シロイヌナズナとはどんな植物?
シロイヌナズナという植物をご存知でしょうか。別名のぺんぺん草の方が、聞きなじみがあるかもしれません。シロイヌナズナはアブラナ科の一年草で、繁殖力が強く、公園や道端など全国どこでも身近に見ることができます。ここでは、シロイヌナズナとはどんな植物なのかをご説明します。
シロイヌナズナの基本情報
分類 | アブラナ科 シロイヌナズナ属 |
学名 | Arabidopsis thaliana |
別名 | ぺんぺん草、三味線草、アラビドプシス |
英名 | Shepherd's purse |
生態 | 一年草 |
草丈 | 10~40cm |
原産地 | ユーラシア大陸~北アフリカ大陸 |
花色 | 白色 |
開花時期 | 2~6月 |
花言葉 | あなたに私のすべてを捧げます |
シロイヌナズナは食べることができ、春の七草に含まれるナズナは、シロイヌナズナのことを指します。公園や道端に咲いているのを見ることが多いため、雑草のイメージがついていますが、栄養素が高く、古くから漢方薬としても使われている植物です。
シロイヌナズナの名前の由来
シロイヌナズナの名前の由来には諸説あり、夏になると枯れて無くなる様子を「夏無」と表現したものが、次第にナズナと呼ばれるようになったという説があります。また、かわいらしい形を見て、撫でたくなる植物だからと「撫菜」と呼び始め、それがいつしかナズナに変化した、というのがもう一つの説です。
シロイヌナズナの花言葉
ナズナの英名である「Shepherd's purse」には「羊飼いの財布」の意味があり、果実の形が小銭入れがぶら下がっているように見えたことから名づけられてたと言われています。この英名から、財産をすべて捧げることを連想させたことで、「あなたに私のすべてを捧げます」という花言葉がつけられました。
シロイヌナズナの特徴
シロイヌナズナは公園や道端によく生えている雑草のため、目にしたことや、小さいころに遊んだことがある人は多いのではないでしょうか。シロイヌナズナはどのような形をしているのか、特徴を詳しくご説明します。
葉・茎の特徴
ひょろひょろとした細長い茎が、地面と垂直に縦に伸び、細長い楕円形葉をつけます。茎の上部にあたる頂部付近の葉は小さくて細長く、互い違いに葉がつくのに対し、地面に近い基部付近の葉は大きく、茎に対して放射状に葉をつけるのが特徴です。茎と葉には、全体的に細かい毛が生えています。
花・果実の特徴
茎のてっぺんに、小さな細かい花をたくさん咲かせます。1つ1つの花は、4枚の花弁を持っており、花の色は白色です。自家受粉しやすく、受粉すると、ハートの形をした果実をつけます。日本で別名ぺんぺん草や三味線草と呼ばれる由来は、果実の形が三味線のバチに似ていることからです。果実が成熟すると、中から種子がたくさん出てきます。
シロイヌナズナの用途
雑草のイメージが強いシロイヌナズナですが、遺伝子研究の実験体、栄養価の高い植物として食用、ドライフラワーなどの装飾と、さまざまな用途として利用されています。シロイヌナズナの用途について、詳しくご紹介します。
用途①実験体として利用
シロイヌナズナは、どこにでも咲く雑草ですが、ゲノムや遺伝子の研究実験としてよく利用されています。生長しても40cm程度の小さな植物は、室内の実験室で育てるのに向いているからです。他にも、生命力が強く成長のスピードが速いこと、種子をたくさんつけること、ゲノムサイズが小さいことなど、実験体として利用しやすい要素が多くあります。
実験体としての利用方法
シロイヌナズナは、日光に当てなくても蛍光灯の明かりがあれば成長できる生命力の強さや、種を撒いてから3カ月程度でたくさんの種子が実らせる成長速度の速さなどから、特にゲノムや遺伝子の分野で、様々な研究に利用されています。実際にどのような研究に利用されているのかいくつかご紹介します。
