ヒメノカリスとは
ヒメノカリスはフロリダ、西インド諸島、中南米に生息する球根植物です。耐寒性がやや弱いため、日本では冬の霜に当てないように管理して冬越しさせます。夏に咲くユニークな形の花は、フラダンスの髪飾りやレイのモチーフにもなる美しさです。草丈30cm程度の小型種や1mにもなる大型種、落葉するものや常緑のもの、甘い芳香のある品種など、約30種の仲間が存在します。
ヒメノカリスの基本情報
学名 | Hymenocallis |
科名 | ヒガンバナ科 |
属名 | ヒメノカリス属 |
別名 | スパイダーリリー、イスメネ、ササガニユリ |
原産国 | フロリダ、西インド諸島、中南米 |
分類 | 球根 |
形態 | 多年草 |
草丈 | 30~100cm |
開花時期 | 6月~8月 |
花色 | 白、淡い黄色 |
耐寒性 | やや弱い |
耐暑性 | 強い |
ヒメノカリスの名前の由来
ヒメノカリスのユニークな花が名前の由来になっています。花の中央に膜が張っているように見えることから、ギリシャ語の「ヒメン(膜)」と「カロス(美しい)」をあわせて、ヒメノカリスと名付けられました。また、細長い花びらがクモの脚を連想させたり、花の中央にクモの巣が張っているように見えたりすることから「スパイダーリリー」とも呼ばれています。
花言葉
ヒメノカリスの花言葉
- あなたを見つめています / 魅惑のささやき / 虚勢
ヒメノカリスの花びらや、長く伸びたオレンジ色のおしべが、甘い香りを漂わせながら揺れる様子から「魅惑のささやき」という花言葉がつけられました。また「あなたを見つめています」は、こちらを見ているかのように、大きく花びらを広げるヒメノカリスにぴったりの花言葉です。
ヒメノカリスの特徴
ヒメノカリスは暖かい地域以外ではあまりメジャーな存在ではないため、まだ見たことがないという方も多いかもしれません。ヒメノカリスのことをよく知ってもらうために、ここからはヒメノカリスの特徴を紹介していきます。
特徴①花
ヒメノカリスの開花は6月~8月頃です。花の中央のアサガオのような副花冠(ふくかかん)と、外側から長く伸びる花びらが個性的な形を作っています。副花冠とは、花冠(花びらの集合体)やおしべが変形してできたもので、ラッパスイセンでいう「ラッパ」にあたる部分です。スパイダーリリーの名にふさわしく、派手に見えながらも品のある、一度見たら忘れられない花です。
特徴②葉
ヒメノカリスの葉は、つやがある緑色で、細長い剣のような形をしています。地際からたくさん茂る様子はシャープで力強い印象です。また、クリーム色の斑が入るものは優しげで、花が咲いていない時期も華やかに見えます。斑入りの品種はあまり流通していないため、見かけたらぜひ手に入れてみてくださいね。
特徴③ヒガンバナの仲間
ヒガンバナとヒメノカリスは、同じヒガンバナ科の植物です。またヒガンバナの英名は「レッドスパイダーリリー」や「スパイダーリリー」で、ヒメノカリスの別名と同じ名前で呼ばれる、かなり近い存在だといえます。しかしフラダンスにも用いられる華やかな印象のヒメノカリスと違い、ヒガンバナは天界に咲く花を意味する「曼殊沙華(まんじゅしゃげ)」や、「幽霊花」などの別名を持つ霊的なイメージを持たれている花です。
ヒメノカリスの鉢植えでの育て方
ヒメノカリスは極端な暑さや寒さが苦手なため、季節に応じて移動できる鉢植えでの栽培がおすすめです。ポイントを押さえれば初心者の方でも簡単に育てられるので、ぜひチャレンジしてみてくださいね。ここからは、ヒメノカリスの鉢植えでの育て方と注意点などを紹介していきます。
鉢植えでの育て方①栽培環境
熱帯に生息するヒメノカリスは、日当たりがよい場所を好む、耐暑性が強い植物です。しかし、強烈な直射日光に当たると葉が焼けて株が弱ってしまうので、夏は明るい日陰に移動させましょう。耐寒性はあまり強くないため、冬は霜が当たらない軒下や室内で、球根を凍らせないように管理します。
