クチナシ色素とは
クチナシ色素とは「クチナシ」という植物の果実からとれる天然の色素のことです。クチナシの木は日本に自生し、公園樹や庭木として身近に育てられています。その果実からとれる色素も危険性のない食用着色料、染料として古くから利用されてきました。
クチナシの木
クチナシ色素はクチナシの木の果実からとれる色素で、食用着色料や染料として利用します。まずはクチナシという樹木について詳しくみていきましょう。
基本情報
名称 | くちなし(梔子) |
分類 | アカネ科クチナシ属 |
分布 | 東アジア、日本では静岡県以西の森林に自生 |
形態 | 常緑低木 |
樹高・草丈 | 1m〜3m |
花の色 | 白 |
耐寒性 | やや弱い |
耐暑性 | 強い |
特性・用途 | 庭木、盆栽、食品添加物(着色料)、染料、香水 |
栽培の可否 | 可能、庭木として育てやすい |
名前の由来
「クチナシ」の名前の由来は、多くの植物では種子を持った果実は熟すと裂けて開くのに対して裂けずに閉じたままなので、開いた口がない果実から「口無し=クチナシ」となった説があります。
クチナシの特徴
特徴①樹木
クチナシは東アジアや日本の静岡県以西の森林に自生している常緑樹です。ツヤのある葉をつけ、樹高は1m〜3m程度に成長し樹形は株立ちになります。日本では古くから庭木として親しまれてきました。
特徴②花
5月〜6月に真っ白く甘い香りのする花を咲かせます。一重咲きと八重咲きがありますが、クチナシ色素がとれる果実をつけるのは一重咲きのものだけです。
特徴③果実
果実は、一重咲きのクチナシの花にだけつきます。花後に6本の萼(がく)が残り、その下に長さが2cmくらいの楕円形状で側面に突き出たような筋が入った果実がなります。10月〜11月ごろに赤黄色に熟したら収穫可能です。果実は食品添加物の色素だけでなく、漢方薬としての使い方もあります。
特徴④花の香り
クチナシの開花の時期、花の近くにいるだけでも気づけるほどの強い香りがあります。クチナシの花の香りは香水の材料としての使い方もあり、シャネルやグッチなどハイブランドの香水に利用されています。
クチナシ色素の歴史
中国
クチナシは中国の後漢、三国時代(25年〜280年)に書かれた生薬、漢方薬について解説した書物「神農本草経」で、山梔子(クチナシ、サンシシ)として掲載されている素材です。当時から漢方薬の原材料として用いられてきたほか、飲料や食用の着色にも用いられてきました。
日本
クチナシ果実の黄色い色素は、日本でも染料として奈良時代から用いられてきました。平安時代の「延喜式」に黄支子(きくちなし)と記述があり「古今和歌集」などにも詠まれています。現在でも和装の色を表すときに「黄支子」と使用されています。食品の着色料としても果実を採取して乾燥するだけで色素をとり出せるので、栗の甘露煮やたくあんなどの漬物の着色する使い方で一般家庭でもよく使われてきました。
クチナシ色素が利用される理由
色素はどのようにとり出すのか
クチナシ色素は、クチナシの果実を乾燥させたものからとり出します。食用には「クチナシ(ホール)」として大きめのスーパーマーケットや食品専門店などで市販されています。使い方は皮の部分を割って水から煮出す方法です。
色素が使われるようになった背景
クチナシの果実は、赤黄色に色づいた頃に割ると濃い黄色い液体が出てきます。それを利用して着色料として使い始められました。乾燥させると保存がきき、新年のお祝い料理の着色や衣類の染色として利用できます。クチナシは栽培も簡単で、天然の着色料で鮮やかな色を出すものが少なかった時代に身体に及ぼす危険性もなく、食用できる便利な植物であったことが色素を利用されるようになった背景です。
クチナシ色素を使っている製品
食品
クチナシ色素は、アレルギーなどの危険性も低いため多くの食品に使われています。代表的なものは黄色を鮮やかに出したい食品でサツマイモや栗を使った食品、菓子、たくあんなどです。またクチナシ色素の黄色を利用して作られる青、緑も多くの食品などに使用されています。
化粧品
食品に使われるほど人体に対して危険性の少ない着色料として、化粧品にも多く使用されています。クチナシ色素から青の作り方が開発され、アイシャドウの青に利用されるようにもなりました。また、天然黄色染料としてヘアカラー&ヘアトリートメント製品にも使用されています。
生地(草木染め)
生地を染める染料としても、クチナシ色素の歴史は古いものです。平安時代の「延喜式」に、皇太子以外の者が身につけてはいけない色にクチナシの染料が使われた記述があります。現在でも和装で黄色を指す言葉として「黄支子=クチナシ」で染めたような黄色と使われています。