大和芋とは
大和芋は「ヤマノイモ科」に分類される多年草で、奈良県で主に栽培されている大和野菜(やまとやさい)です。山芋の中でもとくに粘りが強く、高級食材としても親しまれています。大和芋はとろろご飯や揚げものにしたり、粘りをいかして和菓子の材料に使われたりと利用方法もさまざまです。
大和芋の基本情報
科名 | ヤマノイモ科 |
属名 | ヤマノイモ属 |
別名 | 櫛羅芋(くじらいも)、銀杏芋(いちょういも)、 つくねいも、山薬(さんやく) |
産地 | 奈良県 |
形態 | つる性多年草 |
大和芋の名前の由来
奈良県で栽培されている大和芋は、大和(日本の古称)の伝統的な野菜として「大和野菜」とも呼ばれています。そのため「大和芋」と名付けられました。また、明治の中頃に「大和の医薬品販売者が持ち込んだ芋」という言い伝えもあり、その歴史から「大和芋」という名前がついたという説もあります。
別名の由来
関東地方では主に「大和芋」という名前で親しまれていますが、本来は「いちょういも」や「くじらいも」という別名でも呼ばれています。大和芋の葉がいちょうの葉に似ているために「いちょういも」と名付けられました。くじらいもの「くじら」は地名に由来しており、大和芋の産地でもある奈良県の地名からつけられた名前です。
大和芋の栄養素
栄養たっぷりで、胃腸の働きを助けたり高血圧の予防ができたりとさまざまな効果が期待できる大和芋。そのため「山薬」とも呼ばれており、薬効も兼ね備えている品種です。生食ができるので、加熱によって栄養分が流れ出てしまう心配もありません。大和芋に含まれている栄養素は以下のとおりです。
- ビタミンC
- ビタミンB1
- ビタミンB6
- 亜鉛
- カリウム
- 鉄
- 葉酸
- マグネシウム
- ビオチン
- 食物繊維
- パントテン酸
- アミラーゼ
- 銅
- 消化酵素
大和芋の産地
大和芋は乾燥を嫌う性質があり、よく耕してある柔らかい用土や、栄養分の高い土質でしか上手に育ちません。そのため栽培がとても難しく、現在では主に奈良県御所市(ごせし)にある葛城山(かつらぎさん)の麓で栽培されています。
大和芋の特徴
大和芋は芋の中でも生食できる珍しい品種として人気があり、10月〜3月が旬の時期です。しかし、土の中で越冬できる性質があるため、春に掘り起こしたものと併用して1年中購入が可能です。そんな大和芋の見た目や味、粘りなどの特徴を見ていきましょう。
見た目
大和芋の見た目は長い棒状のものや、こぶしのように丸いもの、扇型をしたものなどばらばらです。丸い形をした大和芋はその見た目から「つくねいも」とも呼ばれています。また扇型をしたものは「いちょういも」とも呼ばれており、長い棒状の大和芋は贈答用のギフトとしても選ばれている高級品です。
味
皮をむくと中身は白色で、シャキシャキとした食感が楽しめます。繊維質が多く濃厚な味がするので、生の状態でカットしてしょう油をかければ「大和芋のさしみ」が簡単に作れるのが魅力です。他の食材の味を邪魔しないので、お好み焼きにふわっとした食感をプラスしたり、和菓子の原料にしたりするなどさまざまな用途で使われています。
粘り
大和芋はきめ細かな肉質が魅力で、包丁で切っただけでも粘りが強いのが特徴です。すりおろしてとろろご飯にする場合、だし汁などで伸ばしてから食べてもしっかりとした粘りや食感が楽しめます。また切ったりすりおろしたりしても変色しにくいため、かるかんやまんじゅうなど、和菓子の材料としても利用されている食材です。
大和芋の見分け方
スーパーや市場では芋の品種がいくつか販売されており、粘り具合や特徴もさまざまです。大和芋と長芋、山芋との違いを見ていきましょう。
長芋との違い
長芋は大和芋に比べて水分量が多く、粘りも少ないのが特徴です。品種によっては皮ごと食べられる長芋もあります。細く切ってしょう油をかけたり、すりおろしてとろろにしたりして食べるとあっさりとした食感が楽しめます。
