京菜とは
京菜とは、京都で古くから作られてきたアブラナ科の野菜です。読み方はそのまま「きょうな」です。京菜は冬にも収穫できるため、野菜の少なくなる季節に重宝する人も多いでしょう。冬の季節、日本人に愛される鍋料理にも欠かせない野菜のひとつです。
京菜の歴史
京菜の歴史は非常に古く、江戸時代の書物「雍州府誌(ようしゅうふし)」に記録が残されています。京都で誕生した京菜は、東寺や九条辺りで栽培されていたと記録されており、そこから全国へと次第に広まっていきました。かつては、1株が2kgにもなる大株品種が一般的でしたが、現在は消費者のニーズにあわせて子株のうちに収穫・出荷するケースが増えています。
京菜と水菜は同じもの?
京菜が誕生した当初は、京都など関西でのみ作られており、現地の人々から「水菜」と呼ばれていました。やがて、関東に出回るようになった際に、「水菜」が京都でとれる野菜であるという意味をこめて、「京菜」とも呼ばれるようになったといわれています。つまり、京菜とは水菜の別名であり、両者に違いはありません。
ボタニ子
ボタ爺
京菜も水菜もどちらも同じく歴史のある名前なんじゃ。古い料理書にも登場しておるぞ。
水菜の意味
京菜が誕生した当時、九条周辺で、田んぼの畝に水を引き込んで育てられていました。清らかな水と肥沃な土から育つ野菜であるという意味を込めて、「水菜」とつけられたといわれています。1729年の書物「料理無言抄」にも水菜と京菜に関する記述が残されており、京菜と水菜が同じものであることがうかがえます。
水田に作るを水菜と言う。畦に作るを浮き菜といい、諸国にて京菜という。
ボタニ子
水菜は今では種も市販されており、家庭菜園でも簡単に作れます。詳しい水菜の育て方について知りたい方はこちらをご覧ください。
京菜の特徴
誕生当初、京菜は京都とその近辺でのみ栽培されていた珍しい野菜でした。しかし、現在は全国に広がり日本人の食を支える野菜のひとつです。ほかの野菜には見られない見た目や味、食感の特徴が京菜にはあります。また、現代の日本における水菜の生産量日本一は茨木県です。
特徴①見た目
京菜は、見た目が特徴的です。1つの株から何本も細長く白い茎が出てきます。茎から出る葉は、柊(ヒイラギ)の葉のようなギザギザとした形です。この柊のような見た目にちなんで、「ヒイラギ菜」という別名でも呼ばれていました。
別名の多い京菜
京菜は、ヒイラギ菜のほかにも別名を多く持ちます。たとえば、糸のように細い茎をしているため「糸菜」、何本も筋があるような姿をしているため「千筋菜」「千本菜」などです。いずれも京菜の特徴をよくあらわした別名といえますね。このように多くの別名を持つことからも、京菜の歴史の古さを感じられるでしょう。
特徴②味
京都で古くから栽培されていた京菜の系統を色濃く引き継ぐ品種は、ピリッとした辛味が特徴です。また、茎に弾力と張りがあり、シャキシャキした歯ごたえが魅力です。一方、近年の品種改良により、生でそのまま食べられる品種も誕生しました。生食に向く品種は従来の京菜と比べて辛味が少なく、茎もやわらかという違いがあります。
特徴③旬の季節
京菜は一年を通じて収穫されていますが、そもそもの旬の季節は冬~初春です。寒く、野菜が少ない季節に旬を迎えることもあり、人々から重宝されてきました。京菜が旬を迎えると京都の人たちは漬物を作り、来客をもてなす風習が今も残っています。
ボタニ子
京菜以外にも、冬に旬を迎える野菜や果物はたくさんあります。京菜と同じく、冬が旬の食べ物はこちらの記事をご覧くださいね。
特徴④伝統野菜
京菜(水菜)は、「京水菜」として登録されている伝統野菜です。京都で古くから栽培されている歴史を持つ野菜は、「京の伝統野菜」や「京野菜」に登録され、ブランド野菜としての地位を確立しています。有名な京の伝統野菜には、京水菜のほかに「壬生菜」や「九条ネギ」などが挙げられます。
ボタニ子
伝統野菜に登録されている野菜はたくさんあります。京野菜の種類について詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。
京菜の品種
京菜(水菜)は品種が豊富です。一般的な水菜と比べて、茎が赤い「赤水菜」や「ムラサキ水菜」、茎が太い「広茎水菜」、生のまま食べられる「サラダ水菜」などがあります。どれも見た目に特徴がありますが、すべて同じアブラナ科の野菜です。京都の漬物で有名な「壬生菜(読み方:みぶな)」も京菜の仲間になります。
品種①水菜
水菜はもっとも一般的な品種です。旬の季節は冬で、鍋料理や漬物、おひたしなどに使われてきました。全国で作られる水菜のなかでも、京都で栽培されたものを「京水菜」と呼び、ブランド野菜として人気です。狭義的に京水菜を「京菜」と表すこともあります。
品種②赤水菜・紫水菜
赤水菜と水菜の違いは、名前のとおり、茎や葉の赤さです。通常の水菜の白い茎の部分が赤いものを「赤水菜」、茎は白く、葉が紫色のものを「紫水菜」と呼びます。赤水菜や紫水菜の特徴的な色はどちらも同じアントシアニンによるものです。ほかのアントシアニンを含む野菜と違い、赤水菜や紫水菜は茹でても色が残りやすく鮮やかなため、料理人からも人気があります。
品種③広茎京菜
広茎京菜(読み方:ひろくききょうな)は、一般的な水菜と違い、幅広い茎を持ちます。広茎京菜は、関東圏で京菜が一般的になるまで栽培されていた品種です。繊維質でパリパリと歯ごたえがあるため、生食には向きません。主に漬物や鍋物として使われてきました。茎の細い京菜(水菜)の流通が広まるにつれ、広茎京菜の栽培量は減少傾向にあります。
品種④壬生菜
壬生菜(読み方:みぶな)は、京野菜として有名なもののひとつでしょう。壬生菜も水菜と同じ京菜の一種です。新選組で有名な壬生寺の近くで誕生した野菜であることから、壬生菜の名前が付けられたといわれています。一般的な水菜との大きな違いは葉の形です。柊のようにぎざぎざした葉を持つ水菜と違い、壬生菜は楕円形の細長い葉をしています。壬生菜は京都で古くから愛されてきた野菜で、漬物で食べるのが人気です。
品種⑤サラダ水菜
一般的な水菜とサラダ水菜の違いは、辛味と歯ごたえです。サラダ水菜は、生食用に品種改良されたもののため、辛味が少なく、生で食べてもゴワゴワとした硬さが気になりません。ベランダやプランターでの栽培も可能なため、家庭菜園でも人気の品種です。
京菜も水菜も同じものをさすことがわかりましたが、今は「水菜」という呼び方のほうが一般的かもしれませんね。