ヒイラギナンテン(柊南天)について
学名と分布
ヒイラギナンテン(柊南天)はメギ科ヒイラギナンテン属で、学名は「Mahonia japonica」です。別名にはトウナンテン(唐南天)があります。漢名は十大功労で、薬効成分にちなんだものとされています。ヒイラギナンテンは中国が原産地で、台湾やヒマラヤなどに分布しています。日本に入ってきたのは江戸時代ごろです。
樹木の特徴
ヒイラギナンテンは黄色の花とブルーベリー色の実をつける常緑低木です。高さは2m~3mくらいになります。ヒイラギナンテンの木肌はでこぼこしており、樹皮を剥がすと黄色がかった状態です。この黄色にはベルベリンという薬効成分が含まれています。
葉の特徴
ヒイラギナンテンの葉は、名前のとおり一枚一枚はヒイラギのようです。少し光沢があり硬く、縁にトゲがあります。しかし遠くから見ると、先に向かって互生する枝葉はナンテンのようです。ヒイラギナンテンは、日当たりと寒さなどの条件がそろうと紅葉することもあります。緑のまま冬を越す個体も多いですが、黄色や赤色に紅葉した姿はとても綺麗ですよ。
花と実の特徴
まだ寒さの残る3月頃~4月頃が開花時期です。香りのある、たくさんの小さな黄色い花を咲かせます。ヒイラギナンテンの花の雄しべは、触ると雌しべの方向に動くというのが特性です。これは昆虫に花粉をつけるためだといわれています。花が終わるとたくさんブルーベリー色の実をつけますが、葉だけではなく、実のつき方もナンテンに似ているといわれています。
ヒイラギナンテン(柊南天)とナンテン(南天)の違い
違い①学名と分布
ナンテンの学名は「Nandina domestica」で、ヒイラギナンテンと同じメギ科ですが、ナンテン属になります。別名は南天燭、南天竹などです。ヒイラギナンテンと違い日本も原産地に含まれ、そのほかは中国、インドなどです。
違い②樹木
ナンテンは白い花と、赤もしくは白の実をつける常緑低木です。高さは2mくらいになります。木肌は縦に線が入ったようになっており、樹皮を剥がすと白い状態です。葉のついた枝は緑色で幹に近い部分は赤くなっています。
違い③葉
ナンテンの葉は濃い緑色をしていて、小さめで光沢があります。先に向かって互生しますが、葉枝があまり固くないので枝垂れ気味です。ナンテンの葉の縁にトゲがないことは、ヒイラギナンテンと大きく違う点ですね。ナンテンの葉は冬になると赤く紅葉します。
違い④花と実
ナンテンは開花時期が5月頃~7月頃で、円錐状に花をつけます。黄色の雄しべが目立つ小さな白い花です。ヒイラギナンテンと違って、香りはあまりありません。実の色は赤もしくは白で、10月頃~2月頃まで楽しめます。ナンテンは漢方薬として用いられ、生薬名は南天実です。
ヒイラギナンテン(柊南天)とヒイラギの違い
分類の違い
ヒイラギナンテンのヒイラギとの大きな違いは「分類」といえます。ヒイラギの学名は「Osmanthus heterophyllus」で、モクセイ科モクセイ属です。原産地は日本の温かい地域と台湾などです。葉は対生で硬く光沢があり、縁のとげは古くなるとなくなっていくのが特徴です。開花時期は11月頃~12月頃で、純白の花びらはくるりと反り返り、葉の下に密集して咲きます。赤い実がつくのは5月頃~6月頃です。
ヒイラギナンテン(柊南天)の種類
ホソバヒイラギナンテン
ホソバヒイラギナンテンは「Berberis fortunei」「Mahonia fortunei」といった学名をもっています。高さは3mくらいになりますが、成長が遅い樹木です。明治時代に日本に入ってきました。見分け方として、葉はヒイラギナンテンより細くて長く、縁のトゲはそれほど鋭くがありません。開花時期は9月頃~10月頃で、たくさんの黄色い小さな花が咲きます。開花時期にはキイロスズメバチなどがやって来るので気をつけましょう。2月頃~3月頃には実が熟します。
ナリヒラヒイラギナンテン
ナリヒラヒイラギナンテンは「Berberis confusa」や「Mahonia confusa」などの学名があります。ヤナギバヒイラギナンテンは別名です。木の高さや花の色はホソバヒイラギナンテンとほぼ同じです。見分け方は、葉はホソバヒイラギナンテンよりもさらに細く枝垂れるのが特徴です。開花時期は10月頃~12月頃で、ほかのヒイラギナンテン同様に黄色く小さな花が咲きます。実が熟すのは3月頃~4月頃です。
チャリティー
マホニア・チャリティーはセイヨウヒイラギナンテンとも呼ばれ、学名は「Mahonia x media "Charity"」です。ヒイラギナンテンとマホニア・ロマリフォリアの交配から生まれた品種のひとつです。チャリティーは4mほどの高さになる個体もある大きい種類です。ヒイラギナンテンの葉と形が似ています。たくさんの黄色い花をつけた花穂は長さがあり、伸びる方向は上です。開花時期は11月頃~1月頃で、実の時期は10月頃です。
ヒイラギナンテン(柊南天)の剪定
ヒイラギナンテンはゆっくり育つので、それほど剪定する必要がありません。高さを保ったり枝葉が混み合いすぎたりしたときに剪定しましょう。ヒイラギナンテンが花芽をつけるのは8月頃からで、次の春に花が咲きます。剪定の時期は11月頃~2月頃、もしくは芽吹く前の3月頃がいいでしょう。古い枝葉を剪定します。葉で怪我をしないよう注意してくださいね。
ヒイラギナンテン(柊南天)を植える方角
ヒイラギナンテンは「難を転じる」として、厄除けの効果があるといわれています。また葉にトゲがある植物も、魔除けや厄除けに適しているといわれ、家相や風水で用いられています。ヒイラギナンテンは低木で日陰にも強い性質を持つので、日のあまり当たらない鬼門(北東)に植えるとよいでしょう。
まとめ
ヒイラギナンテンの特徴や、ヒイラギ、ナンテンとの違いについてお伝えしました。ヒイラギナンテンは庭木や生け垣、公園などに植えられ、葉のトゲが不法侵入の対策に活かされています。厄除けとして鬼門対策にも用いられるなど、暮らしに役立つ樹木だといえますね。
出典:写真AC