ムクゲ(木槿)の花とは
ムクゲの木に咲く白い花を、初夏の公園や生け垣などで目にする機会は多いのではないでしょうか。このムクゲの花は、朝咲いても夕方にはしぼんでしまう一日花です。その花の命が短いことにより、はかない花として知られていますが、白やピンクなど淡い色の花色も、はかなさを漂わせています。
ムクゲの花は韓国の国花
ムクゲの花は韓国では国花になっており、韓国の国章や勲章にムクゲの花のモチーフが使われています。そのほかにも、ホテルの格付けに「星」ではなくて「ムクゲの花」が使われていました。このように、ムクゲの花は、韓国で大変親しまれています。韓国では、ムクゲではなく「ムグンファ」と呼ばれています。
スタバでも見かけます
また、世界的なカフェチェーンのスターバックスは、国ごとに柄の違う限定デザインのコーヒータンブラーを販売しています。韓国限定で販売されているタンブラーに、国を代表する花としてムクゲの花のデザインが使用されています。
ムクゲの花は夏の茶花
日本では、夏の茶室にムクゲの花がよく飾られています。茶花として使い始めたのは、茶道の家元であった千宗旦です。宗旦は、茶道を確立した千利休の孫にあたり、一日でしぼんでしまうはかなさが茶道の説く一期一会に通ずるということで、ムクゲの花を大変好んでいました。宗旦の好んだムクゲは「宗旦ムクゲ」と名づけられ、ムクゲの品種にもなっています。
ムクゲの花の特徴
ムクゲは、アオイ科フヨウ属に分類される落葉性低木です。ムクゲの花の大きな特徴として、花が一日でしぼんでしまうことが挙げられます。花の寿命は短いけれど6月〜10月まで次々と花を咲かせるので、木全体では花が途切れない特徴もあります。また、花の大きさが5〜10cmと、植物の花の中で大きいこともムクゲの花の特徴です。このほか、ムクゲの花にはどのような特徴があるのでしょうか。
ムクゲによく似ている花がある
ムクゲと同じフヨウ属に属する花に「ハイビスカス」や「フヨウ」があります。この3つの花は、形や大きさが似ており咲く時期も近いので、しばしば花を間違えられます。よく似た3つの花を見分けるポイントは、めしべとおしべの違いをしっかり見ることです。
ハイビスカスの花と見分けるポイント
ムクゲとハイビスカスの見分けるポイントは、おしべの位置の違いです。どちらの花も同じ花軸にめしべとおしべがありますが、ムクゲはめしべとやや離れておしべがあります。一方、ハイビスカスは、めしべのすぐ下におしべがあります。ハイビスカスは、常夏の南国の花のイメージがありますが、鉢植えにして室内で冬越しさせることで寒い地域でも栽培できる花です。
フヨウの花と見分けるポイント
ムクゲとフヨウの花は、めしべの違いで見分けることができます。ムクゲはめしべがまっすぐか下を向いていて、フヨウはめしべが上を向いています。フヨウの花の色も白やピンクの淡い色が多く、めしべをよく見ないと花の見分けがつきません。花ではなく違いがわかりやすい葉のほうが、ムクゲとフヨウをしっかり見分けられます。フヨウは、関東より西の日本各地で庭木として育てられています。
花粉にも特徴がある
ムクゲの花のおしべには、花粉がついています。この花粉は0.1mmほどの大きさがあり、他の花の花粉よりも大きめです。また、ムクゲの花粉は虫に運んでもらいやすいように、花粉の表面が目には見えない多くのとげで覆われています。そのため、花粉が体や服に付きやすいので、近くにいるときはおしべに触れないように注意しましょう。
ムクゲの花の種類
ムクゲの花は、花びらの数により一重、半八重、八重咲きに分類されます。ムクゲの一重の花は、花びらが5枚です。半八重や八重咲きの花は、花の生育中におしべが変形することで花びらの枚数が多くなります。どれくらいの数のおしべが変形するかは、品種だけでなく、肥料や日当たりといった生育条件や咲いている花の数の影響もあります。
