トベラってどんな植物?
春に白い花をつけるトベラは、海岸付近に自生するトベラ科常緑低木です。日本では東北地方南部以南で主にみられる植物ですが、韓国や台湾、中国の南部でも海岸付近で自生しているのが確認されています。
トベラの和名
トベラの和名はトベラノといいます。トベラノキは漢字で「扉の木」と書き、古くは扉をトベラと呼んだことからトベラノキになったといいます。
和名の意味には節分が関係する
トベラの和名「扉の木」は、日本各地で伝わる厄除けの風習・節分に由来します。節分ではにおいのきついもの(イワシなど)を玄関にぶら下げる風習がありますが、これには鬼を追い返す意味があります。なおトベラのにおいもきついので、「節分で扉にぶら下げる木=扉の木=トベラノキ」と意味が転じたのが由来です。
病気と関係する隠語がある
トベラの名前は、ある病気にかかった女性を意味する隠語として使われることがあります。これは独特のにおいがするトベラの実が、女性特有の病気である外陰部臭症(別名・すそわきが)のにおいに似ていることに由来します。ちなみに外陰部臭症の隠語として使われることもあります。
花言葉が花と実で違う
一般的に花言葉といえば植物の花の印象からつけられるものが多いのですが、トベラの花言葉は花と実でそれぞれ違います。ただし一般的には、どちらの花言葉も「トベラの花言葉」として使われます。
トベラの花の花言葉
海岸付近で自生するトベラの花は、反り返った葉に包まれるようにして咲きます。その様子から連想した花言葉が「慈しみ」です。
トベラの実の花言葉
独特なにおいがするトベラですが、完熟した実にはにおいがないので、鳥たちのエサになります。しかも種には粘液があるので、鳥たちのくちばしにくっつくと種は遠くまで運ばれます。その様子からトベラの実には「偏愛」という花言葉がつけられました。
都会のトベラは害虫に弱い
野生のトベラは、基本的に害虫に強いです。野生の場合はトベラをエサにする昆虫がほとんどいないため、トベラに害虫が大量発生することはありません。ところが都会に植えられているトベラには「トベラキジラミ」という害虫が大量発生し、放置しておくと深刻な病気の原因になります。
トベラの害虫が原因で起こる病気
トベラの害虫・トベラキジラミが大量に発生すると、カビ菌の一種「すす病菌」が繁殖します。すす病菌は植物の表面に付着し繁殖するため、光合成を妨害し植物を枯らしてしまいます。すす病菌は害虫の排泄物を媒介して繁殖するので、トベラキジラミだけでなくアブラムシ・カイガラムシなどの害虫でもよく見かけます。
トベラの特徴
強烈なにおいから「すそわきが(裾腋臭)」の隠語として使われるトベラですが、実は花や実のファンが多い植物でもあるのです。そこでトベラの特徴をわかりやすくまとめました。
花の特徴
海岸だけでなく都会の街路樹としても使われるトベラは、4月~6月にかけて星のような形をした白い花を咲かせます。もちろん花にはにおいがありますが、「強烈なにおい」といわれるようなものではなく、白い花にぴったりなよい香りがします。
実の特徴
花が咲き終わると、真っ赤な実をつけます。実の内部は粘着性のある成分でつくられており、その中心に種があります。なおトベラの実は無味無臭です。
葉や茎の特徴
街路樹に使われる植物のため、茎や葉はとても丈夫で光沢があります。しかもトベラの強烈なにおいの原因が、葉や茎です。自生している状態で何もしなければにおいが起きることはありませんが、葉や茎が傷つけられると不快になるほどのにおいが一瞬で周囲に広がります。
次のページでは、においを放つ理由を見てきましょう。