モチノキ(黐の木)とは?
庭木として人気がある樹木
冬でも緑の葉をつけたままのモチノキ(黐の木)は、常緑性の樹木です。大きく成長しても姿が乱れないことから庭木として人気があります。また、庭木の利用だけでなく公園樹や街路樹として植樹されるほか、モクセイ(木犀)やモッコク(木斛)と並び「三大名木」として日本庭園でもよく植えられています。
栽培や管理がしやすい
寒さへの耐性は普通ですが、暑さに強く日陰になる場所でも育てられることから栽培や管理がしやすい樹木として知られています。剪定をせずに育てると樹高が高くなりますが、枝の切り落としにも強い性質で、樹木全体を庭に合うサイズで維持することができます。
基本情報
名前 | モチノキ |
和名 | 黐の木 |
学名 | Ilex integra |
分類 | モチノキ科モチノキ属 常緑高木 |
樹高 | 5m~20m |
開花時期 | 4月~5月 |
原産地と生息地
日本や朝鮮半島が原産地です。日本では東北南部から沖縄に分布し、樹木が密集する森林内や海沿いの山地に自生しています。
名前の由来
樹皮を水につけて腐らせると粘着物質の「とりもち」が採れ、狩猟にて野鳥を捕まえる際に使われたことが名前の由来になっています。(現在、とりもちを使った狩猟は禁止されています。)
モチノキの特徴
特徴①葉
革のような質感をもつ葉は大きさが4cm~7cmほどの楕円形で、付け根や葉先が尖っています。葉表は濃い緑色でつやがあり、裏面は明るめの緑色で葉脈がうっすらと見えます。
ボタ爺
モチノキには葉に白や黄色の斑入りの品種もあるんじゃよ。
ボタニ子
斑入りだとお庭の印象がガラリと変わりそうですね!
特徴②花
春に開花時期を迎えます。花の大きさは約3mm~4mmほどで色はクリーム色や黄緑色です。葉と葉のあいだに小さい花がかたまってつきます。雌花と雄花が別々の個体に生じる「雌雄異株」で、実は雌花が咲く幹にしかつきません。
特徴③果実
8mm~10mmほどの小さい実を開花後につけます。果実は果皮に厚みをもつ「核果(カクカ)」になっており、果皮内には固い殻に包まれた種が4粒ほどあります。緑色の果実は秋ごろから色づきはじめ、淡いピンク色が11月~12月になると真っ赤に色づくのが特徴です。
ボタニ子
華やかな赤い実は鑑賞用として人気があるだけでなく、切り花やリース作りにも活用されています。
モチノキの育て方
ボタニ子
水やりや肥料などの基本的な栽培管理のほか、モチノキの増やし方を紹介していきます。ぜひ参考にしてくださいね!
育て方①場所
西日が強くささない、日当たりのよい場所が適しています。日陰でも育つ丈夫な性質ですが、まったく日の当たらない場所だと生育不順になる可能性があるので、木漏れ日のさすような場所が無難です。
育て方②水やり
普段の水やりは自然の降雨のみでじゅうぶんです。夏の暑い時期に地面がからからに乾く場合のみ、朝または夕方のどちらかで水をたっぷりと与えます。
育て方③土
しっかりと養分の含まれた、水はけのよい土を好みます。土壌は多少粘土質であっても育てられます。
ボタ爺
モチノキの成長はとても旺盛で鉢植え向きではないぞい。植え付けは地植えが安心じゃよ。
育て方④肥料
2月~3月の寒い時期に寒肥を与えます。幹の周りの土を浅く掘り、緩効性の化成肥料(粒タイプ)か油かす(固形タイプ)を溝の中にまいて埋めます。
育て方⑤増やし方
増やし方1.種まき
冬に完熟した実を採取して種を取りだし、翌年の春まで乾燥しないよう冷暗所で保存します。種まき用の土は小粒の赤玉土を用意し、発芽まで土が乾燥しないように管理しましょう。
ボタ爺
発芽まで数年かかることもある樹木じゃ。気長に育てるのがよさそうしゃよ。
増やし方2.挿し木
2枚~3枚ほど葉がついている新しい枝を使い、挿し木で増やせます。枝は約10cmの長さに切り、水あげしてから用土に挿しましょう。土は市販の挿し木用土か小粒の赤玉土、鹿沼土が使えます。
モチノキの剪定方法
ボタ爺
前の項でも紹介したように、モチノキは成長するにしたがって全体の姿が整っていく木なんじゃ。剪定による切り落としに耐える強い性質でもあるぞい。
ボタニ子
剪定が不慣れな人でも、安心して作業できそうですね!