白菜のゲノム配列研究
白菜は、シロイヌナズナと同じアブラナ科の植物です。そのため、シロイヌナズナの遺伝子的特徴は、白菜にも当てはまります。シロイヌナズナの遺伝子を元に、病気・害虫に強く栽培しやすい白菜のゲノム配列などを決定する研究が行われています。
胚発生過程における頂端細胞と基部細胞の仕組み研究
受精卵が成長した胞子体のことを胚と呼び、胚発生過程とは、受精卵が細胞分裂を繰り返していく過程のことです。受精卵が細胞分裂をすると、細胞質を多く含む頂端細胞と、液胞を多く含む基部細胞が生まれます。胚発生過程は、植物の成長に必要不可欠ですが、頂端細胞と基部細胞を決定する仕組みは未だに不明で、解明研究に利用されています。
用途②食用として利用
シロイヌナズナは、中国では日常的に食べられている、栄養価の高い植物で、便秘やむくみ解消効果があると言われています。公園や道端など、どこにでも生えていますが、食べるときは、除草剤などの薬がかかっていないものや、踏みつぶされていないものなど、きれいなものを選んでください。生でも食べることができ、煮たり炒めたり揚げたりと、さまざまな方法で調理できます。
生で食べる方法
生のままサラダとしての食べ方がおすすめです。生で食べるときは、特にしっかりと洗ってください。シャキシャキとしたみずみずしい触感と、クレソンに似た少しの辛味が特徴的です。また、生のままお味噌汁に入れたり、餃子のタネに混ぜ込んだりすることもできます。
茹でて食べる方法
シロイヌナズナにはアクがあるため、茹でた後15分ほど水にさらしてアク抜きをします。茹でたものは、お浸しや、スープやお味噌汁の具として調理可能です。加熱調理をすると、しんなりとした触感になり、辛味も抜けてあっさりとした味わいになります。
揚げて食べる方法
洗ったシロイヌナズナの水気をしっかりとふき取ることが、カラっとした衣に揚げるポイントです。てんぷら粉をつけ、170℃程度の低めの油で揚げます。そうすることで、きれいな緑色を保つことができ、火が通りやすく焦げやすい野菜でも、焦がす心配はありません。
炒めて食べる方法
シロイヌナズナをフライパンなどで炒めると、緑色がよりきれいに発色するので、炒め物に入れるとそれだけで彩りがよくなります。火が通りやすいので、簡単に短時間で炒めることができるのも嬉しいポイントです。中国で日常的に食べられているため、中華風の味付けがよく合います。
用途③お部屋の飾りとして利用
シロイヌナズナは、情熱的な花言葉からプレゼントにおすすめの植物です。日本では雑草のイメージが大きいですが、かわいらしい見た目は観賞用に向いています。ブーケや花束などのアレンジに使うと、控えめな白い花とハートの形をした果実がさりげない美しさを演出してくれます。
ドライフラワーとして飾る方法
シロイヌナズナは、水分量の少ない植物のため、簡単にドライフラワーにすることができます。白い花は、ドライフラワーにすると小さくしぼんでしまいますが、その分、ハートの形をした果実の存在感が出てかわいらしいですね。そのまま壁掛けとして飾ったり、リースの材料に利用したりできます。
ハーバリウムとして飾る方法
自宅でハーバリウムを作成するときには、ぜひシロイヌナズナを利用してみてください。シロイヌナズナは、細長く花や果実が密集して実るため、ハーバリウムで使われる細長い瓶との相性がよいです。シロイヌナズナだけを使ってハーバリウムを作っても、寂しさを感じさせず、ナチュラルでおしゃれなものが作れます。
まとめ
シロイヌナズナの特徴と用途についてご紹介しました。どこにでも生えている雑草のイメージがあるシロイヌナズナですが、遺伝子研究の分野で大活躍していたり、高い栄養価があったりと、実は高いスペックを持っています。どこかで見かけたときは、食べたり飾ったりと、参考にしてみてください。
出典:写真AC