松葉菊とは?
南アフリカ原産の菊にそっくりな花をつける植物です。種類によって耐寒性や花期にちがいがありますが、性質はとても強く、ほとんど手間をかけなくてもどんどん成長するため、グラウンドカバーやロックガーデンなどによく利用されています。つややかな花びらは日光を浴びるときらきらと輝き、あざやかな花色がとても印象的な植物です。
基本データ
学名 | Lampranthus spectabilis |
英名 | Fig marigold |
別名 | サボテンギク |
科名 | ハマミズナ科 |
原産地 | 南アフリカ |
分類 | 多年草、低木 |
樹高・草丈 | 10~100cm |
開花時期 | 4~5月(ランプランサス) 6~10月(デロスペルマ) |
花色 | ピンク、紫、赤、白、黄色 |
名前の由来
「松葉菊」は、松のような形の葉を持ち、菊にそっくりな花をつけることに由来します。学名の「Lampranthus」は、ギリシャ語の「lampros(輝く)」と「anthos(花)」を合わせたもので、花びらにきらきらとしたつやがあるため名づけられました。また、英名の「Fig marigold」は、マリーゴールドの花に似ていることからきています。
松葉菊の種類
現在販売されている松葉菊には、「ランプランサス属」と「デロスペルマ属」があります。もともとランプランサス属のことを松葉菊と呼んでいましたが、耐寒性に優れよく似た姿のデロスペルマ属も「耐寒マツバギク」という名前で販売されるようになりました。ここではこの2種類の特徴をご紹介します。
ランプランサス属
もともと松葉菊と呼ばれていたランプランサス属の植物は、あまり寒さに強くない半耐寒性多年草です。耐寒温度は-5℃程度ですが、暑さや潮に強い性質があります。4~5月頃に咲く花は花色が豊富で、枝分かれしながら上に向かって育ちます。
デロスペルマ属
-15℃の寒さに耐え、「耐寒マツバギク」と呼ばれる耐寒性多年草です。夏の暑さにも強く、花期が6~10月頃と長いため、現在ではデロスペルマ属の方が主流となりつつあります。カーペット状に横に広がって育つので、グラウンドカバーやロックガーデンに向く種類です。よく見かける赤紫の花の「麗晃(レイコウ)」もこちらに分類されます。
松葉菊の育て方
「よく目にする丈夫な植物」としてときには放置されがちですが、手をかけて大切に育てたときの美しさは格別です。ここでは健康に、より美しく咲かせるための育て方のポイントや、増やし方などをご紹介します。
松葉菊の育て方①栽培環境
日光が当たると花が開く性質があるので、半日以上は日の当たる場所を選びます。乾燥を好むので、水はけがよいことも大切な条件です。また、冬はランプランサス属は-5℃以下にならないよう注意し、鉢植えなら室内の日当たりのよい場所に移動させましょう。デロスペルマ属は-20℃程度まで耐えられるので、寒冷地でも地植えできます。
松葉菊の育て方②水やり
地植えの場合は自然に降る雨水だけで十分です。鉢植えでは土の表面が乾いた翌日以降に、鉢底から流れるくらいしっかりと水やりします。過湿に弱い松葉菊は、水を与えすぎると葉がぶよぶよになり、枯らしてしまうこともあるため注意が必要です。しかし、極端に乾燥しても成長が止まってしまうので、土や葉の状態をよく観察して水やりしましょう。
松葉菊の育て方③用土
松葉菊に最適なのは水はけがよい用土です。自分で配合するなら赤玉土6:腐葉土2:パーライト2の割合でよく混ぜ合わせます。パーライトを川砂に代えてもよいでしょう。また、市販のサボテン用培養土や、山野草用培養土も手軽でおすすめです。地植えの場合は庭土に腐葉土や川砂をよく混ぜ込んで、水はけのよい土にします。
松葉菊の育て方④肥料
痩せた土でもよく育つので、地植えの場合はほとんど必要ありません。鉢植えの場合、3~5月頃と、9~10月頃に1000倍に薄めた液体肥料を月に1度与えてください。また、固形の緩効性肥料なら春と秋に1回ずつ施します。肥料の与えすぎは枯らせる原因にもなるので、少なめを心がけましょう。
松葉菊の育て方⑤植え付け
3~5月か9~11月が適期ですが、真夏と真冬を除けばいつでも可能です。地植えでいくつか植える場合は、20~30cmほどの間隔をとって植え付けましょう。鉢植えの場合は、やや小さめの鉢に植えることで土が乾きやすくなり、根腐れを防げます。
松葉菊の育て方⑥植え替え
土が劣化したり根詰まりを起こすと花つきが悪くなるので、数年に1度か、根がきゅうくつになったら植え替えます。適期は春か秋で、一回り大きな鉢を用意しましょう。急に大きな鉢に植え替えると、土が乾くまでに時間がかかり、根腐れを起こし枯らせてしまう原因にもなるので注意が必要です。
松葉菊の育て方⑦切り戻し剪定
ランプランサス属は、花が終わった6月頃に切り戻し剪定を行い、草丈や株の形を整えます。デロスペルマ属はカーペット状に横に広がって成長するので、伸びすぎた部分を切り戻し剪定しましょう。どちらも、すべての葉を切り落とすと枯らせてしまうので、ほどほどに葉を残すことが大切です。また、何年も植えっぱなしで株が衰えてしてしまったら、挿し芽(挿し木)で新しい株を増やして植え替えます。
松葉菊の育て方⑧病気・害虫
病気
丈夫で病気や害虫にも強く、適切な環境で育てていればほとんど心配ありませんが、まれに過湿や蒸れが原因で「べと病」にかかることがあります。葉に汚れのような薄黄色の模様があらわれ、だんだん広がり薄茶色に変わっていく病気です。湿度が高いとべとべとになることからべと病と呼ばれます。雨や風で伝染するので、見つけ次第病気の葉を取り除き、薬剤を散布しましょう。
害虫
害虫の心配もあまりありませんが、注意するものといえばアブラムシやカイガラムシです。アブラムシに吸汁されると生育が衰え、放置するとウイルスを媒介したり、すす病を誘発することがあるので早めに対処します。また、カイガラムシは成長すると固い殻やロウ質の綿に守られ、薬剤が効きにくくなる厄介な害虫です。排泄物ですす病などを誘発するので、すぐに歯ブラシなどでこすり落とし、薬剤を散布します。
松葉菊の増やし方
増やし方は簡単で、初心者の方でも心配ありません。適期は4~6月か9~10月頃で、若い茎を4~5cmほどの長さに切り取り、肥料分を含まない赤玉土や、パーライト、バーミキュライトなどに挿し、明るい日陰で管理します。1か月ほどで発根してどんどん茎が伸びるので、摘心を繰り返して形のよい締まった株に育てましょう。
挿し芽と挿し木の違い
- 「挿し芽」は草に使うことば。
- 「挿し木」は樹木に使うことば。
- 「天挿し(てんざし)」は枝や茎の先端を挿すこと。
- 「管挿し(くだざし)」は枝や茎の中間部分を挿すこと。
まとめ
松葉菊は環境さえ整えてあげれば、どんどん成長してくれるたくましい植物です。あざやかでかわいらしい花が一面に咲き広がれば、見る人に元気を与えてくれるでしょう。たくさん手をかけて咲かせる花も魅力的ですが、ときには、少しのお手入れで楽しめる松葉菊に癒されるのもいいものですね。
出典:写真AC