ハスカップってどんな果物?
ハスカップは東アジア原産の低木で落葉果樹です。和名はクロミノウグイスカグラ(黒実鶯神楽)。低木とはいえ樹高は1m~2mあります。株本から広がるように枝が伸び、葉は旺盛に茂るのが特徴です。ブルーベリーに似た青い果実で、栄養価が高く「不老長寿の実」としてアイヌの人たちがその効能を認めていたといわれています。酸味とほのかな苦みがあります。
ハスカップの産地は寒いところ
かつては北海道各地で自生していましたが、今は栽培がほとんどです。日本では北海道と一部の地域でしか育てられていません。主な栽培場所は、勇払原野のような有機物が堆積した湿地帯や標高の高い寒冷地です。同じ仲間のウグイスカグラは暖地でも見かけますが、ハスカップは暖地での栽培は向きません。
ハスカップの育て方①苗木選び
ハスカップは自家受粉しづらいため、違う品種の樹を近くに植えるとよいでしょう。ですから最低2本は植えたいところです。
ハスカップの育て方②植える時期と場所
植え付けは地域にもよりますが11月~3月頃がよいでしょう。地植えも鉢植えも、できるなら半日蔭が望ましいです。半日蔭とは午前中に日が当たり、午後は日陰になるような場所です。ただし寒冷地の場合は、一日中日当たりがよい場所を選びます。寒さには強いですが暑さに弱いので、夏場は涼しい環境になるよう心がける必要があります。
ハスカップの育て方③土づくり
土壌は水はけがよくて保水性が高いことが大切です。ブルーベリー同様、酸性を好みます。地植えの場合、直径50cm、深さ50cm以上の穴を掘ります。そこにピートモス、鹿沼土、腐葉土を混ぜ込んだものを入れてから植え付けましょう。鉢植えは直径、深さ共に50cm以上の鉢を準備します。用土は小粒の赤玉土7~8に対し、酸度未調整のピートモスを3~2の割り合いで混ぜたものを使います。
ハスカップの育て方④植え付け
地植えも鉢植えも深めに植え付けるのがハスカップを植える際の特徴です。植えた後は株元をワラなどで覆います。根を浅く張る性質があるため、乾燥を防ぐためにしっかりとマルチングしましょう。
ハスカップの育て方⑤病気と害虫対策
アブラムシやハマキムシ、カイガラムシ類の害虫が発生することがあります。害虫は見つけしだい捕殺します。病気はさほど気にする必要はありませんが、水の与えすぎや湿度が高すぎると枝枯れ病や灰色かび病になることもありますので、過湿に注意しましょう。病気の被害が大きくなりそうな場合は落葉果樹専用の薬剤を散布します。
ハスカップの育て方⑥肥料
有機質肥料か速効性化成肥料を2月と10月に与えます。鉢植えの場合は6月にも与えましょう。肥料の窒素比率が高すぎると、栄養が葉にばかりいって実つきが悪くなるので注意しましょう。
ハスカップの育て方⑦水やり
ハスカップは乾燥が嫌いです。鉢植えの場合は、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。鉢底から水が少し流れ出るくらいが目安です。庭など地植えの場合は、夏場日照りが続いた時に与える程度です。ただし、土質によって保水性に違いがありますから、極端に乾燥している時は水やりをしましょう。
ハスカップの育て方⑧剪定
強い剪定をする必要はありません。12月~2月頃、込み合った枝の中の弱い枝や古い枝を間引くだけです。あまり強く切ってしまうと、翌年果実がつきにくくなるので注意しましょう。
ハスカップの育て方⑨株の増やし方
増やし方には株分けと挿し木があります。株分けによる増やし方は11月~2月頃です。挿し木は休眠期挿しと緑枝挿しができますが、剪定の際にするのが楽です。長さ20cmほどの挿し穂を作り、その枝の3分の2程度を土の中に差し込みます。上下を間違えないように注意しましょう。
ハスカップの育て方⑩植え替え
鉢植えにした場合、2年に1度は植え替えをしましょう。根づまりを防ぎ、通気をよくするためです。土をよい状態に保つことが大切です。鉢のサイズや生育具合にもよりますが、一回り大きな鉢への植え替えが必要だと考えてください。適期は花がつく前の12月~3月頃です。
ハスカップの育て方⑪収穫
収穫時期は5月中旬~6月初旬、北海道では6月下旬~7月中旬と約1ヶ月しかありません。また、果実の完熟時期はばらばらです。黄緑から深い青に変わった実から順に摘み取ります。
ハスカップの魅力
白い花とロイヤルブルーの果実
4月頃、薄っすらとレモンイエローを溶かし込んだような白い小さい花が咲きます。その後、黄緑色のふっくらとした円錐形の果実が実ります。徐々に青みを増し、ブルーベリーのような青色になれば熟した合図です。生産地の北海道苫小牧市は市の花に指定しています。果実は「ゆのみ」と呼ばれ親しまれています。
栄養価が高い
ポリフェノールの一種であるアントシアニンの含有量はブルーベリーよりも多く、強い抗酸化作用があります。カルシウムはリンゴの13倍、鉄はミカンの6倍とされ、ビタミンCやミネラルも豊富です。古くはアイヌの人たちが効能を認め大切に食べていたといわれています。
ハスカップはどんな味?
果実は0.5~1gほどで、紫がかった深い青が特徴です。酸味が強いため、ジャムや菓子、酒類に利用されることが多いようです。皮が薄く水分が豊富。果実が傷みやすく、常温での保存が難しいため加工品の流通が多い理由です。冷凍ハスカップやハスカップカレー、ハスカップの水など食べ方も多様になりました。
ハスカップの食べ方
その酸味を活かし、甘さを加えた加工品が流通の主流です。しかし、近年は品種改良が進み、甘さが増したものや、旺盛に実がなるハスカップも出てきています。生で食べようと思えば収穫直後しかありません。自分で栽培すれば栄養豊富なハスカップを生で食べることができます。
まとめ
あまり馴染みのない「ハスカップ」ですが、寒い場所を好むなどの特性や増やし方を知り、日照や水やり、病気、害虫対策などポイントを押さえれば自分で育てることが可能です。暖かな土地には向きませんし、地域によって難易度は高いですが、豊富な栄養素を持った特徴的な果実です。栽培に挑戦してみるのもよいかもしれませんね。
出典:写真AC