ラベンダーが枯れている?
ボタニ子
ラベンダーの下葉が灰色っぽくなっちゃってる?!どうしたんだろ、病気なのかな?
ボタ爺
それはラベンダーが暑さのため枯れそうになっているんじゃ。ラベンダーは夏にむけて対策が必要なんだぞ。
ボタニ子
せっかくのラベンダーが枯れてしまっては大変。ぜひ管理方法を教えてください!
寒さに強く暑さに弱いラベンダー
ラベンダーは香りのよい低木草(樹の仲間)ですが、地中海を原産とした種類が多いため冷涼で乾燥した気候を好む植物です。ラベンダーのなかでも代表的な品種であるイングリッシュラベンダー(コモンラベンダー)は、寒さへの耐性が高く-15℃の気温でも生育ができます。一方で、気温や湿気が高い日本の夏はとても苦手です。
枯れたラベンダー
ラベンダーは枯れると葉の色が灰色や黒色に変色し、ぐったりと垂れ下がります。触ると葉がボロボロ崩れたり、茎がしわしわの茶色に変色していたりしていれば、完全に枯れている状態です。このようになると残念ながら、再生することはありません。放置するとほかの個体が病気にかかる原因となるので、抜いて処分してください。
ラベンダーが枯れる原因
枯れる原因①ムレ
ラベンダーが枯れる原因として考えられるのが、風通しが悪いことによりおこるムレ(多湿)です。梅雨入りの時期になると気温が高く、雨量も多くなることから地表近くはジメジメと湿度が高くなります。ラベンダーの枝のあいだは湿度が高くなっているため、風の通り道がないとムレで影響を受ける部分が突然枯れてしまいます。
ムレで枯れる理由
ラベンダーのいくつかの品種は寒さには強いですが、暑さにはとても弱いです。そのため、気温が高くなると自らの体温を下げようとします。葉の裏にある気孔という穴をあけることで、水を蒸発させ温度調節するのです。しかし、湿度が高いと蒸発の効率が悪くなるので、ラベンダーは温度調節がうまくできず暑さで弱ってしまいます。
ボタ爺
葉の水分を蒸発させる生理機構を蒸散というが、この蒸散は葉っぱ内の湿度が高いところ~外気の湿度が低いところで発生するぞ。
枯れる原因②水やり
ラベンダーは夏時期の日中に水をあたえると、突然ぐったりとなることがあります。これは、気温が高くなる時間帯に水を与えることで地表面の湿度があがり、ムレによる被害を受けやすくなるからです。夏場の晴れている日は日照りによって地面から熱気が立ち昇り、すぐに枯死につながることもあります。
枯れる原因③直射日光
ラベンダーは特に暑さに弱い品種もあり、夏場の直射日光を浴びても枯れることがあります。繊細な葉の形が素敵なレースラベンダーは、乾燥した涼しい地域原産のため、南向きの日当たりのよい場所はとても苦手です。品種によっては枯れそうになったら夏越しのために、東向きや北向きの場所に移してあげてください。
ボタニ子
ラベンダーを日差しから避難させるために室内に置いても枯れてしまうことがあるよ。空気の流れがないから蒸れてしまうんだって。
枯れる原因④土
ラベンダーは乾燥した土を好むため、水はけの悪い土を使うと枯れてしまいます。粘土のようにずっしり重い土は水持ちがよく、根が呼吸できなくなり根腐れがおきるためです。さらに、水はけが悪いと根本のまわりの湿度が常に高くなるため、ムレによる夏枯れも多くなります。
枯れる原因⑤肥料
ラベンダーは夏前に肥料を与えると枯れることがあります。肥料を与えることで休眠状態が解除されてしまい、活動的になるためです。窒素成分を含んだ肥料は植物を成長させるため、ラベンダーの環境変化に対する防御機能が下がってしまい、暑さの影響を直に受けてしまいます。施肥は土壌状態を良好にする土壌改良材や、微生物資材を使用するとよいです。
ラベンダーの夏越し対策
対策①切り戻し(剪定)
ラベンダーの夏枯れ対策として株本の風通しをよくする切り戻し(剪定)作業をしてください。ラベンダーは6月に花をつけ大きく葉を伸ばすため、湿った空気がとどまるのを防ぐ必要があります。また切り戻し作業には、ラベンダーに夏越えに必要な体力をつけさせる効果もあり、花を摘むことでエネルギー消費を抑えます。
切り戻しはおもいっきりやる
ラベンダーの剪定は花を摘むだけでなく、下のほうまで切ってください。目安は株の1/3くらいの高さで、葉の部分と茶色い木の部分の境目を狙います。深く切っても大丈夫な理由はラベンダーが樹の仲間であるため、剪定後に新しい枝がすぐに形成されるからです。ただし、雨の日の直前に切り戻しをすると切り口が病気になるので、注意が必要です。
ボタニ子
剪定した葉や花はとってもいい匂いがするのでポプリにできるよ!
