ソテツの実の毒抜きの工程
ソテツの実を食べるには、毒抜きが必須です。毒抜きは、ソテツの実に含まれているサイカシンの水に溶けやすい性質を利用し、食用になりうるデンプンだけを抽出する方法で行います。しっかりとデンプンだけを抽出するには時間も手間もかかりますが、この工程を丁寧に行わないと中毒を起こしてしまうため気をつけましょう。
工程①実を乾燥させる
ソテツの実は、雌花が開花後の11月以降であれば採取可能です。採取した実は風通しのよい屋外で天日干しし、しっかりと乾燥させます。
工程②種を取り出す
ソテツの実が乾燥したら、木づちなどを利用して実をたたき割ります。ころんとした白い種子が出てくるので取り出しましょう。割れにくい場合は乾燥が不十分というサインです。軽い力でも割れるようになるまで天日干しを継続してください。
工程③種を水にさらす
種子を取り出したら、たっぷりの水に沈め、数日間浸します。ときどき水を替え、しっかりと水に浸けることが大切です。中毒を起こす原因となるサイカシンを取り除く工程のため、時間をかけて毒抜きしましょう。
工程④天日干しで乾燥させる
水に浸け終わった種を取り出し、再び天日に干します。カラカラになるまで乾燥させることが大切です。
工程⑤粉末状にする
乾燥させたソテツの種子を石臼などで引き、粉末状にします。この粉をさらに天日でしっかりと干し、乾燥させてください。よく乾きサラサラになったら袋に詰めて保存します。
工程⑥調理前に粉を水に浸す
保存してあるソテツの粉を調理する前に、念のため一度水に浸して追加の毒抜きを行います。30分~1時間ほど粉を水に浸け、上澄みを捨てましょう。これでソテツの毒抜きは完了です。
ソテツの実の食べ方
ソテツの実を主食として食用とする場合は、粉末状にして小麦粉のように使われます。また、ソテツの実を使ったソテツ味噌も代表的な食べ方です。
食べ方①ナリガイ(お粥)
ナリガイは、ソテツの実を毒抜きして作った粉をお粥にした食べ方です。ソテツの実は現地の言葉で「ナリ」と呼ばれ、「ナリヌコナ(ソテツの粉)」を使ったナリガイは郷土料理として現地に伝わってきました。同じように毒抜きをしたソテツの幹を使って作られたお粥もあり、「シンガイ」と呼ばれています。おかずを入れて炊き込むことはほとんどなく、お粥のみで食べられることが多かったといわれています。
食べ方②ソテツ味噌
ソテツ味噌は、ソテツの粉と玄米、大豆、塩を発酵させて作った味噌のことです。玄米と一緒に蒸らして麹を作り、そこに煮大豆や塩を加えて発酵させていく作り方で、風味豊かで独特の甘みがあることが特徴です。ソテツ味噌は麹カビを繁殖させて解毒する解毒発酵により毒を抜くため、ソテツの実を粉にするという最初の工程を省いて作られることもあります。大手通信販売サイトでも販売されており、比較的手に入りやすいですよ。
ソテツ味噌の購入先
そてつみそ(なりみそ)【ヤマア】
そてつみそ(なりみそ) 【ヤマア】
参考価格: 800円
ヤマアの「そてつみそ」は、米、大豆(遺伝子組換でない)、そてつの実、食塩などで作られています。お茶漬けやお茶請けとしてそのまま食べてもおいしく味わえます。
手軽さ | ★★★★★ |
---|---|
レア度 | ★★★☆☆ |
ソテツの実を食べるときの注意点
ソテツの実はきちんと毒抜きをすれば食べられます。しかし、毒抜きしきれずに、中毒や死亡事故が起きていることもまた事実です。食用として利用する場合は、有毒の食材であるということを忘れず、細心の注意を払って食べましょう。
自己判断で食べられるかを決めない
ソテツは、本来は食用に適さず、食糧難のときにやむを得ず食べられるように工夫を重ねてできた食材です。毒抜きの方法はわかっていても、命にかかわることのため、食べられるかどうかの判断は素人では危険といえるでしょう。ソテツの実を食用にする技術を持った現地の方に協力してもらうか、すでに粉になっている状態のものを手に入れて食べてください。
毒に気をつけてソテツの実を味わおう
ソテツの実は有害ではあるものの、その一方で沖縄や奄美大島の方たちの命をつなぐ大切な食材でした。「ソテツ地獄」とも呼ばれる歴史を知ったうえでソテツの実を食することは、命に感謝することにもつながるのでしょう。しかし、非常に危険な毒であることは間違いありません。ソテツの実を食べるときは必ず専門家に指示を仰ぐか、食用として販売されているものを手に入れてくださいね。
- 1
- 2
出典:写真AC