竜血の意味
「竜血」とは、古来から西洋・東洋で広く利用されてきた赤味を帯びた固形の物質のことを指します。質の高いものは医薬品として利用され、それ以外はおもに染料などに利用されました。原料は竜血樹の樹脂や鉱物など複数あり、いずれも貴重品として高額で取引されてきました。
竜血の種類
1.竜血樹(リュウゼツラン科ドラセナ属)の樹液・樹脂
竜血樹、主にドラセナ・シナバリの幹を傷つけ、染み出した樹脂をかき集めて固めたものが竜血です。この樹脂の竜血は別名「麒麟血(キリンケツ)」ともよばれ、古代ローマ時代から止血や鎮痛の薬品として利用されていました。
2.その他のドラセナ属(東南アジア原産など)の樹液・樹脂
東南アジアにも竜血樹が存在しています。「ドラセナ・コンシンネンシス」と「ドラセナ・カンボジアーナ」とよばれるドラセナ属の2種で、ともに竜血を産出します。これらの木から採取された竜血は、上のドラセナ・ドラコ、ドラセナ・シナバリと同じように利用されています。
3.ヤシ科の植物「キリンケツヤシ」の果実の加工品
キリンケツヤシ (Daemonorops draco)はヤシ科ヒメトウ属の植物です。キリンケツヤシの竜血は果実から採取されます。利用目的は、歯みがき粉や飲料水などの食用着色料やニスなど染料が主ですが、薬用に用いられる場合もあるようです。他の竜血樹と違い、籐の仲間ですので高さは1m前後です。
4.鉱物「辰砂」
鉱物である辰砂(しんしゃ)は、水銀を生成する原料として古くから利用されています。また中国では漢方薬の原料として現在も利用されており、「丹砂(たんさ)」または「朱砂(しゅしゃ)」とよんで珍重されています。日本でも弥生時代から使用された記録があり、壁画などの朱色の染料や漆器に色を付ける朱墨の原料として利用されていました。
竜血の利用法・効能
紀元前後から使われ始めたといわれている「竜血」は、現在でも漢方薬などに利用され、また販売もされています。その竜血を原材料から3つに分け、それぞれの使われ方や効能などをご紹介します。
竜血樹の樹脂から採れる「竜血」
竜血樹由来の良質な竜血は、薬用として利用
ドラセナ・ドラコ、ドラセナ・シナバリから採取された良質の竜血は、現地を中心に止血剤や収れん剤、防腐剤、消毒剤などに利用されています。
薬用以外は染料・家具用のワニスなどへ利用
染料としては辰砂から取れる赤が有名ですが、現地でより高級な布を仕立てる場合には竜血樹由来の染料が使われているそうです。また、中世の頃には呪術や錬金術の材料としても使われたといわれています。
キリンケツヤシの果実から採れる「竜血」
漢方薬として内服する「血竭」の効能は止血・鎮痛
漢方方剤としては「七厘散」・「大活絡丹」にキリンケツヤシ由来の竜血に含まれる「血竭(けつかつ)」が使用されています。効能は止血・鎮痛と、古来からの竜血の使われ方とほぼ同じです。竜血の主成分は樹脂エステルとドラコレジノタンノールの混合物とされ、多糖類には薬用の抗凝固特性があるといわれています。
外用薬としては、捻挫や打撲、外傷などに利用も
キリンケツヤシ由来の竜血は、捻挫や打撲時の痛み止めや外傷の化膿防止などに効果があるとされています。
鉱物の辰砂から採れる「竜血」
染料、インクなどとして古くから利用
辰砂由来の竜血は、貴重な赤色素として古来から利用されてきました。古い時代の掛け軸や器などによく辰砂の赤を見ることができます。現在陶芸で使われているうわぐすりの「辰砂」は、水銀ではなく銅由来の色素となっています。
鉱物「辰砂」由来の竜血は毒性あり
毒性のある水銀はこの辰砂から精製されます。そのため、辰砂は鉱物として毒性が高いことで知られており、植物由来の竜血と間違って口にしないよう注意が必要です。
漢方薬の辰砂は催眠や鎮静目的で現代でも利用
漢方薬として製剤された辰砂は現在でも販売されています。効能は催眠・鎮静などで、「朱砂安神丸」が代表的な処方です。服用は専門家の指導のもとで安全におこないましょう。
竜血樹・竜血まとめ
竜血樹は数千年という長いあいだ、現地の人々の生活とともに生きてきた神秘的な植物です。日本でも入手は容易ですので、ぜひ育ててみられてはいかがでしょうか。また、現在でも現地の人には万能薬として利用されることもある竜血ですが、薬品・漢方薬として利用できるものは品質・グレードの高いもののみです。そのため、内服する場合にはくれぐれも自己判断せず、専門家のいる漢方薬局での相談をおすすめします。
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Andy Dingley