エビヅルとは?
名前 | エビヅル |
和名 | 海老蔓:葡萄蔓 |
学名 | Vitis ficifolia |
分類 | ブドウ科:ブドウ属 |
原産地 | 日本:朝鮮 |
高さ | 5m |
開花時期 | 6月~8月 |
エビヅルは蔓性の落葉木本
秋に紅葉し葉を落とすエビヅル(和名:海老蔓または葡萄蔓)は蔓性の植物で、原産地は日本や朝鮮です。北海道から沖縄の広範囲に生息し、なだらかな丘や山のなか、林の縁などに自生しています。分類はブドウ科ブドウ属で、ヤマブドウや野ブドウもエビヅルの仲間です。
学名の意味
エビヅルの学名は「Vitis ficifolia」で、「Vitis」とは「葡萄の蔓」という意味で、「ficifolia」は「イチジクのような(似た)葉の」という意味があり、どちらもラテン語の意味に由来します。
和名「海老蔓」の由来
和名「海老蔓」には、由来となる3つのエピソードがあります。
- 海老蔓の葉の裏側につく毛のようすを、海老の色に見立てた。
- 完熟した果実の黒い色が、伝統色の「エビ色」に似ているため。
- 「エビ色」は漢字で「葡萄色」と書き、「葡萄」のことをかつて「海老(エビ)」と呼んでいたため。
エビヅルの特徴1:蔓
成長が進むと変化する蔓色
大きくなると5mほどの高さになるエビヅルの蔓。蔓色は緑や赤みを帯びた緑で、若い蔓にはびっしりと細かな毛があり、あとに木質化して堅くなると毛はなくなり、蔓の色も灰色になります。
巻きひげ状の蔓が巻きついて伸びていく
生えたばかりの蔓は細く巻きひげ状でしなやかさがあり、ほかの植物や樹木、フェンスや塀などに巻きついて成長していきます。若い蔓ほどではありませんが、木質化した蔓にもある程度のしなやかさが残ります。
エビヅルの特徴2:葉
水鳥の足のような形の葉
エビヅルの葉は光沢を持つ濃い緑色で、付け根から先端までの長さは5cm~10cmほど、幅は5cm~8cmほどです。2つの切れ込みを持ち、3つの山に分かれた葉は、水鳥の足のような形をしています。くっきりとた葉脈が葉の中央から伸び、葉表にはふっくらとした細かな膨らみと、葉裏には細かな葉脈が目立ち短毛が生えています。
紅葉は9月の終わりころから
9月の終わりころから紅葉が始まり、葉の縁からまだらに色づいていきます。紅葉した葉の色は黄色や赤、赤みを帯びた茶褐色、色がミックスしているものもあります。
エビヅルの特徴3:花
米粒のような小さい花
花柄は6cm~12cmほどの長さがあり、花は先端から円錐形に広がって無数につきます。葉の色より明るい黄緑色の花は、こめ粒のように小さく丸い形で、5枚ある花びらは閉じたまま開きません。(上の画像は雌花)
雌花と雄花のようす
エビヅルの花は、雌花と雄花が別々の枝に生じる雌雄異株で、雄花は単体で生じますが、雌花は雌しべも雄しべも備えた両性花になっています。雌花から伸びる雌しべは退化して短く、雄花からは雄しべが長く伸びています。(上の画像は雄花)
花の観賞期間
花は6月ころから咲き始め、8月まで観賞できます。小さい花は葉によって隠され表から見えないこともあるので、開花時期は近づいて葉をめくり観察してください。
エビヅルの特徴4:果実
一般的なブドウの房のように実る果実
エビヅルの果実は、サイズは小さめですが一般的なブドウの房のような形で実り、粒の大きさは約5mm~6mmほどで形は丸く、皮の色は緑から完熟すると濃い紫色に変わります。果肉はみずみずしく、水分が多い液果です。
エビヅルの特徴5:種
筋が入ったしずく型の種
種は果実の中に2~4粒ほどでき、大きさは4mm~5mmほど、形は先端が尖り下膨れるしずく型です。種の色はわずかに赤みを帯びた黒褐色で、種の中心に種を一周する筋が入り、背面には筋に囲まれた小さな膨らみがあります。
