ヒメフウロ(姫風露)とは?
可愛い名前で可憐な花を咲かせる「ヒメフウロ」は、どんな花でしょうか?ヒメフウロの特徴を紹介していきましょう。
ヒメフウロ(姫風露)の基本情報
学名 | Geranium robertianum |
和名 | ヒメフウロ |
科 | フウロソウ科 |
属 | フウロソウ属 |
高さ | 20cm~40cm |
花径 | 1cm~2cm |
分類 | 1年草~越年草 |
別名 | シオヤキソウ |
生育地 | 石灰岩地 |
ヒメフウロの名前の由来
ヒメフウロは、400種類以上も存在するフウロソウ属の中でも、花の大きさが小さく可愛らしいところから「姫」と名づけられました。
別名はシオヤキソウ
ヒメフウロは近づくと独特の匂いがします。シオヤキソウ(塩焼草)という別名は、ヒメフウロの匂いが塩を焼いたときの匂いに似ているところからつけられました。
ヒメフウロ(姫風露)の花
花の特徴
花びら
ヒメフウロは、細くて長い柄の先に1輪か2輪、ピンク色の花を咲かせます。花びらは5枚で、紫に近い濃いピンク色の筋が2本縦に入っています。
雄しべと雌しべ
ヒメフウロは、赤い葯(やく)を持つ雄しべが先に立ち上がって花粉を出し、後から雌しべが出てくる「雄性先熱」という種類の花です。雄しべは、いろいろな形に変化していくので、時期によって違う姿が見られます。
花のガクと柄
ヒメフウロのガク片と花の柄は、短いせん毛と長い開出毛に覆われています。
ヒメフウロ(姫風露)の葉
葉の特徴
ヒメフウロの葉は、向かい合って生えています。このような生え方を「対生」と言います。それぞれの葉は3つから5つに深く裂けています。小さな葉は、さらに羽状に深く裂けていくつかに分かれています。
茎や葉の様子
茎や葉には細かな毛が生えていて、茎は細く長く伸びて先端で枝分かれします。ヒメフウロの葉は見た目がセリ科のようで、ニンジンの葉に似ています。葉の形は別の種類と見分けるポイントにもなります。
ヒメフウロ(姫風露)の実
実の特徴
ヒメフウロの実は、柱頭も含めて2cmほどの長さのくちばし状になります。1cmほどのガクの中に5つの実ができます。実のできる時期には全草が赤く染まる姿も見られます。
薬草としてのヒメフウロ(姫風露)
「医者泣かせ」とも呼ばれるヒメフウロ
医者泣かせ
ヒメフウロは、「医者泣かせ」の秘薬としても重宝されてきました。リウマチや腫瘍、風邪などには乾燥させて煎じたもの、打撲傷、犬や蛇の咬み傷には新鮮なヒメフウロをたたいて塗布するなどの方法で使われてきました。
ヒメフウロエキス
ヒメフウロは、光老化や肌の炎症の原因となるトリプターゼの働きを弱めて皮膚を保護する効果があるとされ、化粧品などにも使われています。
ボタニ子
薬や化粧品としても貴重なんですね!
ヒメフウロ(姫風露)の花言葉
ヒメフウロの花言葉は、「静かな人」「人知れずの愛」などがあります。
ボタニ子
小さくて可愛いヒメフウロにぴったりの花言葉ですね。
ヒメフウロ(姫風露)の生息地
都市部でもヒメフウロが確認され、ヒメフウロやヒメフウロソウの名前で販売されている花もありますが、それらは外来種や園芸種です。日本に自生するヒメフウロは一部の地域でしか見ることができません。
日本でヒメフウロを見られる場所は?
日本に自生するヒメフウロの分布地は、滋賀県から岐阜県にまたがる伊吹山、鈴鹿山脈霊仙山、養老山地、徳島剣山など限られたごく一部の地域です。
レッドデータ
日本に自生するヒメフウロは、もともと石灰岩地帯に育つ特殊な環境から個体数が少ない植物でしたが、生育条件の悪化から、さらに個体数が減少しています。そのため、岐阜県、三重県、徳島県などで絶滅危惧種の指定を受けて保護されています。
ボタニ子
日本のヒメフウロは絶滅危惧種なんですね!大切に守っていきたいですね!
ヒメフウロ(姫風露)の外来種
ヒメフウロは、アジア、北アメリカ、ヨーロッパなど幅広い地域に分布しています。園芸種としてエロディウム属のヒメフウロソウ、ゼラニウム属のヒメフウロなど、いろいろな種類が日本に輸入され市販されています。
帰化植物
日本で自生するヒメフウロの生息地は限定されていますが、北海道や本州各地でヒメフウロが観察されています。園芸用などで持ち込まれた外来種が帰化したものと推測されています。
帰化植物
「帰化植物」とは、もともと生育していた外国から、人為的に、または偶発的に、日本の別の地域へ運ばれて定着し、野生化した植物のことです。日本各地で確認されているヒメフウロは、ハーブや園芸用として輸入した外来種が定着し、野生化した帰化植物と考えられています。
ブルーリスト
北海道では外来種のヒメフウロを「ブルーリスト」に指定しています。「ブルーリスト」とは、北海道で独自に作成されたリストで、人為的に道外から持ち込まれ生態系を脅かす外来種についての基礎的な資料とされています。
中国のヒメフウロ(姫風露)
中国のヒメフウロは湖北・四川・貴州・雲南で生育しています。中国では、地方により全草を「ロウカンソウ」と呼び、薬草として用いることもあります。また、中国では、中国大陸に広く自生する同じフウロ属のゲンノショウコの果実つきの全草を薬草として用いています。
まとめ
可憐な花を咲かせるヒメフウロの特徴や、生息地、抱えている問題などについても見てきました。外来種のおかげで鉢植えや身近な場所でも見られるようになってきたヒメフウロですが、絶滅の危険にさらされながらも限られた山地で生息する在来種も大切に守っていけるといいですね。
出典:写真AC