ソテツの実とは?毒があるのに食べられる?味や食べ方を紹介

ソテツの実とは?毒があるのに食べられる?味や食べ方を紹介

観葉植物としても人気のあるソテツは、雌株のみにオレンジ色の実をつけます。ソテツの実には毒がありますが、食用として利用されてきた歴史もあります。ソテツの実にはどんな毒があるのか、味や食べ方についても見ていきましょう。ソテツの実を食べるときの注意点も紹介します。

記事の目次

  1. 1.南国情緒あふれるソテツ
  2. 2.ソテツの実とは?
  3. 3.ソテツの実には毒がある?
  4. 4.ソテツの実は食べられる?
  5. 5.ソテツの実の毒抜きの工程
  6. 6.ソテツの実の食べ方
  7. 7.ソテツの実を食べるときの注意点
  8. 8.毒に気をつけてソテツの実を味わおう

南国情緒あふれるソテツ

Photo by TANAKA Juuyoh (田中十洋)

ソテツは日本や南西諸島に自生する常緑低木のひとつです。ほかの樹木が生きられないようなやせた土地や、乾燥地でも育ちやすい強い生命力が大きな特徴です。南国情緒あふれる見た目で、観葉植物として販売されていたり、ドライガーデンのシンボルツリーとして利用されたりと人気があります。葉はドライフラワーにすると羽根のようになり、アレンジの幅が広いのも特徴です。

生きた化石と呼ばれる

ソテツは恐竜が生きていた1億年以上前にはすでに地球上に自生していたといわれており、化石がたくさん発見されています。姿や形が当時からほとんど変わっていないことから、「生きた化石」と呼ばれてきました。

雄花と雌花の特徴

Photo bystevepb

ソテツは雌雄異株で、雄株、雌株共に6~8月が開花時期です。雄花は太い松かさに似た形で、雌花は羽根のような形の花が球状に集まったドーム型をしています。花の形が全く違うため、雌雄の区別がつきやすいでしょう。ソテツが実をつけるのは雌株のみで、ドーム状の空間に卵を抱え込むようにして、たくさんの種子をつけます。

ソテツの実とは?

Photo by urasimaru

秋ごろから冬にかけて、ソテツは結実します。ソテツの実は直径4cmほどの卵型です。熟した実はオレンジ色に色づくためよく目立ちます。
 

ソテツの実は民芸品にも使われる

ソテツの実は、硬い種部分を活かし民芸品にも利用されます。宮崎県ではソテツの実をくり抜いて鈴を入れ、猿の顔に見立てた「南男猿(なんおさる)」が民芸品として販売されています。「南男猿」は「難を去る」という意味をかけたもので、厄除けのお守りとして古くから親しまれてきました。

ソテツの実には毒がある?

Photo by torisan3500

ソテツは公園や街路樹としても利用されることが多く、人の目に触れる場所に数多く植えられている身近な植物です。しかし、ソテツには、実だけではなく葉や幹などのほとんどすべての箇所に毒があります。食べると中毒を起こす危険性が高いため注意しましょう。散歩中の犬や、牛がソテツの葉や種子を食べて中毒を起こしたケースも報告されています。人間以外の動物にも有害です。

ソテツの実の毒性

Photo by torisan3500

ソテツには「サイカシン」と呼ばれる化学物質が含まれています。サイカシンは体内に入ると毒性の強いホルムアルデヒドに変化し、急性中毒症状を起こす可能性があります。

起こりうる中毒症状

ソテツを食べることで起こりうる中毒症状は、嘔吐、めまい、呼吸困難、下痢などです。重症になると意識障害を発症し、さらに重篤な状態に陥ってしまいます。

カラスの好物

Photo by nubobo

ソテツの実は毒性がある一方で、カラスの好物としても知られています。ソテツの実のオレンジ色の表皮部分には毒がないといわれており、カラスは中毒成分が含まれている種子部分を上手に避けて食用とします。頭がよいといわれるカラスならではの食べ方ですね。

ソテツの実は食べられる?

出典:写真AC

ソテツの実は、毒抜きをすれば食用として利用できます。ソテツの実の中にある種子部分を加工して毒を取り除き、デンプンのみを抽出したものが食用になります。しかし、本来は毒のある植物のため、食用には適していません。食用としては適していないにもかかわらずソテツの実を食べるようになった理由には、日本の歴史が関係しています。

食用としてのソテツの実

Photo bysarangib

ソテツには毒性がありますが、やせた土地でも育てられるため、食糧難を助ける貴重な植物としての側面もありました。その歴史は古く、琉球王国の時代から飢饉に備えてソテツの栽培を推奨されていたといわれています。ソテツの実は「ナリ」と呼ばれ、食糧危機に陥ったときの代用食物として大切に育てられてきました。

ソテツの幹も食用に加工できる

Photo by taitiro1987

ソテツの実には収穫時期があり、いつでも手に入るものではありません。そのため、食糧難のときに実が見つからない場合は、ソテツの幹を毒抜きしたものが主食として使われてきました。ソテツの幹は「シン」と呼ばれ、実と同じように何度も工程を重ねて毒抜きをし、デンプンを取り出して食用とします。ソテツは当時の人々の命をつなぐため重宝されていたといえるでしょう。

蘇鉄地獄

Photo byCowboy_Joe

ソテツは、実や幹部分の毒をうまく抜くことで食用として利用されてきました。特に第一次大戦後、奄美地方の貧困や食糧難を助けてきたのがソテツです。それでも、正しく加工ができなかったり、毒抜きが不完全だったりする場合も多く、中毒による死亡事故も多い状況でした。このように、毒性の強いソテツを死者を出してまで主食にしなければならなった悲惨な時期を「ソテツ地獄」と呼びます。

ソテツの実の味

Photo byBru-nO

ソテツの実は毒抜きをしたあとに粉末状にし、お粥を炊いたりお団子にしたりするなど、小麦粉のような使い方で食べられていました。実そのものに味はほとんどなく、おかずとあわせやすいのが特徴です。本来が食糧難を助けるために生み出された食べ方のため、味を楽しむというよりも、栄養を取ることに特化しているといえるでしょう。

ソテツの実の薬効

Photo bykian2018

昔から中国では、ソテツの実や葉は漢方薬として使用されてきました。葉は止血や解毒、痛み止めとして、実は腰痛や打ち身、男性機能の増進に効果があるといわれています。しかし、適切な処理をしていないソテツは中毒状態を引き起こす可能性があるため、摂取する場合は専門家の意見を聞いたうえで、自分では判断しないことが大切です。

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ソテツの実の毒抜きの工程

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