ナナカマド(七竈)ってどんな樹木?
ナナカマド(七竈)は日本全国に分布している樹木です。夏に白い花をつけ、秋は紅葉して赤い実をつける落葉樹で、季節ごとに楽しめるため人気のある樹木です。日本や東アジアが原産ですが、ヨーロッパには別の品種のセイヨウナナカマドが分布して、洋の東西を問わず昔から親しまれている樹木の1つです。
基本情報
和名 | ナナカマド(七竈) |
科・属名 | バラ科ナナカマド属 |
学名 | Sorbus commixta |
原産地 | 日本、東アジア付近 |
別名 | オオヤマサンショウ、ヤマナンテン |
花の色 | 白 |
ナナカマド(七竈)は、季節ごとに楽しめますが、なかでも秋の紅葉が見事で、真っ赤に染まる葉が有名でしょう。葉が落ちた後も赤い実をつけたまま冬を越すため、雪の白さと赤い実のコントラストの風景を楽しませてくれます。別名でヤマナンテンとついています。
名前の由来
ナナカマド(七竈)の名前の由来は、「火に燃えにくくて、7回竈(かまど)に入れても燃え残るほど燃えにくい」という説が一般的でした。「良質の炭にするには7回竈に入れる必要がある」という説が出てきています。言い方は違いますが燃えにくい特徴を表している言葉です。
名前の由来であるかまどは料理用のかまどではなく、炭焼き用のかまどではないかと推察されています。ナナカマド(七竈)は硬質の木のため、じっくりと時間をかけて7回もかまどで蒸し焼きにしないと炭ができなかったという説です。火の神として火から守れる、火で対抗して火から逃れられると考えられたのでしょう。
花言葉
花言葉は「慎重」「賢明」「私はあなたを見守る」「安心」「安全」があります。ナナカマド(七竈)は災難から身を守るという言い伝えがあり、火の神が宿っていると敬われていることに由来しています。ヨーロッパでは、英語のMountain Ashを『灰にならない木』と呼んでいる地方もあり、身の安全を強く意識させる花言葉がつけられているのでしょう。
ナナカマド(七竈)の種類
ナナカマド(七竈)は種類が多く日本国内だけでなく、海外にも分布しています。日本風庭園や洋風庭園のどちらにもしっくりと馴染む樹木であることが、好まれて植えられる理由の1つでしょう。山奥の山林に自生しているものから、庭木、街路樹、盆栽で育てられるものなど種類が豊富です。
タカネナナカマド
タカネナナカマドは、本州の中部から北海道の高山に多く自生しています。高さが1~2mと低く、花が下向きで完全に開かないことや葉が全体にギザギザしているなど、特徴がはっきりして見分けやすい種類です。
ウラジロナナカマド
日本固有種のウラジロナナカマドは葉に光沢がなく裏面が白っぽく見えます。本州中部から北海道にかけて分布し、実がついても下を向かないので株の形がきれいです。
セイヨウナナカマド
セイヨウナナカマドはヨーロッパ原産の外来種です。北欧神話で増水した川を渡るときにナナカマドの板に掴まって助けられたという伝説から、船材の一部に使用されています。実は日本の品種より一回り大きくてオレンジ色のため違いがわかりやすいです。
ナナカマド(七竈)の特徴
ナナカマド(七竈)は幹に独特の臭いがあり、花の匂いも決してよい香りとは言えません。花は幹以上にひどい臭いで、見かけによらずそばに近づけないくらいです。枝は実がついた状態で利用できるため、リースの材料として好まれています。実は完熟するまで時間がかかり、食べることはできますが、毒成分があるので多量摂取は避けるべきでしょう。
ナナカマドの実
ナナカマド(七竈)の実は冬になっても真っ赤なまま枝にぶら下がっています。完熟するまでに時間がかかることと、ソルビン酸が含まれているため実が腐らないからです。ソルビン酸は食品保存料として使われている成分で、細菌や雑菌を取り除く作用があり、実を保護するため冬を越せるのです。
ナナカマド(七竈)の利用法
ナナカマド(七竈)は耐久性のある燃え方をします。生木は燃えにくいため、たき火の種火やバーベキューの串として使えます。よく乾燥させた材木は割れにくくて耐久性があるため、家具やフローリング材、食器などの生活雑貨や熱源となる炭に向いています。
炭として利用
ナナカマド(七竈)の炭は、備長炭にも劣らない上級品として古くから使われています。火力が強く長持ちするため料理に適しています。国内のどこでも生育できるので、炭は火をおこすだけでなく、生活の中で水の浄化や消臭などさまざまな場面で利用できます。
ボタニ子
備長炭はウバメガシを炭にしたものを指しますが、ナナカマドも同じくらいの火力があることから備長炭と呼ばれています。
加工品の素材として利用
木の硬さを活かして、農作業用の道具や大工道具の器具の持ち手に使われます。鍬(くわ)や熊手、ナイフなどの金物の刃に合わせたオーダーメイドの柄を作ると丈夫で長持ちします。丈夫で割れにくいので食器にも適しています。
ナナカマド(七竈)の食べ方
ナナカマド(七竈)の実の苦みは完全に熟すと緩和されます。実にはソルビン酸以外に毒性のあるシアン化合物が含まれています。越冬した実を食べられるのは、寒さの中で凍る、解凍するという過程が繰り返され、苦み成分と毒性が抜けているからです。
果実酒として
日本在来種のナナカマド(七竈)は、実が小さいので種を除くと食べる部分がほとんどありません。完熟した実で果実酒を作れます。水気をよく切った実と氷砂糖を一緒にリキュールに漬けて、4~6ヶ月は寝かせると飲み頃です。
ジャムにして
セイヨウナナカマドは実が大きいので、果肉を使ってジャムを作れます。食べる前に毒抜きが必要です。ソルビン酸やシアン化合物が含まれているため、多量に食べると体に悪影響を及ぼします。素人が作るのはおすすめできません。
ナナカマド(七竈)のまとめ
季節ごとに楽しめるナナカマド(七竈)はとても人気のある樹木です。特に紅葉した赤い葉と赤い実が美しい樹木です。季節ごとに切り花にして部屋に飾れるので、花のある暮らしを楽しめるでしょう。
出典:写真AC