イブキジャコウソウとは
香りのよいハーブとして知られ、お料理にも使われるタイムとその日本版であるイブキジャコウソウの違いをご存じですか?イブキジャコウソウの植物としての特徴や利用方法について解説します。
名前
イブキジャコウソウは漢字にすると伊吹麝香草です。滋賀県伊吹山の石灰岩が露出する土地に自生し、麝香(じゃこう)のような香りの高さをもつことからこの名が与えられました。別名は百里香(ひゃくりこう)、こちらの名前も香り高さが伝わってきますね。
植物としての特徴
北海道、本州、九州の日当たりのよい場所に分布する常緑の低木で、地表をはうように成長します。草丈は約3~15cm、卵型の長さ5~10mmの葉は対生し、草全体に芳香があります。開花時期は6~8月で、枝の先に花穂をつけ紅紫色の唇型の花を咲かせます。
イブキジャコウソウとタイムの違いと見分け方
タイムには350を超える種類があり、多くの種がケモタイプを持ちます。その中でもコモンタイム、レモンタイム、ワイルドタイムが代表的な3つの種類となります。そんなタイムとイブキジャコウソウの違いと見分け方のポイントを探ってみましょう。
ボタニ子
コモンタイムとの違い
日本ではシソ科イブキジャコウソウ属のイブキジャコウソウはコモンタイムの種類に属します。しかし、両者の違いはイブキジャコウソウは地面に沿って広がるように生育する匍匐性(ほふくせい)であるのに対し、コモンタイムは縦に伸びる立性であるという点です。
タチジャコウソウとの見分け方
イブキジャコウソウ(学名:Thymus quinquecostatus)とタチジャコウソウ(学名:Thymus vulgaris)とは近い種類で見た目も香りもよく似ています。両者ともに匍匐性で見分けにくいのですが、タチジャコウソウは茎の先端が立ち上がるという特徴をもちますので、茎の先端の形状を観察してください。
イブキジャコウソウの利用方法
タイムは古代からミイラの防腐剤として、また勇気を与える香りとして贈り物に、悪夢に悩まされるときに安眠をもたらす香りとして使用されてきた歴史を持ちます。タイムに似た成分を持つイブキジャコウソウはどのように使われるのでしょうか、その利用法を探ってみましょう。
料理に
スープやハムやソーセージなどの肉類のにおい消しにタイムを利用するのと同様、お料理への利用もおすすめです。加熱しても風味が落ちないので、煮込みやオーブン料理などさまざまな調理法で活躍します。
ハーブティーとして
6~7月の花が咲くころがもっとも香り高い時期です。地上部の茎葉を刈り取り、水洗いして陰干して保存しましょう。約2~3gの乾燥葉をティーポットにいれお湯を注ぎます。紅茶や他のハーブ類、フルーツジュースなどとブレンドすればより飲みやすくなるでしょう。
ハーブティーの効能
イブキジャコウソウは漢方としても利用されてきた実績があります。含有成分であるパラ・シメン、カルバクロール、チモールなどの精油成が発汗作用を持ち、風邪に効能を発揮するといわれています。あたたかいハーブティーを飲んでゆっくり休養をとりましょう。
うがい薬として
イブキジャコウソウは殺菌力が強く、のどの痛みを感じたときにお茶を冷ましてうがいすれば、うがい薬と同等の効果も期待できそうです。薬酒としてアルコールにつけ込み、水で薄めて口腔洗浄剤として使うとお口がスッキリ、二日酔いの頭をクリアにしたいときにもおすすめです。
香料として
芳香が強い時期に刈り取った全草を用いて精油に加工し、香料として使用するのがタイムのもっとも一般的な利用方法です。石鹸、歯磨き粉、化粧品などに使用されています。中でもタイム精油の主成分であるチモールとカルバクロールの抗菌作用に注目した使い方が目立ちます。
グランドカバーとして
地をはうように成長する匍匐性で、暑さ寒さにも強く、一年中美しい緑色の葉をつけるイブキジャコウソウはグラウドカバーとしても利用されます。少々踏まれても平気ですし、日本原産ですから他の種類のタイムと比較すると育てやすいということもおすすめのポイントです。
ボタニ子
次のページでは、イブキジャコウソウの育て方を解説します!
ケモタイプとは:生育環境などにより同じ学名でも異なる成分をもつことです。