パンノキとは
パンノキ(パンの木)はクワ科アルトカルプス属の雌雄異花の常緑高木です。その高さは10〜20mほどにもなりますが、日本で観葉植物としてあるものは原産のものより小さく育ちます。原産地はポリネシア、マレー半島、太平洋諸島、東南アジアなどの熱帯地域です。ハワイではウルと呼ばれ、ハワイアンキルトの絵柄としてもよく利用されており、実をたくさんつけることから、豊穣、裕福の象徴とされています。
英名はブレッドフルーツ
パンノキの学名はArtocarpus altilis、英名はBreadfruit(ブレッドフルーツ、パンの実)です。ブレッドフルーツの由来は、パンノキの実を焼くと、実がフワフワの白パンのような食感になるというところからきています。ブレッドフルーツといわれるくらいですから、味もパンに似ているのか気になりますよね。実は、味はどちらかというとパンというよりも芋に近いです。薄いサツマイモのようだと比喩されています。
果実は栄養豊富
パンノキの実はでんぷん質が多いだけでなく、たんぱく質もとれる栄養豊富な果実です。そのため、熱帯地域ではパンノキの実を主食のひとつとしています。また、昔はその栄養の高さから奴隷用の食料としても利用されていました。さらに栄養面だけでなく、一つのパンノキからはたくさんの実が収穫出来るので、収穫の効率もよいです。
- パンノキの実は生食はしない方がよいといわれています。焼いたり蒸したり火を通した方が無難でしょう。
パンノキは神の化身?
パンノキには神の化身といわれる理由として、こんな伝説があります。昔、四大神のひとりであるクーは人間として、人間の女性を妻に子供たちと幸せに暮らしていました。しかし、あるとき村を飢饉が襲います。このままではみんな飢えてしまうと心を痛めたクーは決心し、家族に別れを告げます。そして自ら地中深く埋まっていくと、そこからパンノキが現れました。たくさんの実をつけるパンノキのおかげで村は飢饉から救われたのでした。
パンノキの育て方
パンノキは原産地でも分かるように本来あたたかい地方を好む植物です。そのため、寒さに弱く、特に気温が10℃以下だと育ちません。日本でパンノキを育てるには季節ごとに置き場所を変えるなど、温度管理が必要です。
育て方①用土環境
パンノキはまず気温が20℃以下になると生育が緩慢になり、10℃以下になれば枯れてしまいます。用土は観葉植物用のもので大丈夫です。鉢底石をしいて水はけがよくなるようにしてあげましょう。通常だと、置き場所は日当たりがよく、風通しがよい場所を選ぶといいですね。日照り不足で葉が黄色くなることもあります。
育て方②水やり
パンノキは春から夏のあたたかい時期と、秋から冬の寒い時期では成長速度が違うため、水やりの仕方も異なります。気温20℃を境にして、生育期と休眠期になるので、それぞれ水やりのポイントに注意して行いましょう。
春から夏の水やり
パンノキは葉が10〜25cmと大きく、そのぶんたくさんの水を必要とします。気温が高い春から夏の時期は、用土が乾いたら水をたっぷりと与えましょう。鉢植えの下から受け皿に水が流れ出るくらいたっぷりと与えて大丈夫です。特に春は乾燥するので、水やりのほかにも、霧吹きで直接葉や茎に水を与えてあげるといいでしょう。葉水は病害虫の予防にもなります。
秋から冬の水やり
気温が低くなる秋から冬は、あまり水を必要としません。水やりは控えめに、むしろ乾燥気味にしましょう。用土が乾いてから2〜3日経ってから水を与えるくらいで大丈夫です。
育て方③肥料
肥料は緩効性化成肥料を春から秋に2、3回程度与えると成長が促進されます。特に、冬に与えると肥料焼けすることもあるので注意しましょう。
育て方④植え替え
植え替えは春から夏、あたたかい時期に行うようにしましょう。パンノキは成長が早いため、植え替えをしないままだと根が鉢の中いっぱいになってしまいます。毎年、もしくは2〜3年に一度、鉢底から根が出てきたら、植え替えをしましょう。植え替えの際の用土も観葉植物用の培養土を使い、鉢底石をしいて水はけをよくするといいですね。
育て方⑤剪定
剪定することで、見た目がスッキリするだけでなく、植物の生育も促進できます。傷んだ部分を取り除くこともできますし、葉が重なった部分などは剪定を行うことで日当たりや風通しがよくなります。自分で剪定をする自信がなければ、専門の業者に依頼する方法もあります。
パンノキの増やし方
パンノキの増やし方は種まきで育てる実生、もしくは根伏せ(ねぶせ)があります。種まきは植物の増やし方として一般的ですよね。それに比べて、根伏せは知らない方も多いのではないでしょうか。根伏せとは挿し木の一種で、切り取った根を土に斜めにさして根が出るのを待つもので、このとき、少し土から先を出しておくようにします。そして根が出たら植え替えをするという増やし方です。
パンノキの置き場所
寒さや乾燥に弱いパンノキは気温に注意すると先述しました。そのため、季節によって置き場所に気を付けなければいけません。冬だけではなく、夜間など気温が下がるときも移動してあげた方がよいでしょう。
夏越し
日当たりが良い場所を好むパンノキですが、直射日光の当たり過ぎによる葉焼けには注意が必要です。いきなり強すぎる日光を浴びると植物は葉焼けしてしまうことがあります。葉焼けしてしまったものは、元に戻ることはありません。特に苗が小さいときは遮光ネットを使用するか、日陰から半日陰と徐々に慣らしてあげるといいですね。
冬越し
寒さに弱いパンノキが日本で冬越しするためには、外では厳しいので鉢植えを室内に移動してあげましょう。このとき要注意なのがエアコンです。あたたかい部屋を保つのに便利なエアコンですが、パンノキに風が直に当たらないように置き場所を選んであげましょう。
パンノキの病害虫
病害虫①ハダニ
まず最も気をつけたいのがハダニです。ハダニは植物の葉の裏に寄生して汁を吸います。ハダニに寄生されると葉に白い斑点が現れ始め、そのままにしておくと枯れてしまうこともあります。ハダニは単為生殖(交尾無しの繁殖)が可能なため、繁殖力が高い点が厄介です。とくに気温が高くて乾いた環境を好みます。
ハダニは水に弱いので霧吹きで葉に直接スプレーする葉水が有効です。ハダニが寄生する前に葉水をしておけば予防にもなります。また、少数であればセロテープ、ガムテープなどで物理的に取り除くことも可能です。大量に繁殖が進んでしまった場合は駆除剤などを用いることも検討しましょう。
病害虫③根腐れ
根腐れとはその名の通り、植物の根が腐ってしまうことです。根の先からだんだん腐っていき、株元まで腐ってしまうこともあります。根腐れの原因で多いのは水やりのし過ぎです。特にパンノキは、夏場は鉢底から水が出るまでたっぷりと水やりをする必要があります。受け皿の水は捨てるようにし、いつも水が溜まっているときは根腐れも疑ってみましょう。
根腐れを起こしてしまった場合、初期であれば腐った根を切り離して植え替えることでまた回復することがあります。このとき、根は弱ってますが、栄養を与えようと肥料を追加する必要はありません。むしろ、肥料焼けする可能性があるため、与えないようにしましょう。
まとめ
あたたかい地域を原産地とし、ハワイではハワイアンキルトの絵柄や食料としても馴染みのあるパンノキ。日本では食料としての販売はないため、パンノキの実を食べる機会はなかなかないかもしれません。しかし、観葉植物としてのパンノキは通販販売もされているので、興味がある方はぜひ育ててみてくださいね。