対策②日陰をつくる
ラベンダーは夏の暑さに弱い植物のため日陰をつくって守ってください。日陰で育てると気温が下がるため、外気温が高くなっても植物が受けるダメージを緩和できます。鉢植えの場合は、昼間に影ができる場所に移動させてください。地植えの場合は、株が大きくなるまで寒冷紗を設置して日陰をつくるのもよいです。
ボタ爺
寒冷紗は地面にたてた支柱にかけるように使うんじゃぞ。トンネルのように囲むと湿気がこもるから注意が必要だぞ。
対策③水はけのよい土を使う
ラベンダーは湿った環境が苦手なため、水はけのよい土を用いるとよいです。土が重たいと根腐れしやすくなるだけでなく、水やりのタイミングが難しくなります。購入した苗ポットに用いられいる土は必ずしも水はけがよい土とは限りません。触ってみて粘土のようなら、鉢植えの段階で土を落としましょう。
ラベンダーにおすすめの土
ラベンダー向けの土には腐葉土にパーライトを混ぜてもよいですが、観葉植物用の土をつかうのがおすすめです。初めから水はけがよくなるように作られているので、あとで手を加える必要がありません。
ボタニ子
適切な水の量は土と苗の倍くらいの重さが目安になるため、最初の鉢植え時に重さを測っておくといいよ。
ラベンダーの夏越え管理
春の管理
ラベンダーを夏枯れによって枯らさないためにも、春の植え付け時期からしっかりと対策をしましょう。
- 鉢に植え付けるときは観葉植物用の土など水はけのよい土を使う
- 施肥は植え付けと同時におこなう
- 植え付け後は水をしっかり与えて根の成長を促す
- 南向きや東向きなどの日当たりのよい場所に置く
夏前の管理方法
夏前の管理は梅雨入りまでにおこない、夏枯れに備えましょう。
- 風通しをよくするために切り戻す
- 鉢を北向きに移動させ日陰にあてる
- 水やりは朝方や夕方の涼しい時間帯におこなう
- 肥料を与えたり大きな鉢への植え替えは控える
冬までの管理
ラベンダーは夏が終わると花をつけるため葉や茎を伸ばします。9月に伸びた葉や茎を剪定し、ひとまわり大きな鉢に植え替えることでさらに大きな株になります。
- 鉢植えの場合は、再び南向きの日当たりのよい場所に戻す
- 伸びた茎は剪定し株のかたちを整える
- 地植えや大きな鉢(プラス2号)へ植え替えをする
暑さに強い品種への見直しをしよう
ラベンダーへ夏枯れ対策をしても枯れてしまうのであれば、品種を変更することをおすすめします。ラベンダーにはいくつも品種があり、香りがよいイングリッシュラベンダー(アングスティフォリア系)や葉の形がきれいなレースラベンダー(ピンタナ系)は暑さに弱く、うまく育てられないことがどうしてもあります。
暑さに強い品種
うさぎの耳のような花びらをつけるフレンチラベンダー(ストエカス系)やイングリッシュラベンダーと、スパイクラベンダーとの交配種であるラバンディン系のラベンダーなどは暑さに強い品種です。日陰に移せなかったり、日中の気温が高すぎたりする場所で育てるときは、暑さに強い品種を栽培するといいですね。
出典:筆者撮影