種類が違うと花の表情も違う
この章では、ムクゲの花の種類別にそれぞれの特徴と代表的な品種を紹介します。同じムクゲの花でも、花びらの数が違うだけで違う印象になります。一重のムクゲの花はシンプルですが、花びらの枚数が増えた半八重や八重咲きの花には華やかさがあります。
ムクゲの花の種類①一重
ムクゲの一重の花は、ハイビスカスやフヨウと間違われやすい種類です。花びらの数は5枚で、花の中央にあるめしべの下に花粉をつけたおしべがあり、ムクゲの花の中で最もシンプルなつくりをしています。一重のムクゲは、花の色は白く底が赤い色をしている「宗旦」や「日の丸」の品種が有名です。
ムクゲの花の種類②半八重
ムクゲの半八重の花は、「祗園守」「花笠」「バラ咲き」と花びらの数により3つに分類されます。おしべの変形した花びらが、30枚以下のムクゲは祗園守、30枚以上のムクゲは花笠、全体の4割を超えるムクゲはバラ咲きになります。半八重のムクゲの品種は、「鳥取花笠」が広く栽培されていて有名です。
半八重の花でも変化がある
ムクゲの花は、同じ年の同じ木の中でも、花びらの数や花びらの太さに変化があり、半八重のムクゲの花の木でも、一重や八重咲きといった種類に見える花が咲くことがあります。このように、花びらの数や太さに変化が出てくるのは、日当たりや肥料を与える量が花の生育に影響して、おしべの変形具合が違ってくるからです。
ムクゲの花の種類③八重咲き
ムクゲの八重咲きの花は、もともとの5枚の花びらと区別がつかなくなるくらい、多くのおしべが花びらに変形します。八重咲きは、花びらの数ではなく状態により、「乱れ咲き」「菊咲き」「鞠咲き」と3つに分類されます。八重咲きのムクゲは、「紫玉」や「ピンクデライト」が代表的な品種です。花びらの数が多く色も紫色や濃いピンク色で、八重咲きのムクゲは、大変華やかな印象のある花です。
八重咲きムクゲの種類別特徴
乱れ咲きは、元の花びらと変形した花びらが不規則に並んでいて、花びら全体の枚数は少なめです。菊咲きは、花びらが規則的に並び、花びらの長さが長めです。鞠咲きは、花びらの数が非常に多く、花びらの長さが短めで鞠のように咲きます。八重咲きでも、初めは鞠咲きだったムクゲの花が、花びらの長さが伸びて菊咲きになるという種類の変化を見ることができます。
ムクゲの花言葉
花にまつわるいわれや花の持つ特徴に合わせ、それぞれの花に花言葉があります。ムクゲの花にはいくつかの特徴がありますが、どのような花言葉を持っているのでしょうか。
ムクゲの花言葉①信念
ムクゲは、昔はタチアオイと同じ学名で、区別がありませんでした。タチアオイは、11世紀末から13世紀のヨーロッパで行われた十字軍の遠征中に持ち帰られた花です。十字軍とは、キリスト教のカソリック教徒が聖地エルサレムを奪還するために遠征させた兵隊です。タチアオイが強い気持ちを持った行動によってヨーロッパにもたらされた花ということで、同じ学名だったムクゲも「信念」の花言葉となりました。
ムクゲの花言葉②新しい美
写真は、木全体に花を咲かせているムクゲです。このように、ムクゲの花のひとつひとつはすぐにしおれてしまいますが、次々と花を咲かせます。咲いている花は常に新しいことにより、「新しい美」という花言葉となりました。また、花を切らさない特徴を、親が子供に愛情を注ぎ続ける姿に重ねて「慈しみ」の花言葉もあります。
まとめ
ムクゲは、ひとつの花は一日でしぼんでしまうはかない花です。しかし、6月〜10月と長い間次々と花を咲かせて、木全体の花は切れることがありません。ムクゲの花は、種類がいくつかありそれぞれに違う花の表情があります。また、同じ木に違う種類の花を咲かせることが多く、どんな花があるのか見比べる楽しさがあります。生け垣や公園などでムクゲの花を見かけたときは、ぜひじっくり観察してください。
出典:写真AC