剪定方法①時期
6月~7月が剪定にいちばん適しています。成長期に伸びすぎた、幹から飛びだしている枝は、12月~翌年の1月まで切ることができます。
剪定方法②剪定する枝
剪定する枝は以下の通りです。
- 伸びすぎた枝
- 徒長枝
- 混み合っている枝
- 枯れている枝
モチノキの病気と害虫
庭木として育てやすいモチノキですが、病気や害虫の被害に合うことがあります。ここでは注意したい病害虫の対策を紹介していきます。
主な病気「すす病」
すすがついたように枝や葉が黒くなる病気を「すす病」といいます。見た目が悪くなるだけでなく、幹を枯らせてしまう恐れがある病気です。つぎの項の「主な害虫」で紹介する、カイガラムシの排泄物によって、すす病菌が繁殖して黒くなります。気温が暖かくなると発生しやすくなるので、春や夏に注意が必要です。
対策
住友化学園芸 ベンレート水和剤 0.5g×10
参考価格: 701円
容量 | 0.5g×10包 |
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殺菌成分 | ベノミル |
適用 | バラ/6回以内、ピーマン/3回以内 など |
希釈倍率 | ばら・ピーマン/2000〜3000倍 など |
病気になっている枝や葉は早めに取り除き、殺菌剤を全体に散布します。枝や葉が混み合っている部分に発生しやすいので、刈り込んで風通しを良くすることが予防になります。
ボタ爺
ベンレートは水で薄めて噴霧器で散布する薬剤なんじゃ。散布する際は、マスクやメガネなどで体を防護して使うようにするんじゃよ。
主な害虫「カイガラムシ」
カイガラムシは白い粒状の虫です。貝殻のように硬いものや綿毛状になっているものがあり、枝や葉について汁を吸って幹の栄養を奪います。増えすぎるとすす病を引き起こし、樹木が枯れる原因になるので早めの駆除が必要です。
対策
見つけ次第ピンセットなどの先が鋭いもので、ひとつひとつ取り除きます。硬い枝についている場合は、歯ブラシでこすって落とすこともできます。オルトラン水和剤のように駆除に効果のある殺虫剤が販売されていますが、成虫になると薬剤の効き目が薄くなるため、散布は幼虫のうちに行いましょう。
ボタ爺
冬の休眠期間中に殺虫剤を散布すると、カイガラムシの発生を抑える効果が期待できるぞい!
モチノキの種類
種類①「クロガネモチ(黒鉄黐)」
果実は鮮明な赤い色で、数が多いのが特徴です。樹高は10m~20mと高めですが、モチノキと同じく造園に人気がある樹木です。乾燥した葉の色が鉄のような色になることから、名前に「鉄(クロガネ)」がつけられています。「クロガネモチ」の語呂合わせから、「苦労がなく金持ち」という縁起担ぎの樹木としても知られています。
ボタ爺
モチノキの葉柄(ようへい)は黄緑色じゃが、クロガネモチは赤紫色じゃ。葉柄の色で種類を見分けることができるぞい。
種類②「タラヨウ(多羅葉)」
ノコギリ刃のような鋸歯(きょし)のある葉は長い楕円形で、日光を浴びると鏡のように反射する強いつやをもっています。秋に色づきはじめる実は、濃いピンク色から朱色に変化して冬の時期をいろどります。葉の裏側を傷つけると黒く跡が残ることから、戦国時代にはタラヨウの葉を用いて情報が交換されていたといわれています。その特性が別名「ハガキノキ」の由来にもなっています。
ボタ爺
「郵便局の木」としてシンボルツリーに認定されているタラヨウ。その葉ははがきの代わりとして使え、実際に定形外郵便で送ることができるんじゃよ!
ボタニ子
送られた人はサプライズなお便りに、びっくりしちゃいそうですね!
まとめ
秋から冬にかけて、実が淡いピンク色から鮮やかな赤い色に変化するモチノキは、いろどりの少ない冬季のお庭を華やかにしてくれます。栽培や管理も比較的簡単なので、冬の庭がモノトーンで寂しいと思っている人は、ぜひチャレンジして華やかな庭を楽しんでください。
出典:写真AC