高山植物とは
高山植物とは文字どおり高山に生育する植物を意味しますが、一般的には山野草という名称で紹介されることの多い植物たちです。高山植物には、森林の限界値とされる高山帯の厳しい条件の中で育つたくましさがある反面、人々が暮らす高温多湿な環境では育ちにくいといった特徴があります。
高山植物の好む環境
高山植物は森のない場所を好んで群生します。これは日光を遮る木々が周囲にないため、高山植物が育ちやすいからです。また、北欧やロシアといった地域は低地でも森林が育ちにくいため、低地に高山植物が育っています。わかりやすい陣取り合戦ですが、過酷な環境を生き抜くための植物たちの進化ともいえるでしょう。
高山植物を見つけたら
山歩きの途中で見かける珍しい山野草を、手折ったり掘り起こしたりして持ち帰りたくなりますが、眺めるだけにして植物には触れないことがマナーです。絶滅危惧種や国定公園内などでは伐採を禁じられ、持ち帰れば罪に問われる品種もあります。運よく出会えた山野草は、風景と共に写真に収めるだけにしておきましょう。
夏に咲く高山植物<白い花>
①ウスユキソウ(薄雪草)
原産地 | ヨーロッパ |
分布 | 北海道~九州 |
開花時期 | 7~9月 |
群生地 | 大平山(北海道)、木曽駒ケ岳(長野) |
特徴 | 花は星形で繊毛に覆われている |
エーデルワイスの名前でおなじみのウスユキソウは、北海道では低地でも見られる夏の花のひとつです。白い花のように見える部分は苞(ほう)で、本来の花は中央の黄色い部分です。一般的に高温多湿の暖地では育てにくい山野草ですが、ウスユキソウは園芸店でも流通しており、ロックガーデンで育てられます。
ボタニ子
ボタ爺
ウスユキソウは近似種が多く、咲く地域の名前が付けられているものが多いぞ。早池峰ウスユキソウ、千島ウスユキソウなどが有名じゃな
②キヌガサソウ(衣笠草)
原産地 | 日本 |
分布 | 日本海側 |
開花時期 | 6~8月 |
群生地 | 針ノ木岳(富山)、神室山(秋田) |
特徴 | 放射状に広がる大きな葉、葉の中央に白い花 |
傘状に広がった大きな葉の上に真っ白い花を咲かせるキヌガサソウは、その形状から花笠草ともよばれる初夏の野草です。湿地帯で見かけられるキヌガサソウは、秋田、岩手、石川県では絶滅危惧種として認定されています。花色は白~薄ピンク~薄緑色へと変化するのが特徴で、秋に熟する子房の部分は食用としても活用できます。
ボタ爺
秋田と山形の県境にある神室山が、キヌガサソウの世界最大の群生地なんじゃよ
③イワツメクサ(岩爪草)
原産地 | 日本 |
分布 | 本州中部 |
開花時期 | 7~9月 |
群生地 | 乗鞍岳(長野)、富士山・富士宮ルート(静岡) |
特徴 | 5枚の花弁に切れ込みがあり10枚の花弁に見える |
ハコベ属のイワツメクサは、高山の岸壁などに群生する夏の山野草です。イワツメクサの名前の由来は、岩の間から生えているツメクサといわれます。別名のオオバツメクサは、細い葉の形状が鳥の爪を思わせることからつけられています。小さな白い花姿と細い葉が涼しさを演出してくれる夏の野草です。
⓸オカトラノオ(岡虎ノ尾・丘虎ノ尾)
原産地 | 日本、朝鮮半島、ロシア |
分布 | 北海道~九州 |
開花時期 | 7~8月 |
群生地 | 竜王山(山口)、狭山丘陵(埼玉) |
特徴 | 同じ向きに花穂が垂れ下がる、株に繊毛が密生 |
花の先端が「虎の尾」のように見えることで名づけられたオカトラノオは、地下茎で増える性質から、群生している状態で見かけられます。花穂の中ほどから横に折れて垂れ下がる白い花は、園芸種に引けを取らないほどの美しさです。園芸店の山野草コーナーなどで流通しているため、庭で栽培してみてはいかがでしょうか。
ボタニ子
低山や丘に生えるからオカ(丘)トラノオで、海岸の岩場に生えるハマ(浜)トラノオという山野草もあるんだよ
⑤ハクサンイチゲ(白山一花・白山一華)
原産地 | 日本 |
分布 | 北海道~中部地方 |
開花時期 | 7~8月 |
群生地 | 剣ヶ峰(静岡)、平標山(群馬~新潟) |
特徴 | 茎の途中に柄のない葉がある、アネモネに似た花 |
ハクサンイチゲは、白いアネモネのような花を群生させる夏の花です。イチゲは「イチリンソウ」とよばれる山野草で、日本には12の近似種があります。暑さと乾燥に弱く、平地での栽培はむずかしいとされていることもあり、山歩きの最中に群生を見つけた瞬間は、喜びもひとしおといえるでしょう。
ボタニ子
次のページでは、夏に咲く高山植物のピンク系と黄色系の花たちを紹介しますね
ウスユキソウはエーデルワイスの仲間なの