ユリ科の植物とは?
ユリ科の定義と特徴
ユリ科の植物は、根茎が太く(球根)、花被片が6枚、筒状の花が咲くなどの特徴があります。これらは、多くの単子葉植物の基本形であることから、細分類化が求められてきました。APG体系では、クロンキスト体系でユリ科に定義されていたいくつかの植物が、「キジカクシ科」などに移行しています。長くユリ科として親しまれている植物なので、本記事では、それらの植物も取り上げます。
植物の分類・定義
植物の分類と定義は、18世紀に博物学者のカール・リンネが近代的な基礎体系をつくったといわれています。その後さまざまな分類方法や改編を経て、2000年頃までは「クロンキスト体系」などの見た目や形態による分類方法がスタンダードでした。しかし、1990年代後半からゲノム解析による研究が進み、分子の系統による分類方法「APG植物分類体系」が主流にとって変わりつつあります。
ユリ科の花・植物・野菜①~③<APG体系>
①ユリ
名前 | ユリ、百合 |
学名 | Lilium |
科名(APG体系) | ユリ科ユリ属 |
原産地 | 北半球の温帯 |
開花時期 | 5月~7月 |
花言葉 | 純粋、無垢 |
ユリの特徴
ユリは世界各地で親しまれてきた花で、聖書や万葉集にも描かれています。ユリは北半球に約100種の原種があり、日本にもヤマユリ、テッポウユリ、ササユリなどが分布しています。ユリの花のつくりは3枚の外花被(がく)と3枚の花弁で構成されていて、咲き方は横向き、下向、上向きの3種類です。
ユリの見ごろと人気の種類
露地栽培の見ごろは初夏から夏で、温室栽培の切り花は通年出回っています。アジアの原種がヨーロッパに渡って交配された鮮やかなハイブリッド品種が人気です。
- カサブランカ:オリエンタル系、大輪の豪華さと落ち着きのある白い色のバランスのよい人気品種
- テッポウユリ:日本に分布する原種、清楚で白いシンプルな花の形は西洋でも人気が高い
②チューリップ
名前 | チューリップ、鬱金香 |
学名 | Tulipa |
科名(APG体系) | ユリ科チューリップ属 |
原産地 | 北アフリカ~中央アジア |
開花時期 | 3月~5月 |
花言葉 | 思いやり |
チューリップの特徴と種類
チューリップは、春を代表する人気の花ですね。秋植え球根で、早咲きは3月から、遅咲き品種は5月頃まで咲きます。花の付き方は頭状花序(茎に花を1つ付ける)でシンプルですが、花色はそれぞれに豊富です。花の形も一重咲き、八重咲き、花弁の先が細くとがったユリ咲き、フリルのような花びらのフリンジ咲きなどがあります。
人気品種
- バレリーナ:オレンジ色のユリ咲きで、甘い香り
- 楊貴妃:優しい桜色の上品なユリ咲き品種
- アンジェリケ:遅咲きの八重咲で、ピンク色など
- ハウステンボス:ピンクと白の複色がかわいいフリンジ咲き
- スプリンググリーン:中央に緑のラインが入るビリディフローラ系品種
名前の由来
原産地のトルコで花の名前を聞かれたときに「チュルバン(ターバン)に似ている」と説明したことから、この名で呼ばれるようになったと伝えられています。
③クロユリ
名前 | クロユリ、黒百合、蝦夷黒百合 |
学名 | Fritillaria camtschatcensis |
科名(APG体系) | ユリ科バイモ属 |
原産地 | 日本中部以北、アジアの北部 |
開花時期 | 6月~8月 |
花言葉 | 恋、呪い |
クロユリの特徴と定義
クロユリはユリ属の黒色品種という定義ではなく、ユリ科バイモ属の別の花です。東アジアの北部に自生し、日本では中部以北の山岳などに分布しています。葉枝のない葉っぱが輪生し、黒紫色の花びらに黄色い網目が入っているのが特徴で、ミステリアスな魅力があります。
見ごろと近縁種
クロユリの花の見ごろは、6月~7月頃です。本州では、月山などで自生群落が見られます。なお、近縁種には、ミヤマクロユリ、キバナクロユリなどがあります。
ユリ科の花・植物・野菜④~⑥<APG体系>
④ホトトギス
名前 | ホトトギス、杜鵑 |
学名 | Tricyrtis hirta |
科名(APG体系) | ユリ科ホトトギス属 |
原産地 | 日本 |
開花時期 | 8月~9月 |
花言葉 | 永遠の若さ、秘めた思い、永遠にあなたのもの |
ホトトギスの特徴
ホトトギスは夏から秋にかけて、里山や傾斜地のやや日陰に自生する多年草で、日本固有種です。斑点の入った花びらが上向きに咲き、花びらの模様が鳥のホトトギスの胸部に似ていることからこの名前がつきました。
ホトトギス属の仲間
ホトトギス属の仲間には斑点のない種類や、ヤマホトトギスのように花びらが反り返って咲く種類もあります。白い花を咲かせる「シロホトトギス」「ホトトギス白楽天」などの品種はタネで増やしやすいため、盆栽など鉢植えで育てることも可能です。
⑤カタクリ
名前 | カタクリ、片栗、かたかご |
学名 | Erythronium japonicum Decne |
科名(APG体系) | ユリ科カタクリ属 |
原産地 | 日本、東アジア北部 |
開花時期 | 4月~6月 |
花言葉 | 初恋、消極的、寂しさに耐える |
カタクリの特徴
カタクリは、早春の林床に咲く可憐な花です。葉にはまだらの模様があり、花びらは薄紫がかったピンク色で、奥に濃紫色の線が入っています。光が届くとうつ向きに咲き、雨や曇り日には閉じたままです。咲き終わると、地上部は夏前に休眠状態になります。
片栗粉の原料
カタクリは春の短期間で光合成をおこない、年月をかけて養分を根に蓄えます。カタクリの鱗茎(りんけい)からできたのが片栗粉です。カタクリの根が希少になってきたため、現在片栗粉として製品化されている多くは、ジャガイモなどが原材料となっています。
➅アマナ
名前 | アマナ、甘菜、ムギクワイ |
学名 | Amana edulis |
科/属名(APG体系) | ユリ科アマナ属 |
原産地 | 日本、朝鮮半島、中国東部 |
開花時期 | 3月~4月 |
花言葉 | お天気屋、運が向いてくる |
アマナの特徴と名前の由来
アマナは、早春に咲くチューリップに似た可憐な山野草です。日当たりのよい林縁や里山に咲き、曇ると花を閉じます。以前はチューリップ属に分類されていましたが、チューリップより小さく、葉は線形です。鱗茎(球根)が食用になり、甘いので甘菜と呼ばれました。また鱗茎の形がクワイに似ていることからムギクワイの名もあります。
オオアマナとの見分け方
アマナに似ているので、オオアマナと名づけられた花がありますが、キジカクシ科オオアマナ属の別の種類の植物です。オオアマナには毒性があるので、間違わないように気をつけましょう。花の見分け方は、アマナには薄紫色の筋がはいっているので、花びらの裏側を見れば識別できます。
ボタニ子
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出典:写真AC