつついて食べる様子を見かけることができます。しかし、ハンカチの木の実はとても硬いく、人が中の実を取り出すためにはのこぎりなどを使う必要があります。中の実には、独特の渋みがあり、人が食べるには向かない実です。落葉したあともぶら下がっている実ですが、鳥がつつくことで下に落ちるため、秋になると木の下では、鳥が食べた跡が残る実をたくさん見つけることができます。
ハンカチの木の名前の由来と歴史
ハンカチの木という名前は、その姿の通り、苞葉がハンカチのように見えることに由来しています。他にも、「ハンカチツリー」と呼ばれることもあります。また、白い部分が鳩や、なびいている幽霊のように見えることに由来して、「鳩の木」や「幽霊の木」「ゴーストツリー」という名前も持っています。学名はdavidia involucrateといい、発見者である神父ダヴィディアに由来します。和名は「ハンカチノキ」です。
ハンカチの木の歴史
ハンカチの木は、19世紀に神父ダヴィディア(アルマン・ダヴィッド)により中国で発見されました。ダヴィディアは、ジャイアントパンダを発見した人物でもあります。当時は、ハンカチの木は絶滅したものと考えられていたため、その発見はとても有名になりました。ハンカチの木は多くの実をつけますが、発芽率が低く、さらに花がつくまでに時間がかかるため、当時は栽培に苦労をしました。日本には1950年代に入ってきました。
ハンカチの木の開花時期
開花時期は4月~5月
ハンカチの木の花は、4月から5月に見ることができます。ハンカチの木は日本原産の木ではなく、まだまだ珍しい木であるため、あまり植えられていません。そのため、開花時期に合わせて植物園などに行くことで、きれいな白いハンカチのような花を見ることができます。花は開花後1週間くらいまでが見ごろです。苞葉はその後、下に落ちてしまいます。
ハンカチの木の育て方
別名「ハトノキ」
ハンカチの木は、なかなか見られない木ですが、近年、園芸ショップやホームセンターなどで見かけるようになりました。別名の「ハトノキ」として売られていることもあります。
木に花がつくまで10年~15年
ハンカチの木に花がつくには、10~15年くらいかかります。種から育てることも可能ですが、発芽率が低く年数もかかるため、園芸ショップなどで苗から育てるのがおすすめです。最近では、数年かからずに開花する品種も流通しています。では、ご自宅でハンカチの木を楽しむための、簡単な育て方と、購入の際の注意点をお伝えします。
適した環境
乾燥が苦手
ハンカチの木は、日当たりが良い場所を好みますが、乾燥を嫌います。半日陰など、ある程度湿度のある場所が適しています。高山植物のため、寒さには強いですが乾燥が苦手です。冬の北風には気をつけましょう。
西日にも注意
また、耐暑性はそれほど強くないため、夏の西日が当たる場所などにも注意が必要です。なお、日本では、四国や九州から北海道でも栽培されて、開花しています。
水やり
基本水やりは不要
苗で購入した場合、乾燥を嫌うので、水が足りなくならないように、土の表面が乾いてきたら水をたっぷりと与えましょう。庭に植えてから数年経つようなら、基本的には水やりは必要ありません。しかし、天気の良い日が続き、土の表面が乾いてしまうような場合は、十分に水やりをしましょう。
湿度にも注意
ハンカチの木は標高1500~2000mに自生する樹木です。湿度が高くなり過ぎて、土が群れてしまうことにも気をつけましょう。気温の高くなる場所では水はけをよくしてあげることが必要です。
植えつけと剪定
植え付けは冬の落葉時期が適期
ハンカチの木は大きく育ちます。苗木を庭に植える場合は、成長した場合を考慮して場所を決めましょう。植えつけは、冬の落葉期間が適しています。冷涼な地域では、気温が上がり始めた頃がよいでしょう。
剪定をするなら11月~2月
ハンカチの木は、剪定をしなくても、自然にきれいな樹形になります。しかし、大きく育つ樹木のため、早めに剪定をすることで育てやすくなります。剪定は落葉後の11月から2月に行うのがおすすめですが、剪定することで樹形が乱れることがあるので、注意が必要です。
ハンカチの木とコンロンカは別の品種
園芸店では、コンロンカという植物を「ハンカチの花」や全く同名の「ハンカチの木」という商品名で売っていることがあります。こちらもハンカチの木の苞葉のように、白く美しい花が由来でつけられた名前です。ハンカチの木とは別の品種で、アカネ科、コンロンカ属の熱帯植物です。購入や育て方をチェックする際には、ハンカチの木なのかコンロンカなのか、注意しましょう。
ハンカチの木が見られる植物園
ハンカチの木は、野山や庭ではあまり見ることのない木です。今回はハンカチの木が有名な、おすすめの植物園を2つご紹介します。どちらの植物園も、ハンカチの木の開花時期になると、珍しい花を見ようと例年多くの人が訪れます。
小石川植物園
小石川植物園は、江戸時代に開園された、日本で一番歴史のある植物園です。正式名称は、「東京大学大学院理学系研究科付属植物園」で、一般公開もされています。こちらには、現在日本に存在する、最も古いハンカチの木があり、毎年たくさんのきれいな花をつけています。この木は、1958年に種から育てられたものです。
新宿御苑
新宿御苑には3本のハンカチの木があります。1944年に植栽された若いハンカチの木は、低い枝にもたくさんの花をつけています。ハンカチの木は大きくなると、枝の高い部分で花を咲かせるようになり、花が見えにくくなってしまいますが、こちらでは珍しいハンカチの木の花を近くで見ることができます。
まとめ
ユニークな名前と珍しい特徴を持つハンカチの木。風にたなびくその姿は、見る人の心を癒してくれることでしょう。苞葉が日傘となって、花を守っていると考えながら眺めてみるのも感慨深いです。わずか1週間ほどで、この苞葉は落ちてしまいます。ぜひ開花時期に合わせて植物園や公園に足を運んだり、自宅で育てて楽しんでくださいね。
出典:写真AC