スナバコノキとは
スナバコノキとはアマゾンの熱帯雨林地域が原産の常緑高木です。広範囲に種を飛ばして増えるため、分布地域が広がります。スナバコノキという名前は、「砂を入れる箱」に由来します。インクの吸い取り紙がなかったころ、乾いた粒子の細かい砂をかわりに使っていました。その砂を入れる器として、熟す前に油で揚げ、小さな穴をあけたスナバコノキの実が利用されていたのです。
基本情報
学名 | hura crepitans |
形態 | 常緑高木 |
科属 | トウダイグサ科フラ属 |
分布 | 南米、中央アメリカ、西インド、東アフリカ |
樹高 | 27m~60m |
別名 | ダイナマイトツリー、サンドボックスツリー、猿の拳銃 |
毒性 | 樹液、葉、実 |
スナバコノキの特徴
スナバコノキは木の表面に牙のようなトゲを生やす特徴のある、見るからに危険な木です。日本では筑波実験植物園で見られます。樹液や葉に毒があるのも特徴です。触らないようにしましょう。通販で種を扱っているところもありますが、種も有毒なうえに爆発する可能性があるので、取扱いには注意してください。個人で育てることはおすすめできません。
実
スナバコノキの実は直径が5cm~8cm、長さが3cm~5cmの大きさです。手のひらサイズのタマネギをカボチャの形にしたようなものです。13個~16個の種が放射状に内包されています。実は爆発性裂開(ばくはつせいれっかい)で、熟して乾燥すると大きな音をたてて爆発し、種を遠くに飛ばします。側にいるときに爆発すると、まるで狙撃手に攻撃されて怪我を負うような危険な実です。
ボタニ子
花
スナバコノキの花は雄花と雌花で形がまったく違います。雄花も雌花も赤い色です。雄花は穂の形をした黄緑色の複数のつぼみが垂れ下がり、茎に近い部分から咲きはじめ、下へと開花していきます。花びらはありません。雌花は単一です。上を向いて咲き、放射線状に触手のようなものを伸ばしますが、こちらは花びらではありません。
ボタニ子
1984年発行のセントビンセント35c切手のデザインにスナバコノキが使われているわ。雄花と雌花が描かれているのよ。
葉
スナバコノキの葉は卵型で先がとがり、ハートに似た形をしています。葉茎が長く、1つの場所から3枚以上の葉が出る輪生(りんせい)です。葉脈がはっきりしていて裏にへこむため、葉脈のない葉の表部分がもりあがったように見えます。葉の縁はのこぎり状になってはいませんが、たいらにはならず、全体的に波打っていて毒があります。
木
スナバコノキの樹皮は灰褐色で、表面には人や動物を拒むかのように、牙のような無数のトゲが生えています。これは木に登って葉を食べる草食動物から身を守るための工夫です。樹液には毒があります。先住民族のカリブ族は、この毒を狩りに利用していました。動物を狩る弓矢の矢じりにこの樹液をぬって毒矢を作っていたのです。
スナバコノキの生態
スナバコノキの生態は、毒とともに生きているということです。実、葉、樹液に毒をもち、実や葉を食べる虫や動物から自身を守っています。また、増殖にも特化した個性的な生態をもちます。トリに実を食べてもらって糞として遠くへ運ばれる方法をとらず、自ら爆発して遠くに種をとばす生態を選びました。周囲に障害物がなければ、100mも遠くに飛ばせます。
スナバコノキの危険性
スナバコノキの危険性は、実が爆発したときに怪我をする可能性があることと、毒性です。世界でも指折りの危険植物といわれるスナバコノキは、アマゾンやサバンナに分布します。実を爆発させて種をばらまき生息地を増やしています。幹は明らかに危険な牙のようなトゲが生えているのでわかりやすいですが、少し光沢のある葉や、はぜて地面に落ちた種が有毒だと知らないと危険です。
①時速
スナバコノキの実が爆発する時速は240km~250kmです。これは、乗り物にすると北海道、東北、北陸、九州新幹線の最高速度と同じです。また、38口径や45口径の銃弾が時速1000kmなので、その1/4のスピードといえます。「猿の拳銃」という別名をもつスナバコノキは植物界の狙撃手といえるでしょう。
②毒性
スナバコノキは樹液、葉、実が有毒です。樹液は肌に触れるとひどくかぶれ、発疹ができます。万が一目に入ったら失明する可能性もあるでしょう。2015年にマレーシアで、子供がスナバコノキの実を食べて嘔吐や下痢の症状が出て、22人が病院に運び込まれました。ひどくなると痙攣(けいれん)を起こします。
ボタニ子
先住民族は樹液を魚を獲るときにも使ったのよ。
スナバコノキに似た危険植物
スナバコノキは種を飛ばす裂開性の植物としては世界一危険なので、これを超える植物はありません。しかし、葉や樹液、実などに強力な毒性をもつ植物がほかにも存在します。スナバコノキはトゲや樹液、葉にふれるとかぶれたり、食べると体調をくずしたりする程度ですが、命にかかわる植物もあります。
ギンピギンピ
オーストラリアに自生するギンピギンピはイラクサ科の植物で、葉と枝に細かいトゲが生えています。このトゲにはモロイジンという非常に持続性の長い毒物が含まれています。体に刺さると酸をかけられ焼かれたような痛みが2年以上も続き、その激痛に耐えかねて自殺者がでたほどです。
ボタニ子
ニュージーランドのイラクサ、ウルティカ・フェロックスは神経毒のトゲを持っているの。ちょっと触ったあとで、亡くなった方もいるわ。
ジャイアント・ホグウィード
ジャイアント・ホグウィードはコーカサス地方原産のセリ科の植物で、草丈は3mまで伸びます。ジャイアント・ホグウィードは光に反応して毒が活発化する「光毒性」です。ほんの少し触れただけで草の汁がつき、光によってかぶれ、やけど、壊死を起こし、症状は数年つづきます。全草有毒です。
狙撃手スナバコノキには手をだすな!
日本でスナバコノキの苗を目にすることはないですが、通販で実を扱うサイトもあります。観賞用としてヒモでしばったり、ビニールで保護してあったりしますが、爆発する可能性はゼロではありません。万が一種をまいて芽が出たとしても、自生地と気候が違うので大きく育つことはありませんが、有毒で危険なので観葉植物にするのはやめましょう。
実が爆発するときの音がダイナマイトみたいに大きなものなので「ダイナマイトツリー」っていう別名がついたのね。毒があるから食べちゃだめよ。