ムクノキ(椋木)とは?葉の特徴や用途、エノキ(榎)との違いを紹介!

ムクノキ(椋木)とは?葉の特徴や用途、エノキ(榎)との違いを紹介!

ムクノキ(椋木)は、あまり目立たない樹木です。しかし、街路樹や神社などでよく見かけられる、身近な植物の1つです。この記事では、ムクノキの葉や幹の特徴や用途を紹介します。あわせて、同じニレ科のエノキとの違いも見ていきましょう。

記事の目次

  1. 1.ムクノキ(椋木)とは
  2. 2.ムクノキの特徴
  3. 3.ムクノキの用途
  4. 4.ムクノキとエノキ(榎)の違い
  5. 5.まとめ

ムクノキ(椋木)とは

出典:写真AC

ムクノキは、ケヤキやエノキと同じニレ科の落葉高木です。関東以西の山地に自生しており、古来から日本によりそってきた植物です。環境の変化に強く、鮮やかな緑色の新芽と堂々とした木姿が美しいため、街路樹などでもよく見かけられます。樹高30mもの巨木にも育ち、老木になるにつれ幹にうろができます。威厳のある姿に変化することから、ご神木や記念樹に植えられることも多いです。

基本データ

Photo by harum.koh

学名 Aphananthe aspera
科名 ニレ科
属名 ムクノキ属
原産地 日本、台湾、中国、インド
草丈・樹高 10~30m
開花時期 4~6月
花色 黄色

ムクノキの特徴

出典:写真AC

同じニレ科のエノキやケヤキと一見区別がつきにくいムクノキですが、ムクノキ独自のさまざまな特徴があります。

特徴①花

ムクノキの花は、4~6月に新芽が出ると同時に咲きはじめます。色は淡い緑色~黄色で、新芽に隠れるようにして咲くため、あまり目立ちません。このことから、ギリシャ語で「目立たない花」という意味の「Aphananthe」が学名となったといわれています。

特徴②葉

Photo by harum.koh

ムクノキの葉は細長い楕円形で、長さ5~10cm、幅2~6cmほどの大きさです。新芽の頃は淡い緑色で、季節が進むと濃い色に変化していきます。ムクノキの葉にはつやがなくマットな質感で、ふちにギザギザとした切れ込みがあることが特徴です。また、葉の裏と表に細かくかたい毛がびっしりと生えているため、触るとざらざらとします。

特徴③木肌・幹

ムクノキの木肌は、やや白めの色合いが特徴です。巨木になりやすく、成長すると幹の直径が4mほどになることもあります。木肌は若木のうちはなめらかですが、樹齢に応じてぼろぼろと剥がれ落ちます。また、古木になると、幹にぽっかりとしたうろができやすいのも特徴です。

特徴④果実

ムクノキの果実は、花の咲き終わった夏になり始めます。果実は丸く、1cmほどの大きさです。未成熟のときはみずみずしい緑色ですが、秋になって熟すと黒くなり、しわが寄ります。食べると甘みがあるため、食用として利用することも可能です。また、ムクドリなどの小鳥の好物で、鳥が果実を食べに訪れる姿を観察できます。

特徴⑤根

ムクノキは大きく育つ樹木で、そのぶん根も大きく張り出します。地上に出た根は、立て板のように放射線状に張り出すのが特徴です。この根の状態を「板根(バンコン)」と呼びます。板根は、熱帯地域でよくみられる根の形で、日本の植物ではとても珍しく、ムクノキとほかの木を見分ける際に役に立ちます。

ムクノキの用途

木材

ムクノキの幹は固く丈夫で加工しやすいのが特徴です。そのため、古来から木材として、建築や造船、農具の柄の部分や餅つき用の杵などに使われてきました。

研磨剤

ムクノキのざらざらとした葉は、乾燥させると紙やすりのようになります。その特徴を活かし、古来から木材や象牙、べっ甲などを研磨する用途で使われていたといわれています。

ムクノキとエノキ(榎)の違い

出典:写真AC

「椋の木の下にて榎の実をひろう」ということわざをご存じでしょうか?「自分の言いだしたことを無理やり通し、変えないさま」という意味のことわざです。これはムクノキとエノキが見分けがつきにくいことからできた言葉だといわれています。しかし、これらの木には見分けるポイントがありますよ。

エノキとの違い①幹・根

ムクノキは老木になると、幹にうろができやすくなり、木肌がぼろぼろと剥がれます。また、根が板のように放射線状に広がった「板根」が見られるようになります。これらの特徴は、ムクノキ特有のもので、エノキにはほとんど見られません。

エノキとの違い②葉

ムクノキとエノキを見分けるときは、葉に触れてみましょう。ムクノキの葉は裏表がざらざらとしていますが、エノキの葉はつるつるとした感触で、つやがあります。落葉していない季節であれば、違いがよくわかるポイントです。

エノキとの違い③冬芽

木に板根がなく、葉が落ちている状態で見分ける際には、冬芽を観察すると分かりやすいです。ムクノキの冬芽は枝に沿うようにして生えるため、遠目から見ると芽があまり目立ちません。エノキの冬芽も、ムクノキと同様に伏せた状態で生えますが、ムクノキよりも小さく三角形に見えるのが特徴です。また、同じニレ科のケヤキの冬芽は、枝から芽を起こしたような状態で生えるため、違いがわかりやすいです。

エノキとの違い⑤果実

秋の季節であれば、果実で見分けましょう。ムクノキの実は熟すと黒くなりますが、エノキの実は緑、赤、黄色とカラフルに色づきます。また、実の大きさもエノキのほうが少し大きいです。

まとめ

出典:写真AC

神社や街路樹、公園などでよくみられるムクノキですが、名前を知らなかったという方も多いのではないでしょうか。もし見かけたときは、板根のようすや葉の特徴などをよく観察してみてください。きっとムクノキを身近に感じられるでしょう。

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佐野美帆
ライター

佐野美帆

自然が好きで、よく郊外に遊びに出かけます。お茶の専門店で働いていた経験があり、紅茶を含むお茶全般とハーブの勉強をしています。また、日本文学分野での出版経験を活かし、神話や民間伝承と植物の関わりに特化した記事が得意分野です。

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