南天の概要
南天は、日本の関東より西の地域や中国中部など、比較的温暖な地域に自生しているメギ科の常緑、または半常緑性の低木です。夏に白い花を咲かせ、冬に赤い実をつけるなど、季節ごとに楽しめることと、古くから縁起の良い植物とされていたことから高い人気を誇ります。日本でも古くから庭木として親しまれてきました。
名前の由来と縁起物
赤い実には厄除けの力がある?
南天の名前は漢名の「南天燭(ナンテンショク)」が由来です。「南天燭」を略して「南天」と呼ぶようになったのが定着しました。また、「ナンテン」という語感が「難(ナン)を転(テン)じる」に通じることから、縁起物の木としても用いられるようになった歴史があります。さらに冬に赤い実をつける性質も「赤い色には厄除けの力がある」と信じられていたことから、ますます縁起のよい植物として愛されるようになった理由です。
風水的にも縁起がよい植物
南天は風水においても、とても縁起の良い植物とされています。風水では邪気が侵入しやすい方位を「鬼門」と呼びます。家の中心から北東を「鬼門」、南西を「裏鬼門」と呼び、この方位に玄関やトイレを設置すると、悪い気がさらに侵入しやすくなるとされています。ですが、この方位に玄関やトイレがあっても、南天のような縁起のよい植物を置けば邪気を浄化してくれます。美しい植物は空間を飾るインテリアとしてもおすすめです。
白い実をつける品種もある
南天の実というと赤い実が一般的ですが、白い実をつける「白南天」という品種があります。ちなみに風水では鬼門の玄関には白南天、裏鬼門の玄関には赤い南天が適していると言われています。南天は可能なら、玄関内ではなく玄関前に置くのがおすすめです。玄関に入り込もうとする邪気を、その場で祓ってくれるからです。
南天の特徴
縁起の良い植物とされたこと、丈夫で育てやすい性質から庭によく植えられています。また、樹高も1mから3mと、あまり高くならない点も庭木として理想的です。園芸植物としての歴史も古く、江戸時代から明治時代にかけて、100種類以上の品種が作られました。現在でも約40種類の品種が栽培されています。
南天の葉の特徴
南天には、幹の先端にだけ葉が茂るという変わった特徴があります。葉色は少しツヤがある深い緑色です。常緑樹とされている南天ですが、晩秋に紅葉する品種もあります。見栄えがよいことと、殺菌・防腐作用があることから、料理のつまものとしてもよく利用されています。
南天の開花時期
南天の開花時期は、季節でいえば初夏にあたる6月から7月頃です。ただし、南天は花よりも実、品種によっては紅葉への変化を楽しむ傾向が強いため、見頃の時期は紅葉する10月、実をつける11月から12月頃、季節でいうと晩秋から初冬になります。南天の赤い実は、その美しさと縁起のよさから、正月飾りとしても用いられることが多いです。
南天の花言葉
南天全般の花言葉は「私の愛は増すばかり」「よい家庭」「機知に富む」「福をなす」などです。「私の愛は増すばかり」は夏に白い花を咲かせ、秋から冬にかけては赤い実をつける様子を、時と共に深まっていく愛情に例えたものとされています。その他の花言葉も、とても良い意味のものがそろっていますが、南天が非常に縁起の良い木であることに由来しているのでしょう。
赤い実の花言葉
同じ花でも花色が違ったり、蕾だったりと状態の違いから花言葉も違ってくる場合があります。同じように南天の実にも、前述の花言葉とは違う意味の花言葉がつけられています。たとえば南天の赤い実の花言葉は「幸せ」「私の愛は増すばかり」「よき家庭」です。良い意味の花言葉が多いのは、縁起物の木とされていることが大きく関係しているのでしょう。
白い実の花言葉
白南天などに代表される白い南天の実の花言葉は、「深過ぎる愛」「機知に富む」「募る愛」です。白色は、花だと気品高く潔癖なイメージが強い花言葉がつけられることが多い色ですが、同じ白でも南天の白い実は、非常に強い愛情を意味する花言葉がつけられています。冬の寒い時期に白い実をつける様子が、どんな苦境にあっても愛を貫く高潔さを連想させたのでしょう。
南天の効能
南天は縁起物であると同時に、古くからさまざまな効能を持つ生薬の木としても知られていました。ここでは、南天の効能について紹介します。
南天の実の効能
完熟した南天の実を、天日でよく乾燥させると「南天実(なんてんじつ)」という生薬になります。煎じて飲むと風邪の咳止めに効くとされています。その効能からのど飴の原料になりました。なお、白南天のほうが効能が高いという説がありますが、確かな根拠はなく、現在では赤南天と白南天の効能に差はないという説が有力視されています。
南天の葉の効能
南天の葉は「南天葉(なんてんよう)」、または「南天竹葉(なんてんちくよう)」という生薬になります。漢方薬としても用いられており、健胃、解熱、鎮咳に効くと言われています。民間では殺菌、防腐、毒消しに効果があるとされ、食品のつまものとして利用されてきました。赤飯の上に南天の葉を置く習慣がありますが、これも南天葉の毒消し効果で食中毒を防ぐという理由があります。
南天の茎・根の効能
南天の茎は咳止めや強壮剤に、根は頭痛、リューマチ、黄疸、筋肉痛などの痛み止めになるとされています。このように、南天はほぼすべての部位に薬効があることから、生薬の木としても重宝されてきた歴史を持つすごい植物です。ただし、その一方で医学知識がない人が薬として使用するのは禁じられています。なぜなら、南天には有毒成分も含まれているからです。
出典:写真AC