日本の品種登録制度とは?
新種植物の品種登録は、育成者にとって大きなメリットがあります。農業大国・日本では、古くから品種の改良が積極的に行われ、様々な新種植物が誕生しました。それに伴って整備されたのが、品種登録制度です。
品種登録は育成者の権利を保護する制度
日本の品種登録制度の目的は、育成者(新品種開発者)の権利保護です。品種登録ができる植物は分類によって細かく定められており、現時点で花き244種を含む420種が登録・指定を受けています。なお日本の制度では、新種を開発した育成者が花や種苗に名前をつけることができます。
品種登録制度ができたきっかけ
品種登録制度ができる以前は、新種の植物ができるとすぐに農家の間で広まりました。ところがこれらは無断で栽培されるため粗悪品も多く、さらに品種改良をした育成者は損をする状況が続きました。そこで育成者の権利保護と適正な栽培を促すために、日本の品種登録制度が誕生しました。
植物の品種登録と商法登録は違う
新種の品種登録とセットで行われることが多いのが、品種の商標登録です。ただし品種登録と商標登録は、必ずしもセットで行う必要はありません。その理由は、それぞれのメリットに注目するとよくわかります。
植物の品種登録のメリット
育成者の権利保護を目的としている品種登録では、登録すると登録者に育成者権が発生します。育成者権があると、登録した花や種苗を独占的に生産することができます。さらに収穫物の販売収入だけなく、権利を保有することによって発生するライセンス料や譲渡料も収入として見込めるようになります。
商標登録のメリット
植物(花き・種苗)を商標登録するメリットは、ブランド化を図ることができる点です。同じ品種であっても商標登録されたブランド名は、商標登録者に使用権(独占権)があります。そのため新品種をブランド化し販路を広げる目的がある場合は、商標登録が欠かせません。
品種登録と商標登録では独占期間が違う
品種登録と商標登録では、独占が認められている期間(独占権)が違います。品種登録では基本的に15年(特定品種に限り18年)ですが、商標登録は更新によって半永久的に独占権を保有できます。
品種登録のデメリット
育成者の権利を保護し、種苗や収穫物の質の低下を阻止することができる品種登録ですが、メリットだけではなくデメリットもあります。
デメリット①登録品種名での商標登録
品種登録する新種の植物には、育成者が名前を付けることができます。ところが品種登録に使用した名前は、商標登録に使うことはできません。そのため品種登録と商標登録をセットで行う場合は、それぞれ異なる名前を付ける必要があります。
デメリット②新種を作っただけでは品種登録はできない
植物の品種登録のデメリットは、登録に至るまでに大変な労力がかかることです。もちろん新種の開発までにもさまざまな苦労がありますが、新種を作るだけでは品種登録はできません。特に品種登録をするには、新種であることを示す専門的な研究結果や資料の作成が必要になります。
デメリット③国に登録料を収める義務がある
審査をクリアし育成者権を取得しても、それだけでは独占権を保有することにはなりません。継続して独占権を持つためには、種苗法で定められた登録料を毎年国に納める必要があります。
年間登録料
育成者権を維持するための登録料は、登録からの経過年数によって変わります。なお1年間の登録料は、登録から1年~3年で6,000円、4年~6年で9,000円、7年~9年で1万8,000円、10年以上で3万6,000円です。
日本国内の種苗法とは?
新品種を登録するには、法律に基づいた厳しい審査をクリアする必要があります。なお日本国内での品種登録には、種苗法が関係します。
現行の種苗法に至るまで幾度となく改正
現行の種苗法が施行されたのは1998年のことです。もちろんそれ以前にも育成者の権利を保護する法律はあり、最初に制定されたのは1947年の農産種苗法です。農産種苗法の公布以降も品種登録に関する法律は幾度となく改正・改名が行われ、その結果として現行の種苗法が成立しました。
海賊版対策が強化された現行の種苗法
現行の種苗法は、海外における日本品種の海賊版対策が強化されています。戦前の農業種苗法も育成者の権利保護が目的でしたが、近年は海外で質の高い日本品種を無断で使用したり、海賊版として販売・商標登録する事例が多発しています。その対策として種苗法が作られました。