エビヅルの果実の味
すっぱく甘い果実
果実は人も食べることができ、強いすっぱ味と甘さがあります。糖分やビタミン類が多く含まれた果実は疲労回復に効果があり、ホワイトリカーなどに漬けて果実酒を作ることができます。
エビヅルの仲間1:ヤマブドウ
名前 | ヤマブドウ |
和名 | 山葡萄 |
学名 | Vitis coignetiae |
分類 | ブドウ科:ブドウ属 |
原産地 | 日本:朝鮮半島:中国 |
高さ | 3m~10m |
開花時期 | 5月~6月 |
ヤマブドウは蔓性落葉低木
ヤマブドウ(和名:山葡萄)は深い山の中に自生し、紅葉する蔓性の落葉低木です。甘さと酸味がある果実は生で食べることができるほか、ワインやジャム、ブドウジュースなどの原料になっています。
皮細工に使われているヤマブドウの樹皮
蔓から剥いだ樹皮(ひご)は、小物入れやカゴバックなど皮細工の素材として使われています。
エビヅルとヤマブドウの違い
ヤマブドウの葉はエビヅルより大きく成長し(約30cmほどになる葉もある)、ツヤはエビヅルほどなく、縁のギザギザが目立ちます。葉の形は五角形でエビヅルのように深い切れ込みはなく、開花時期はヤマブドウのほうが少し早めになります。果実は青みがかった黒紫色で、弱冠ヤマブドウのほうが大きめです。
ヤマブドウの見分け方のポイント
エビヅルとヤマブドウの見分け方には、つぎの8つのポイントがあります。
- 葉の大きさ…(ヤマブドウは大型)
- 葉の切れ込み…(ヤマブドウには深い切れ込みがない)
- 葉の形…(ヤマブドウは五角形に近い形)
- 葉の光沢…(ヤマブドウの光沢は少ない)
- 葉の縁…(ヤマブドウは鋸歯が目立つ)
- 開花時期…(ヤマブドウのほうが開花が早い)
- 果実の大きさ…(ヤマブドウのほうが少し大きい)
- 果実の色…(ヤマブドウの果実は青みがかり黒っぽい)
エビヅルの仲間2:野ブドウ
名前 | 野ブドウ(ノブドウ) |
和名 | 野葡萄 |
学名 | Ampelopsis glandulosa var. heterophylla |
分類 | ブドウ科:ブドウ属 |
原産地 | 日本:中国 |
高さ | 3m~5m |
開花時期 | 7月~8月 |
市街の空き地にも自生する野ブドウ
野ブドウ(和名:野葡萄)は日本の広範囲に生息し、山野の草木が生い茂った場所や市街の空き地、藪などに自生する蔓性落葉低木です。熟した果実の色が淡い緑からピンクや青、紫など多様に変化することから観賞用の植物としても親しまれています。
エビヅルと野ブドウの違い
野ブドウの葉裏にはエビヅルのような短毛はなく、ツルツルとした肌触りで光沢があります。花は花弁をしっかりと開くタイプで、エビヅルとは違い雌雄同株、開花は少し遅く7月~8月ころになります。果実の大きさはエビヅルよりわずかに大きく、熟しても無味でエビヅルとは違い食用にはなりません。
野ブドウの見分け方のポイント
エビヅルと野ブドウの見分け方には、つぎのような6つのポイントがあります。
- 葉裏…(野ブドウには短毛がない・ツルツルしている・光沢がある)
- 花弁…(野ブドウはしっかりと開く)
- 分類…(野ブドウは雌雄同株)
- 開花時期…(野ブドウの開花は少し遅い)
- 果実の大きさ…(エビヅルより大きめ)
- 果実の味…(野ブドウは無味)
まとめ
日本の伝統色であるエビ色の美しい実をつけるエビヅル。果実は小さめでも味がしっかりしていて、疲労回復に有効な栄養素を含んでいます。そのまま食べるなら、水分が少し抜けてシワになったころが食べどき、甘さがましてさらに美味しくなりますよ!お酒との相性もよいので、エビヅルの果実をたくさん収穫したら、果実酒で長く楽しむのもおつなものです。