ナギの概要
ナギはマキ科の常緑性植物で、樹高20m以上に成長する高木種です。古くから「神が宿る神聖な木」とされ、神社によく植栽されました。特に和歌山県新宮市の熊野速玉大社(くまのはやたまたいしゃ)のものが有名です。樹齢1000年を超える大木で、天然記念物指定を受けています。漢字表記が「梛」「凪」「竹柏」など、複数あるのも特徴といえるでしょう。
「なぎの木」のほか、「ナツノキ」「センニンビキ」「チカラシバ」「コゾウナカセ」など、別名もいろいろとあるんですよ。
近年は観葉植物として人気
前にも触れたように、ナギは古い昔から「神の宿る木」として珍重されてきました。このため、神木として神社に植栽されています。一方で高木種のため、一般家庭の庭木として利用されることはあまりありませんでした。しかし近年では常緑植物で葉が美しく、神木とされるほど縁起がよい植物であることから、若木が観葉植物やミニ盆栽として利用されるようになりました。
ナギは高木種だけど、鉢植えにすると2mくらいで成長が止まるんだ。だから家庭で栽培する場合は、観葉植物として栽培するのがおすすめだよ。
ナギは耐寒性が低く、寒さに弱い植物でもあります。この点でも、観葉植物として鉢植えで栽培するのがおすすめなんですよ。
ナギの基本データ
学名 | Podocarpus nagi |
科名 | マキ科 |
属名 | ナギ属 |
原産地 | 日本、台湾 |
開花時期 | 5月~6月 |
花色 | 淡い黄色 |
ナギの特徴
特徴①じつは針葉樹
ナギの葉は、やや長細い楕円形で、表面にツヤツヤした光沢があるのが特徴です。一見は広葉樹のようですが、植物学上は針葉樹に分類されます。常緑性であることから、小さな若い木は観葉植物として扱われることが多くなりました。なお、ナギの葉の葉脈はすべて縦方向です。これも大きな特徴といえるでしょう。
ナギの葉は、葉脈が全部縦方向に走ってることから、葉が裂けにくく、ちぎれにくいという特徴もあるんだよ。
この特徴から、ナギは「縁結びの木」としても扱われているんですよ。
特徴②雌雄異株
ナギは雌雄異株の植物で、雄株と雌株にわかれています。開花時期になると、それぞれの株で花が咲きますが、どちらも地味であまり目立ちません。なお、ナギの受粉は風を媒介として行われます。受粉に成功すれば、雌株に小さな実がつきますよ。ちなみにナギが神社などに植栽される場合は、雌雄一対が基本です。
特徴③縁起物である
前に触れたように、ナギは古くから「神聖な木」「縁起のよい木」として、多くの人に崇められてきました。葉が裂けにくいことから、縁が切れないことと結びつけて「縁結びの木」「夫婦円満の木」とされています。また、ナギの名前は、風も波もない静かな海を表す「凪(なぎ)」にも通じます。このため、航海の安全を願う漁師や船乗りたちから、深く信仰されました。
海と関係ない人たちは、ナギの名前を「苦難をなぎ払う」とかけて、厄除けの木として大切にしていました。
特徴④特殊な成分を持つ
ナギの木は、ある化学物質を分泌しています。その化学物質は「ナギラクトン」といいます。抗菌・抗炎症作用を持つことから、アロマテラピーにも利用されている化学物質です。ナギラクトンには抗菌・抗炎症作用のほか、周囲の植物の生育を抑制する効果があるとされています。そのためナギの周囲では、他の植物が大きく育つことはほぼありません。
自分の身を守るための効果
ナギが他の植物の成長を抑える物質を分泌させるのは、「自分の身を守るため」といわれています。じつはナギは成長が遅いです。そのため、他の植物が成長して大きくなってしまうと、日光を受けにくくなるなど環境が悪くなってしまう恐れがあります。その対策として、他の植物の成長を抑える物質を分泌しているのです。この現象をアレロパシー(多感作用)といいます。
余談だけど、クルミもナギと同じように、他の植物の成長を抑制する物質を分泌して、他の植物を排除しているんだよ。
ナギラクトンには、動物に嫌われる効果もあります。この効果によって、動物による食害も防いでいるんですよ。
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出典:写真AC