シュロ(棕櫚)の木の剪定が難しい理由
棕櫚の木とは南国に生えるヤシの種類で、ゴツゴツとした背の高い幹と放射状に何本も伸びる細長い葉をもつ植物です。ヤシ科特有の見た目は、一本植えられているだけで、南国の開放的な雰囲気を感じさせてくれるでしょう。栽培しやすさから、南国以外のさまざまな場所で育てられています。一方で、棕櫚の木とは剪定や手入れが難しいといわれる植物でもあります。
理由①高さ10m以上まで伸びることもある
南国のヤシの木の種類であるシュロの木は、性質上横に枝を広げることなく、ひたすら上に成長していく植物です。一切枝分かれしないため樹高が高くなりやすく、一般家庭でもハシゴが届かない高さに伸びることも珍しくありません。シュロの木があまり高くなりすぎると、幹の上部や先にある葉に手が届かなくなってしまい、手入れするのは困難です。また、慣れないかたが無理に幹へ上って剪定を行うと、落下する危険も高くなります。
理由②成長が遅く放っておいても育つ
シュロの木は南国のゆったりとしたイメージどおり、成長速度が遅く寿命が長い木です。ゆっくりと時間をかけて伸びるため、10年かけてやっと30cmほど成長するといわれています。一方で、シュロの木は厳しい環境で放っておかれても育つという特徴もあります。
南国の暖かい環境を好む印象がありますが、実は-12℃まで耐える寒さに強い植物です。病害虫もつきにくく、水やりや肥料もほとんど必要ありません。結果、植えられたまま何十年も放置してしまい、気づいたら手がつけられない高さになったというケースが多いようです。
理由③剪定時に幹の繊維が絡みつく
シュロの木には南国のヤシと同じように、切れにくい繊維が生えています。剪定時に幹の繊維が残っていると、ノコギリやハサミでは絡みついてしまい、上手く切れません。剪定する前には邪魔になる繊維を、一旦取り除く必要があります。剪定だけでなく伐採するときも、幹の繊維を取り除いておくことが重要です。
シュロの木の剪定
剪定時期
シュロの木は枝が横に広がることがない種類のため、あまりこまめな剪定する必要はありません。葉の形を整え、成長を促すなら年1回程度行うだけで十分です。剪定に適した時期が特に決まっているわけではありませんが、シュロの木は暖かくなると新芽が出てくるため、4月ごろに行うのがおすすめです。剪定と同時に新芽の様子を確認しておきましょう。
剪定方法
シュロの木の幹に生えた繊維を適当な長さに切り落としながら、剪定を進めます。繊維を切るときは手で引っ張るようにして、ハサミを入れていきましょう。シュロの木の剪定は枝を落とすというより、葉の根元からカットするイメージです。
木の横に張り出している葉を中心に、枯れて茶色くなってしまった葉や、垂れ下がっている葉を切り落としましょう。きれいな緑色の葉は残しますが、新芽や小さな葉に日光が当たりにくくなっているようなら数を減らします。木全体のバランスを見て、10枚ほど葉が残っていれば問題なく成長します。
剪定の注意点
背の高いシュロの木を剪定するときは、ハシゴをロープで固定して安全に作業しましょう。剪定にはバネのついた、力の入りやすい剪定ばさみを使うのがおすすめです。硬い幹や葉で手を傷つけないよう、手袋も用意してください。また、繊維は非常に燃えやすいため、カットする際バーナーを使用すると思わぬ事故につながります。
シュロの木剪定時の注意点
- 手が届かない場合必ずハシゴや脚立を用意する
- 手袋で手を保護する
- 剪定用バサミか刈込ハサミなどを使用する
- 繊維は燃えやすいため火の気に注意する
シュロの木の手入れ
傷んだ葉を取り除く
シュロの木は成長が遅いため、定期的な手入れは必要ありませんが、枯れて茶色くなった葉や傷んだ葉を見つけたら取り除いておくとよいでしょう。適度に数を減らしたり、生えている場所を調節したりすることで、葉に日光を当たりやすくします。
剪定と同様に多く生え過ぎた葉や傷んだ葉を落としておけば、木全体の形も整います。また、葉が生い茂っていると、夏前のジメジメした季節にハダニが発生してしまう原因になります。適度に葉の数を減らすことで、風通しがよくなり害虫予防に効果的です。
花穂は切り落とす
シュロの木は雄株と雌株がある種類の木で、雌株は花や実をつけることがあります。株を増やしたい場合を除き、観葉植物として楽しむシュロの木は花や実をつけさせないように育てます。花や実がつくと、幹や葉の成長が止まってしまうためです。5月ごろ、雌株に花穂がついているのを見つけたら、花が咲いてしまう前に切り落としておきましょう。
ボタニ子
次のページではシュロの木を伐採する方法についてみていくよ!
出典:写真AC