ヤナギタデとは
ヤナギタデの基本情報
目 | ナデシコ目 |
科 | タデ科 |
属 | イヌタデ属 |
学名 | Persicaria hydropiper |
和名 | ヤナギタデ、マタデ、ホンタデ |
英名 | marshpepper knotweed |
形態 | 一年草 |
開花時期 | 7月~10月 |
ヤナギタデの分布
ヤナギタデは、沖縄から北海道までと日本全土に生育しています。主に川辺や湿地、水稲地帯、用水路わきといった湿っぽい場所に多く見られますが、発芽する時期に湿っていれば、その後は乾燥しているような場所でも生育可能です。海外でも北半球に広く分布、自生しています。
ヤナギタデの特徴
ヤナギタデの花
ヤナギタデは開花時期の7~10月ごろに、茎の先に淡い緑色、もしくは淡い紅色の小さな花を咲かせます。一見すると穂のような形で、花の多くは閉じており、長さは3~3.5mm程度です。近くでよく見ると、花の先が4~5に裂けているのがわかります。
ヤナギタデの葉
ヤナギタデの葉っぱは、細長くて平たい形です。先端の方が尖っていて、葉の根元のほうがやや広い形になっており、この形を「披針形(ひしんけい)」と呼びます。大きさは3~10cm程度です。毛はほとんど生えておらず、両面に腺点とよばれる粒状のものがたくさんあります。腺点は葉だけでなく、花にも見られます。
葉に辛味がある
ヤナギタデは、葉に辛味があるところが最大の特徴です。「蓼(たで)食う虫も好き好き」ということわざがありますが、口の中がただれるほど辛いにも関わらずタデにつく虫がいることからこのことわざが生まれたといわれています。なお、この辛み成分は「タデオナール」という成分です。
幼植物のころから辛い
発芽したばかりの植物のことを幼植物といいますが、ヤナギタデはそのころからすでに辛味があります。ヤナギタデの幼植物は全体的に紫色で、丸い子葉が特徴的です。
ヤナギタデの茎
ヤナギタデの茎は、真っ直ぐ伸びて高さ40~60cmと膝ぐらいの高さに成長します。茎は赤みがかっていて枝分かれをし、毛は生えていません。
ヤナギタデの実
ヤナギタデの果実は、「痩果(そうか)」と呼ばれます。痩果とは、硬く薄い皮の中に種子が一粒包まれている果実のことです。痩果自体が種子のようにも見えますが厳密にいうと果実であり、熟しても種子を放出することはありません。レンズのような形をしており、艶のない黒い褐色です。
ヤナギタデの見分け方
ヤナギタデとよく似た同属の植物に、イヌタデとボントクタデがあげられます。これらの植物との簡単な見分け方をご紹介します。
イヌタデとの違い
一見すると見分けがつかないヤナギタデとイヌタデですが、イヌタデの葉にはヤナギタデのような辛味がありません。ちなみにイヌタデは辛味がないために役に立たないことから、その名前がつけられたともいわれています。
ボントクタデとの違い
ボントクタデもイヌタデと同様、辛味がない点がヤナギタデとの大きな違いであるといえます。よく見ると、葉っぱがヤナギタデよりも丸みをおびている、茎や葉脈上に伏せ毛が生えているといった違いもありますが、見分けるときは辛味を確認するのが一番容易です。なお「ボントク」というのは、間が抜けていることを指す「ポンツク」からきており、辛味がないためにこの名前になったといわれています。
ヤナギタデの活用
ヤナギタデは、古くからその辛味を活かして香辛料として活用されてきました。平安時代から利用されていたともいわれています。江戸時代には栽培用の品種改良も行われていたといわれており、昔から日本人の食生活に深くかかわってきた植物であることがうかがえます。
活用法①薬草
ヤナギタデの葉は薬効があることでも知られています。主に胃腸のはたらきを助ける目的で昔から重宝されてきました。
食当たりにはすりつぶしたものを同量のおろしショウガと合わせて小さじ1杯飲む。暑気当たりには濃い煎液を用いる。蜂や毒虫に刺された時は葉の汁を塗布する。果実は胃腸炎の腹痛や顔面浮腫に用いる。
活用法②蓼酢
ヤナギタデの葉をすりつぶして酢と混ぜ合わせたものが蓼酢です。鮎の塩焼きに添えて食べるのが一般的で、北大路魯山人の作品の中でも紹介されています。独特な香りと辛味成分が鮎の味を引き立ててくれる調味料です。
蓼酢の材料
- 蓼:1把
- 酢:大さじ1
- 塩:小さじ1/2
- ご飯:小さじ山もり1
蓼酢の作り方
- 蓼の茎を取り除き、葉を洗います。
- すり鉢などを使って蓼をすり潰し、塩、酢、ご飯を混ぜてさらによくすります。
- すり合わせたものを茶こしで濾して完成です。
活用法③刺身のつま
ヤナギタデの辛味成分であるタデオナールは、抗菌作用があるといわれています。さらに胃腸のはたらきを助けるという薬効もあるとされ、刺身と相性がよく、ツマにぴったりの植物です。ヤナギタデの中でもツマによく利用されているのは全体に紫色の「紅蓼(ベニタデ)」と呼ばれる品種です。ベニタデにはアントシアニンが含まれていて、抗酸化作用があるといわれています。
まとめ
ヤナギタデは薬効もあるとされ、蓼酢やツマとしても使用されるなど幅広く重宝されています。日本全体に分布し、いたるところで見つけられるので採取するのも難易度は高くありません。ただしタデ属の植物は非常に似ているため、間違えないようにしましょう。葉をかじればすぐにわかるので、迷ったときは試してみてくださいね。