夏に咲く高山植物<青~紫色の花>
①イワギキョウ(岩桔梗)
原産地 | 北東アジア~北アメリカ |
分布 | 北海道~中部地方 |
開花時期 | 7~9月 |
群生地 | 乗鞍岳(長野)、白馬岳(長野) |
特徴 | 横向きの青花、岩場や礫地を好む |
岩場に咲くことから名づけられたイワギキョウは、同じホタルブクロ属のキキョウやカンパニュラによく似た山野草です。夏に咲く花は草丈10cmほどですが、涼し気な青紫色の花が群生するようすは、登山者たちを和ませてくれることでしょう。よく似た品種に、繊毛の生えているチシマギキョウがあります。
②ウツボグサ(靫草)
原産地 | 日本、中国東北部~朝鮮半島 |
分布 | 北海道~九州 |
開花時期 | 5~7月 |
群生地 | 栗駒沼倉地区(宮城)、車山(長野) |
特徴 | 草丈30cm、まつぼっくりのような萼 |
漢方としても知られる初夏の野草のウツボグサは、花が終わると同時に結実して花穂が茶色に変化することから、夏枯草ともよばれています。夏の花でありながら、開花から2~3日後には枯れたように見えるようすは、なんとも不思議といえるでしょう。
ボタニ子
ボタ爺
大ハズレじゃ。「ウツボ」は、矢を入れるために背負う入れ物の名前からきておる。花の形がこの靭(うつぼ)という入れ物と似てるんじゃな。
③クガイソウ(九蓋草)
原産地 | 日本 |
分布 | 本州 |
開花時期 | 7~8月 |
群生地 | 唐松岳(長野)、振子沢(福島) |
特徴 | 草丈60~100cm、穂になった長い総状花序 |
紫色のクガイソウは、すっきりとした縦長のフォルムが涼し気な夏の花です。耐暑性、耐寒性ともに強い強健な性質で、日本各地で見られるため庭での栽培も可能です。草丈が1mほどになることから余裕のあるスペースを確保し、乾燥に注意して育てるとよいでしょう。
⓸ヒメシャジン(姫沙参)
原産地 | 日本 |
分布 | 北海道~中部地方 |
開花時期 | 7~9月 |
群生地 | 本白根山(群馬)、朝日岳(山形~新潟) |
特徴 | 草丈20~60cm、釣鐘型の青紫の花 |
ヒメシャジンは高山の砂礫地や岩の間に生育する夏の花です。花の大きさや色、草丈などに個体差がありますが、ほかのシャジンの仲間たちとの違いは、萼片に細かい鋸歯があることです。根は太い直根性で、株全体のバランスから見ると釣鐘型の大きめの花が目立ちます。
⑤トリカブト(鳥兜)
原産地 | 日本 |
分布 | 本州中部以北 |
開花時期 | 8~9月 |
群生地 | 丹沢(神奈川)、池ケ原湿原(岐阜) |
特徴 | 草丈1m、塊根が円錐形 |
毒草で有名なトリカブトですが、その花はとても美しいことでも知られています。鳥の鶏冠や烏帽子に花の形が似ていることが名前の由来で、30種ほどのトリカブトの仲間の花は、みな同じ形状をしています。塊根に毒がありますが、使い方によっては漢方薬として用いられる場合もあります。
ボタニ子
トリカブトはニリンソウやシドケとよく似ていて、間違えて食べると大変なことになるのよね!
ボタ爺
若葉の状態では見分けがつきにくいので、花芽がつくまでは口にしないほうが無難じゃな
夏に咲く高山植物<赤~オレンジ色の花>
①クリンソウ(九輪草)
原産地 | 日本 |
分布 | 北海道~本州、四国 |
開花時期 | 5~6月 |
群生地 | 千種高原(兵庫)、中禅寺湖(栃木) |
特徴 | 草丈30~60cm、数段に輪生して咲く花 |
花の付き方を仏塔の九厘に見立てて名づけられたクリンソウは、赤~ピンクの花色が目に鮮やかな初夏の野草です。サクラソウ属のなかでは最も大きな品種といわれており、湿地帯で群生するようすを見かけることも多いでしょう。比較的暖地でも育てやすく、通信販売などでポット苗を手に入れられます。
②ワレモコウ(吾亦紅・吾木香・我毛紅)
原産地 | 日本、朝鮮半島、中国、シベリア |
分布 | 北海道~九州 |
開花時期 | 6~10月 |
群生地 | 伊吹山(滋賀~岐阜)、葛城高原(奈良) |
特徴 | 草丈60~150cm、小さい楕円形の花穂 |
濃い赤花が特徴のワレモコウは、初夏から初秋まで咲き続ける山野草です。花は花穂の先端から咲き始め、赤茶色の萼に色が残るため、長期間花色を楽しめます。ワレモコウは日本の各地で見られ、俳句や短歌にも詠われていることからも、日本人にとってなじみ深い花のひとつといえるでしょう。
③オニユリ(鬼百合)
原産地 | 中国 |
分布 | 北海道~九州 |
開花時期 | 7~8月 |
群生地 | 千里浜(石川)、光ヶ原高原(新潟) |
特徴 | 葉の付け根にムカゴ、オレンジ色に黒の斑点の花 |
夏に咲く花の代表花でもあるユリですが、なかでもオニユリの濃厚な香りに夏の到来を感じる登山者も多いことでしょう。日本に自生するオニユリは、葉の付け根にムカゴを作るのが特徴です。また、ヤマユリとオニユリの球根は「百合根」として食用にされています。
⓸ヒオウギ(檜扇・桧扇・日扇)
原産地 | 日本、朝鮮半島、中国、インド |
分布 | 本州~九州 |
開花時期 | 7~8月 |
群生地 | 丹沢(神奈川)、高指山(神奈川) |
特徴 | 草丈60~120cm、扇状の葉 |
ヒオウギの名前は、大きな葉が扇を広げたような形であることから名づけられました。ヒオウギの黒く艶のある種は射干玉(ぬばたま)と呼ばれ、黒や夜にかかる枕詞として和歌で詠われています。朝に咲いて夕方にはしぼんでしまう一日花ですが、たくさんの蕾を次々と咲かせていく姿は圧巻です。
ボタニ子
ヒオウギの別名には「カラスオウギ」や「ブラックベリー・リリー」があるの。これは種が艶やかで真っ黒なことに由来してるんだよ
⑤レンゲツツジ(蓮華躑躅)
原産地 | 日本、中国 |
分布 | 北海道南部~九州 |
開花時期 | 4~6月 |
群生地 | 物見石山(長野)、乙女高原(山梨) |
特徴 | 毒性がある、レンゲのような形のつぼみ |
レンゲツツジの春から初夏に咲く花は、山の中でも目をひく鮮やかなオレンジ色です。木全体に毒性があり、馬や牛も食べることを避けるため、放牧地などで群生を見かけやすいでしょう。長野と群馬の県境にある湯ノ丸高原では天然記念物に指定されています。
ボタニ子
名前の由来は、つぼみの形が中華料理で使うレンゲに似ているからなんだって
絶滅危惧種の多い夏の高山植物
平地ではあまり見かけない珍しい高山植物は、シカなどの動物による食害や、人の手による乱獲、盗掘などで減少の一途をたどり、絶滅危惧種となっているものも少なくありません。希少な高山植物を絶やさないためにも、ひとりひとりが山でのマナーを守ることが大切ですね。
ウツボグサの「ウツボ」って、海にいるヘビみたいな魚のこと?!