トウカエデ(唐楓)とは?
「唐楓(トウカエデ)」は街路樹や公園の中でよく目にする樹木です。春の新緑、夏の爽やかな緑、秋の紅葉、3つに割れた特徴のある葉っぱは美しくとても人気があります。そんなトウカエデ、どのような樹木なのでしょうか?特徴や日本に伝わった歴史、利用の仕方についてご説明します。
トウカエデの基本情報
分類 | ムクロジ科 カエデ属 落葉広葉樹 |
学名 | Acer buergerianum |
原産 | 中国 |
分布 | 北海道〜九州 |
成長 | 丈夫で早い |
高さ | 10m〜20m |
用途 | 街路樹、庭園樹、鉢植え(盆栽) |
別名「三角カエデ」
トウカエデ には「三角カエデ」の別名があります。英語で「trident maple」に由来します。「trident」とは三叉槍(さんさそう)のことで、ギリシヤ神話の海と津波を司る神ポセイドンが持っている3本に分かれたフォークのような槍のことです。ポセイドンはこの三叉槍を使って大波や津波、嵐を巻き起こすと言われています。
カエデは漢字で書くと「楓」
人気の名前「楓」
自然や植物をイメージする漢字を使った名前は人気です。「楓(かえで)」ちゃんや「楓」をフウと読ませて「楓花(ふうか)」ちゃん、「楓太(ふうた)」くんなどカエデにちなんだ名前が人気です。カエデの爽やかさや美しさをイメージさせます。
植物分類学上の「楓」
カエデを漢字で書くと「楓」です。しかし、植物の分類では「楓」を「フウ」と読みます。フウはマンサク科フウ属の落葉広葉樹です。アメリカフウ(モミジバフウ)やタイワンフウは葉っぱの形や紅葉の様子がトウカエデ にとてもよく似ています。トウカエデとは木肌が違うので見分けることができます。
トウカエデの歴史
東京にある浜離宮恩賜庭園は江戸時代に作られた大名庭園です。ここに植栽されているトウカエデは、日本に初めて伝わったトウカエデと言われています。1721年、江戸徳川幕府の時代、清国(現在の中華人民共和国)から送られた6本のうち5本を、当時の八代将軍徳川吉宗がお手植えされたと伝えられています。
トウカエデの特徴
トウカエデは街路樹や公園樹として身近な樹木です。街路樹や公園樹に選ばれたのはトウカエデが大気汚染や乾燥、病気や害虫にとても強かったためです。では、トウカエデの樹木としての特徴はどんなものでしょうか。葉や幹の木肌など詳しくご説明します。
落葉広葉樹
トウカエデは北海道から九州まで日本に幅広く分布する落葉広葉樹です。落葉広葉樹とは幅が広く平たい裏表のある葉を持ち、冬季など生育に不向きな季節に葉を落とす樹木のことです。
葉
葉っぱは3方向に分かれています。葉っぱは4〜8cmくらい、葉柄は2〜6cmと長く、赤味を帯びることもあります。春の芽出しの葉先は赤みを帯びた色をしています。夏には爽やかな緑、秋には黄色から真っ赤に紅葉します。紅葉の頃、葉腋に冬芽が出ています。冬芽は先が尖り、赤みがかった茶色です。
ボタニ子
葉の形がカエルの手に似ていることから、古くは「蛙手」と呼ばれ、それが「かへで」となり、「かえで」となったと言われています。
幹と枝
上の方向への成長が早く、樹高が20mにもなります。幹や枝は硬く剪定が難しいため、一般の住宅の庭木として育てるのは少し難しいでしょう。木肌は成長すると、乾燥してシワが寄り、縦方向に少しずつ剥がれて、荒れた状態になります。トウカエデの盆栽では木肌の古さを愛でます。
花
トウカエデは雌雄同株です。花は4月から5月に咲きます。薄い黄色で、ひとつの花序(房状のもの)は2〜3cmで、雄花と両性花が混成します。花は20個くらいあり、花びらは5枚です。花序が小さく、色も葉の色に似ているのであまり目立ちません。
種
種は6月ごろに付きます。翼果が平行に付いた特徴的な形をしています。房状に枝から下がるため、見つけることができます。落葉前の10月ごろに茶色に熟し、風に乗って散布されます。
カエデとモミジ
植物の分類学上、カエデとモミジは同じカエデ属の分類になります。見分け方は葉の切れ込みの違いによります。葉の切れ込みの深いものが「モミジ」です。葉の切れ込みの浅いものが「カエデ」です。古くは紅葉することを「紅葉(もみ)ず」といい、それが「モミジ」の由来となりました。
トウカエデの利用方法
トウカエデはどのような使われ方をしているのでしょうか。街路樹や公園樹はおなじみですが、それ以外はどうでしょう。材木としては?メープルシロップは採れるのでしょうか。ご説明します。
トウカエデ(唐楓)の街路樹
トウカエデは丈夫で葉っぱが美しく人気があります。排気ガスなどの大気汚染に強く、夏の乾燥や剪定にも強いため街路樹や公園樹に選ばれます。公園や駅前などの公共の場所やニュータウンの街路樹に植栽されていることが多いので、散歩をしているときなどに見つけられます。
三色彩道
大阪市吹田区、阪急電鉄の北千里駅の近くにある三色彩道は紅葉の美しさで有名なところです。街路樹はアメリカフウ、タイワンフウとトウカエデです。紅葉の時期は3種の木が少しずつ時期を変え、黄色から赤へと移り変わり色付きます。
カエデ材は採れるの?
