春の山を彩る高山植物
高山植物とは、高い木が生える限界を超えた標高に生える山野草です。涼しい場所に生える種類が多いため、北海道では平地で見かけられることもあります。寒さや強い風などに負けないために、小形のもの、低木や多年草の草花が多いです。山の花は登山者に踏まれたり、盗まれたりしないように、生息地を国定公園や国立公園にしていますが、それでも絶滅危惧種に指定されている山野草があります。
ボタニ子
ボタ爺
葉もな、水分がたくさん蒸発しないようにみっちり小さくまとまっているんだぞ。それに山野草のほとんどが多年草で一年草は少ないんだの。
春の高山植物【白い花】
①オサバグサ
オサバグサはケシ科オサバグサ属で、オサバグサ属は1種類しかありません。オサバグサは低山~高山に咲く直径1cmの白い花を下向きに咲かせる可憐な山野草で、日本の固有種です。葉の形が機織りの縦糸を整える筬(おさ)に似ていることから「筬葉草」と書きます。自生地はとても少なく点在し、本州では中部以北に自生しており、北限は青森県です。福島県では絶滅危惧2類に指定されています。
ボタニ子
福島県の帝釈山に自生地があるそうよ。自生地は点在しているから、開花時期は4月~7月と場所によるのね。
②チングルマ
チングルマは、白い花が終わった後の実の姿が「稚児車(ちごぐるま)」に似ていることが名前に由来します。チングルマはバラ科ダイコンソウ属(チングルマ属)の草花で草丈は10cm~20cm、花の直径は2cm~3cmの春の野草です。本州では中部以北に自生する山野草で、北海道からアリューシャン列島まで分布します。黒部五郎岳や大雪山に咲く白い花で、場所によりますが開花時期は5月~7月です。
③ニリンソウ
ニリンソウはキンポウゲ科イチリンソウ属の草花です。春の野草の代表ともいえる白い花で、1本の茎に2輪の花を咲かせるためニリンソウという名前がつきました。イチリンソウやサンリンソウもあります。草丈は15cm~30cm、花の直径は2cmほどの山野草です。ニリンソウの葉は山菜として食べられますが、若葉が有毒のトリカブトと似ているため注意しましょう。
ボタニ子
ニリンソウは食べられるのに、イチリンソウは全草有毒なの。食べてはいけないわ。
④ヒトリシズカ
ヒトリシズカはセンリョウ科チャラン属の山野草で、九州~北海道で見られます。白い花が主ですが、ピンクの花が混ざることもあります。ヒトリシズカは花の形が個性的で、コップを洗うブラシのような形をしています。別名が「眉掃草(まゆはきそう)」で、眉を整える筆にもたとえられていました。
⑤フキノトウ
フキノトウは各地の里山で見られる、山菜として有名な春の野草です。採らずにそのままにしておくと、白い花が咲きます。フキノトウの花は花束のように固まっており、満開時はたんぽぽの綿毛に似た形です。フキはキク科フキ属の多年草で、地下茎でつながっているため毎年同じ場所に群生します。フキノトウだけでなく、花や茎、葉まで食べられる美味しい山野草です。
⑥オウレン
オウレンはキンポウゲ科オウレン属の、日本固有の草花です。根が黄色くたくさんのひげを出すので「黄連」と書きます。オウレンは根が薬草として重宝される春の野草です。高山に咲く白い花は林の下の日陰を好んで自生し、草丈は10cm~15cmになります。オウレンの5つある花びらに見えるものはガクで、中心にある小さいものが本当の花びらです。
春の高山植物【黄色い花】
①キンポウゲ
キンポウゲはキンポウゲ科キンポウゲ属の多年草で、日当たりのよい場所が好きな春の野草です。花びらは丸く5枚で直径は約2cm、中心に黄色いおしべとめしべがあります。キンポウゲの草丈は50cmほどになり、南西諸島~北海道で自生している山の花です。キンポウゲの草の汁には毒があり、触るとかぶれることがあるので、触れてしまったときにはすぐに水で洗い落としましょう。
ボタニ子
キンポウゲの別名って、ウマノアシガタっていうのよ。
②キンラン
キンランはラン科キンラン属の多年草で、現在絶滅危惧種に指定されている春の野草です。30cm~70cmの花茎の先に黄色い花を咲かせます。花びらを全部開き切らないのが特徴の草花です。黄色い花を金色に見立ててキンランと呼びますが、白い花のギンランという種類もあります。キンランに比べて小ぶりで15cm~25cmくらいです。
③ハリイヌナズナ
ハリイヌナズナはアルプス地方原産の春の山野草です。日がよく当たる岩場を好んで自生する草花で、草丈は10cm~15cmになります。アブラナ科イヌナズナ属の多年草で、アブラナ科らしい黄色い花が咲きます。花びらから5本あるおしべが飛び出しているのが特徴です。ハリイヌナズナは同じ長さの花茎の先にいくつも黄色い花を咲かせます。
⑤リュウキンカ
リュウキンカは湿原や沼地を好む、キンポウゲ科リュウキンカ属の山野草です。黄色い花を咲かせるように見えますが、実は花びらはなくガクで中央にめしべとおしべがあります。草丈が40cm~80cmの草花で茎の中は空洞です。若芽を山菜として食べる地域もあるようですが、低毒ながらアルカロイド系の毒があり、体調や体質によっては下痢をするので食べるときには注意が必要です。
⑤フクジュソウ
フクジュソウは「元日草(がんじつそう)」「朔日草(ついたちそう)」とも呼ばれる、キンポウゲ科フクジュソウ属の草花です。旧暦の正月ごろに咲くことからこれらの別名がつきました。フクジュソウは1本の花茎に3cm~4cmの花を1輪~4輪咲かせます。1輪の花びらが30枚ちかくになる存在感のある日本固有種の山野草です。
ボタニ子
地上に出てきたばかりの蕾はフキノトウに似ていて、若葉はヨモギに似ているわ。でもね、毒草なのよ。
ボタ爺
せっかくめでたい名前の付いている山野草なのに残念だの。死亡例もある毒草だから、誤食には注意が必要だよ。
⑥ミツバツチグリ
ミツバツチグリはバラ科キジムシロ属の在来種です。日当たりを好む春の野草で、花びらは5枚のものがほとんどですが、6枚のものもあります。根茎が太く成長し、焼くとクリの匂いに似ていることと、葉が3枚であることから「三つ葉土栗」という名前になりました。花は1cm~1.5cm、草丈は50cm~200cmになる里山の草花です。
高山植物って丈は低いけど、根はすごく張ってる草花なの。風や雪の多い山の花だから飛ばされないようにしてるのね。