ヒサカキ(姫榊)とはどのような植物?
サカキ(榊)とは、本来は「本榊」のことを指しますが、本榊の育たない地域では「ヒサカキ(姫榊)」が代わりに供えられています。神棚や仏壇に供えられているのを見かけませんか?ヒサカキは本榊と同様に、神事にも用いられる縁起のよい植物として扱われています。そこで今回はヒサカキと本榊の違い、植物の特徴や花言葉、挿し木のよる増やし方と育て方についてご紹介します。
基本情報
学名 | Eurya japonica |
科名・属名 | ツバキ科・ヒサカキ属 |
原産地 | 日本、朝鮮半島、中国、台湾 |
樹高 | 3m~10m |
開花時期 | 3月~4月 |
名前の由来
ヒサカキの名前は、サカキ(榊)に由来します。サカキによく似た葉をしていますが、サカキよりも小さい葉のため「姫」という字が充てられています。また、「非榊」と書く場合もありますが、これは「サカキに似て、サカキに非ず(あらず)」という意味から名付けられました。他にも実をたくさん付けることから「実榊」と呼ぶこともあり、名前の由来はひとつではありません。
ボタニ子
ヒサカキは本榊と区別するため、地域によって「アクシバ・ヘンダラ・ササキ・シャシャキ」など異なる呼び名があります。
神事に用いられる理由
サカキは「神さまがとどまる神聖な場所」を表す意味があり、日本では古事記や日本書紀にも登場する植物です。神棚や仏壇に供えられているのを見かけることが多いでしょう。本榊と呼ばれる大きなサカキは、社頭の装飾に用いられる伝統の樹木です。しかし、本榊は栽培がむずかしいため、本榊が育たない地域では近縁種のヒサカキが代用として用いられるようになりました。どちらも神仏に供える貴重な植物として扱われています。
ヒサカキの特徴
ヒサカキは、日本の東北以南から沖縄、朝鮮半島、中国、インドなど東アジアに広く分布している常緑性の樹木です。自生のものは10mほど高く成長しますが、庭に植えられたものは2~3mの高さに整えられていることが多いです。葉や枝が神事に用いられるほか、直射日光や日陰にも強いため庭木や生垣に利用されています。
葉の特徴
ヒサカキの葉は楕円形で長さ4~5cm、縁にのこぎりのようなギザギザ(鋸歯)があります。表面は濃い緑色で光沢があり、裏面は淡い黄緑色で光沢はありません。両面とも毛がなく滑らかです。触ってみると少し厚みがあり、しっかりした硬さを感じられます。葉先にわずかな窪み(くぼみ)があるのも特徴です。
花の特徴
早春の3月~4月上旬にかけて、葉の付け根に直径5mmほどの丸い壺型の花を下向きに咲かせます。桜が咲くより先に春の訪れを告げてくれます。スズランのような花を枝の下に並んでつける姿は、とてもかわいらしいです。白・クリーム色・薄紫など淡い色の花が多く、優しい雰囲気を醸し出してくれます。
匂い
かわいらしいヒサカキの花には、独特な匂いがあります。この匂いは「プロパンガスの臭い」や「インスタントラーメンの粉末スープのような匂い」と例えられ、あまり好まれる匂いとはいえません。花が咲いている時期は、風に乗って強い匂い放ち春の訪れを教えてくれます。甘い香りとは異なる、強烈な匂いもヒサカキの特徴です。
花の種類
花の種類は3つあり「雄花・雌花・両性花」に分類されます。雄花には雄しべが12~15本あり、雌しべが退化しています。これに対し、雌花には雌しべが1つあり、雄しべが退化しています。雄花のほうが雌花よりやや大きいです。この雄しべと雌しべの両方がついているのが両性花です。よく観察しなければ、花の違いはわかりません。
実の特徴
花が咲いた後、直径5mmほどの黄緑色の実をつけます。9月ごろに熟して黒紫色に変わり始め、10~2月にかけて枝の下に黒い実がたくさんつきます。実の中には細かい種と水分が多く含まれているため、野鳥が好んで食べにやって来るのです。
次のページでは、ヒサカキの花言葉と本榊との違いを解説します。
出典:写真AC