家具なとで利用されているカエデ材ですが、これはトウカエデのことではありません。家具で利用されているカエデは「イタヤカエデ(板屋カエデ)」のことです。イタヤカエデは幹の直径が1mくらいに成長するので板材として利用できますが、トウカエデは幹の直径が太くなることはありません。
メープルシロップは作れるの?
トウカエデではメープルシロップは採取できません。メープルシロップの元になる樹液を採取する樹種は、サトウカエデです。サトウカエデはトウカエデと同じムクロジ科カエデ属です。トウカエデ より葉が大きく、カナダの国旗にデザインされています。
トウカエデ(唐楓)の育て方
美しいトウカエデを身近に育てたい人は多いのではないでしょうか。庭木として、鉢植えの盆栽としてのトウカエデ について、ご説明します。
庭木としてのトウカエデ
トウカエデは丈夫な樹種です。夏の乾燥や病気・害虫にも強く、水はけがよく、日当たりのよい場所であれば、丈夫に育ちます。成長が早く、木の高さは20mほどになります。秋には大量の葉を落とすので、植え付けるには広いスペースが必要になります。一般の住宅の庭木には大きすぎるかもしれません。
花散里(メープルレインボー)
花散里 ( ハナチルサト ) メープルレインボー
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トウカエデの園芸種として花散里(はなちるさと)があります。斑入りの葉っぱの色が季節の移ろいによって、7色に変化するため、メープルレインボーとも呼ばれます。日当たりのよい、水はけのよい場所に植えます。木の高さは3〜4mに収まることが多く、シンボルツリーに最適の樹木です。
トウカエデの盆栽
高さ10mにもなるトウカエデですが、盆栽なら小さく育てることができます。庭木では難しくても盆栽であれば、身近において春の芽出しや新緑、秋の紅葉、冬の寒木など四季折々の美しさを鑑賞できます。剪定にも強い樹種なので、初心者がミニ盆栽を始めるのにおすすめです。
トウカエデ盆栽を育てるコツ
盆栽として育てるコツ
- 木全体のアウトラインを不等辺三角形に剪定する。
- 1〜2年に一度、植え替えをする。
- 毎日、水を与える。
- 風通しがよく、直射日光が2〜3時間は当たる場所に置く。
- 落葉後に枝が混んでいるところの冬芽を掻き取る。
ボタニ子
トウカエデは樹勢が強いので、すぐに枝が伸びてきます。木のアウトラインの三角形を決めたら、そこから伸びる枝はマメに剪定しましょう!
盆栽素材の入手方法
トウカエデの苗や種は盆栽園や大きな園芸店、ネットでも購入できます。種からもよく発芽します。秋に落葉する頃、街路樹の下に落ちた翼果をいくつか拾い、翼果を取り去り、まくと3月〜4月に芽が出るでしょう。さし木や取り木でも簡単に増やすことができます。
まとめ
トウカエデは身近にあるとても美しい樹木です。いつも通る道や公園に植栽されているはずです。一度、目に止めて観察してみてはいかがでしょうか。季節ごとの葉っぱの美しさや、寒木の冬芽に旺盛な生命力を感じることができるでしょう。
出典:写真AC