アツモリソウってどんな花?
北海道や本州に分布
アツモリソウは寒冷地の草原や明るい林の中に生える多年草です。主に北海道、本州でも中国東北地方など北にいくほど低山などに自生しています。日本の野生のランとしては最大級の大きさの花を咲かせることから、野生のランの王といわれています。
和名 | 敦盛草、アツモリソウ |
学名 | Cypripedium macranthum var.speciosum |
分類 | キジカクシ目 ラン科 アツモリソウ属 |
高さ | 20cm〜40cm(草丈) |
花の大きさ | 5cmほど |
時期 | 4月〜7月 |
アツモリソウの名前の由来
和名である敦盛草(アツモリソウ)の名前は、袋状の花びら唇弁(しんべん)を、平敦盛(たいらのあつもり)が矢を避けるために身につけた防具「母衣(ほろ)」の形に見立てたことが由来します。また、この命名は平敦盛と一騎打ちした熊谷直実(くまがいなおざね)にちなんだクマガイソウと対になっています。
アツモリソウの特徴
花
4月〜7月に径5cm前後の球形に近い花を、茎の頂上に1花(まれに2花)下向きに付けます。花の色は淡いピンク色から紫色で、ラン特有の唇に似た唇弁があり袋状になるのが特徴です。
ボタニ子
花がプクッとした袋状で、なんだかゲームに出てくる植物系モンスターみたいな形をしてるわね!
ボタ爺
日本に自生するランのなかでも最大級の花の大きさなんじゃよ。
ボタニ子
日本最大級!なんだかラスボスっぽい響きで強そうね!
茎と葉
草丈は20cm〜40cmに成長し、3枚〜5枚の葉が互生しています。地中に横に這う短い根茎を持ち、互いに接するように茎を立てます。葉は15cm〜20cmと幅が広く楕円形、膜のような性質で多くの脈があり、折れ曲がっているのが特徴です。葉は茎の基部を包み込む形に付いています。
ボタニ子
茎に交互に生える折れ曲がった大きな葉っぱが特徴的ね!
アツモリソウの仲間と見分け方
日本のアツモリソウの仲間
ボタ爺
在来種のアツモリソウの仲間は、ほとんどが乱獲や盗掘に遭っており「特定国内希少野生動植物種」に指定されておるのが現状じゃ。自生しているアツモリソウを採取するのは原則禁止されておるから注意するのじゃぞ。
ホテイアツモリソウ
本州中部や北海道に生息する大型タイプのアツモリソウです。草丈は20cm~50cmで、花は原種のアツモリソウと同じく袋状の唇弁を持ちます。幅の広い楕円形の葉を4枚~5枚互生し、花の大きさは6cm~10cmとアツモリソウの仲間のなかでも全体的に大きめです。花の色は原種のアツモリソウより濃く桃色から紅色、赤紫色からやや暗い紅紫色など個体差があるのも特徴です。
レブンアツモリソウ
北海道の礼文島に自生するアツモリソウの変種です。原種のアツモリソウと違い花の色は紫ではなく黄色(白に近いクリーム色)です。草丈は25cm~40cmほどに成長します。5月~6月に開花し、花の形は原種のアツモリソウと同じく唇弁が袋状にです。
ボタニ子
そうそう、このレブンアツモリソウが咲く北海道礼文町のマスコットキャラクターがいるの。「あつもん」っていってね…
ボタ爺
レブンアツモリソウの形をしておるのかのぅ?
ボタニ子
そうなの!頭が花になってて、体が茎で手が葉っぱ。意外にかわいい顔してるのよ。興味のある人はそっちも調べてみてね!
キバナノアツモリソウ
寒冷地の針葉樹林の林床に生息する多年草です。茎と葉に細かな毛があり、葉は原種のアツモリソウと同じく、幅広の楕円形で10cm~20cmです。6月~7月にかけて、花茎の頂に3cmほどの淡いクリーム色で茶色の斑点がある花を横向きに付けます。花の形は原種のアツモリソウと同じく袋状の唇弁を持っており、大きさは原種より小さめです。
ボタ爺
ここで紹介した以外にもアツモリソウの仲間はたくさんあるぞ。在来種のほかにも中国産の雲南緑花アツモリソウ、台湾産の台湾黄花アツモリソウ、北米産のプベッセンスやレギナエといった外国産のアツモリソウもあるんじゃ。
ボタニ子
いろんなアツモリソウがあるのね。見分け方のポイントとかあるのかしら?
ボタ爺
主に花の色や模様、大きさが見分け方のポイントじゃ!
アツモリソウの育て方
アツモリソウの仲間は、ほぼどれも絶滅危惧種に指定されており自生しているものを採取するのは禁止されています。しかし、人工的に増殖させ販売されているものを購入し栽培することは禁止されていません。購入するときはきちんと農林水産大臣への届け出がされている業者から購入するようにしましょう。
育て方①環境
アツモリソウ属の植物はどれも寒冷地を好む植物です。そのため、暖地で栽培する場合は20℃以上にならないように気温を維持する必要があり、育てるのは難しいといえます。
ボタ爺
春から夏場の気温上昇に注意が必要じゃ。地植え、鉢植えのどちらでも構わないが、夏場高温になる場所は避けることが育て方のポイントじゃ。
ボタニ子
発泡スチロールを鉢として使う、または鉢を囲うなどすると温度の上昇を抑えられるわ。
ボタ爺
暑さに弱いが、成長には日光が欠かせないため、日当たりがよく風通しのよい場所がいいぞ。
育て方②おすすめの用土
「クリプトモス」という杉と檜の樹皮から作られた土がおすすめです。水はけがよく通気性がよいため、アツモリソウのような山野草の栽培に適しています。
育て方③水やりと肥料
花が咲くまでは、たっぷり水を与えてあげましょう。夏場の高温時は水切れに注意が必要です。乾燥させてしまうとダニが発生する原因になります。肥料は液体肥料がおすすめです。ラン向けの液体肥料が市販されています。花を付けている時期を除いて春先と秋に与えるとよいでしょう。
育て方④植え替え
鉢植えで植物を栽培する場合、株が大きくなりそのままにしておくと根詰まりを起こしてしまうため、2年ごとを目安に植え替えを行います。アツモリソウの植え替えのタイミングは春の新芽の前、花が落ちた後、秋頃のいずれかです。最も植え替えのタイミングとしておすすめなのは、秋頃11月です。
植え替えを行うときのポイント
鉢(もしくは庭や花壇など)から丁寧に取り出す
株についた土を洗い流す
枯れたり腐っている根は取り除く
根が乾かないように注意する
ボタニ子
せっかくの多年草植物だから、お手入れをちゃんとして長く楽しみたいわね。
まとめ
ラン科のなかでも花が大きく、特徴的な形をしており人気の高いアツモリソウ。その人気のせいで乱獲や盗掘に遭い、野生のものは絶滅危惧種に指定されたというのは残念といえるでしょう。しかし、きちんと認定された業者が販売しているものを購入して栽培することは可能です。なかなか野生で見ることは少なくなっているため、興味のある方はこれを期に栽培してみるのはいかがでしょうか。
出典:写真AC