山芋との違い
山芋は「ヤマノイモ科ヤマノイモ属」に分類されている植物の総称のため「山芋」という芋の品種はありません。大和芋も「ヤマノイモ科ヤマノイモ属」に属しているので「山芋」の一種です。また、日本で自生している「自然薯(じねんじょ)」も山芋に分類されています。
大和芋のおいしい食べ方
親芋の下に次々と子芋ができて増えていく性質がある大和芋は、「子孫繁栄」や「家庭円満」を連想させる植物として、お祝いの席の料理としても利用されています。大和芋は、汁物や煮物などどんな料理にもよくあう万能野菜です。そんな大和芋の下処理方法や保存方法、おすすめのレシピなど、おいしく食べる方法を紹介します。
選び方
大和芋を購入するときには、皮が薄くて張りがあり、傷のついていないものを選んでください。また、表面がなめらかで「芽」の少ないものがおすすめです。粘りの強いものを選びたい場合は、ひげがたくさん生えているものや、ひげの根元が太いものを選びましょう。
保存方法
大和芋は乾燥や光、湿気に弱いため早めに使い切るようにしてください。しかし、食べきれずに保存する際は、ラップやキッチンペーパーで全体を包み冷蔵庫で保存します。切り口が傷みやすいため、しっかりと密閉しておくのがポイントです。カットしてから2〜3日ほど保存できます。
冷凍保存する場合
量がたくさんある場合は冷凍保存がおすすめです。冷凍保存する前にカットしたり、すりおろしたりしてから冷凍すると、そのまま料理に使えて便利ですよ。カットする場合は、千切りや輪切りにしてジップ付き保存袋に入れてから冷凍します。すりおろす場合は冷凍保存袋に入れて、空気が入らないようにしっかりと密閉してから冷凍してください。
下処理
山芋は皮の下にアクがあるのが特徴です。そのため、しっかりと下処理をしてから料理に使いましょう。まず、皮ごと水洗いして土や汚れを落としてください。包丁で皮を厚めにむいていき、大和芋を水に浸します。酢を数滴垂らしてから10分〜15分程度つけおきすれば、下処理は完了です。酢につけると、表面が変色してしまうのも防げますよ。
おすすめの茹で方
細切りにした大和芋をサッと茹でて、田楽味噌をつけて軽く焼き目をつけると、シャキシャキとした食感の味噌田楽になります。また下処理をしたあとによくすり潰し、つくね団子のように茹でると餅に似た食感になるので「落とし汁」にもぴったりです。
食べ方①磯辺揚げ
作り方
- 下処理をした大和芋をすり鉢に入れてよくすりつぶす
- 海苔の上にすりつぶした大和芋をスプーン1杯分のせる
- 海苔を巻いて大和芋を包む
- 鍋に揚げ油を入れ、170℃になってから揚げていく
- カラッと揚げれば完成
食べ方②味噌汁
材料
- 大和芋:200g
- 豚バラ肉:120g
- しいたけ:30g(2枚)
- ほうれん草:90g(3株)
- みそ:45g
- 水:3カップ
- 粉末だし:大さじ1
作り方
- 大和芋をすりおろし、豚バラ肉を食べやすい大きさにカットする
- ほうれん草をサッとゆでて一口大にカットする
- しいたけの軸を切り取り、かさの部分を薄切りにする
- 水3カップに、粉末だしを小さじ1加えて煮立たせる
- 大和芋をつくねのようにスプーンで丸めながら鍋に落とす
- 豚肉としいたけを加えて火が通ったら、さらにほうれん草を加える
- みそを入れてよく溶けば完成
食べ方③サラダ
芋の中でも生食できる品種は珍しく、食卓にあと1品欲しいなというときにもおすすめです。消化酵素が豊富に含まれているので、タンパク質や脂肪を分解し、胃もたれの解消にも役立ちます。
作り方
- 下処理をした大和芋を5mmほどの細切りにする
- しょう油やオリーブオイル、わさびや海苔などお好みで味付けすれば完成
まとめ
大和芋は粘りが強く濃厚な味わいが魅力で、さまざまな料理によくあう人気の野菜です。栄養素もたっぷりと含まれており、さしみや揚げ物、汁物にも利用できます。そんな魅力的な大和芋を、ぜひ味わってみてくださいね。