鉢植えでの育て方②用土・肥料
ヒメノカリスには、通気性と水はけがよい用土が適しています。市販の草花用培養土か山野草培養土を利用しましょう。自分で用土を配合するなら赤玉土6、腐葉土3、軽石1の割合でよく混ぜあわせます。元肥として緩効性肥料を施し、追肥は月に1回くらいのペースで薄めた液体肥料を与えましょう。花が終わって葉が枯れてきたら肥料は与えません。
鉢植えでの育て方③植え付け・植え替え
ヒメノカリスの植え付け時期は、3月下旬~5月上旬頃です。深めの6号~7号鉢(直径18~21cm)に1球が目安ですが、8号鉢に3球ほどまとめて植えると開花時に華やかになります。球根の頂部を土から少し出して、浅めに植え付けましょう。早めに植え付けた場合は室内の窓辺などで管理して、暖かくなったら屋外の日当たりのよい場所で育てます。植え替えは2~3年に1回が目安です。
鉢植えでの育て方④水やり
ヒメノカリスは過湿が苦手です。常に土が湿った状態では球根が腐ってしまうため、土がしっかり乾いてから、鉢底から流れ出るくらいたっぷり水やりします。また開花中は水切れを起こしやすいため、鉢植えでは特に注意しましょう。
鉢植えでの育て方⑤花後の管理と冬越し
花が咲き終わったら、花茎の根元からカットして、花がら摘みをします。気温が下がってきたら、早めに霜が当たらない軒下などに移動させるか室内に取り込み、水を控えて冬越しさせましょう。球根を掘り上げる場合は、葉が枯れてから掘り上げ、風通しのよい場所で陰干しして乾燥させます。バーミキュライトやピートモスの中に入れて、凍らない場所で保管しましょう。
鉢植えでの育て方⑥病気・害虫
病気や害虫はほとんどありませんが、ごくまれに球根にネダニがつくことがあります。ネダニは、ヒメノカリスに限らず球根植物に発生することがあり、成虫でも1mm以下と小さく肉眼では見つけにくい害虫です。5月~7月に発生しやすく、根や球根を食害しますが、薬剤防除が困難だとされています。球根を植え付けるときによく観察して取り除くか、天日干しや薬剤消毒をするなどの対策をしましょう。
鉢植えでの育て方⑦増やし方
ヒメノカリスの増やし方は分球か種まきです。花を咲かせた後の球根の周りに小さな球根ができるので、2~3年そのまま育て、大きくなったらそっと外して春に植え付けましょう。うまくいけば、その年に花が楽しめるかもしれません。また花後にそのまま花がら摘みをしないで育てると、緑色の大きな種子ができます。開花には数年かかりますが、種まきで増やすことも可能です。
ヒメノカリスの種類
ヒメノカリスの仲間はおよそ30種ほどですが、その中でも日本で流通している、美しく育てやすい5品種を紹介します。
種類①ヒメノカリス・スぺシオサ
ヒメノカリスの代表種ともいわれるのが「ヒメノカリス・スペシオサ」です。流通量が多く、暖かい地域では公園などに地植えされています。甘い香りがする白い花は直径20cmにもなる大きな花です。同じヒガンバナ科の「ハマユウ(浜木綿)」によく似ていて、時々間違えられてれてしまうのもこのヒメノカリス・スペシオサです。
種類②ヒメノカリス・フェスタリス
「ヒメノカリス・フェスタリス」は、花の中央にある副花冠に切れ込みが入り、長い花びらがくるくるとカールします。ヒメノカリスの中では愛らしい雰囲気で、香りがよい人気品種です。
種類③ヒメノカリス・サルファー・クイーン
白いヒメノカリスとは雰囲気が変わる、淡い黄色の「ヒメノカリス・サルファー・クイーン」です。直径は8cmほどとやや小さくなりますが、副花冠が大きいため存在感があります。バランスがとれた美しい花です。
種類④ヒメノカリス・ハシリアーナ
【花球根】ヒメノカリス 白 1球入カネコ種苗
参考価格: 247円
「ヒメノカリス・ハシリアーナ」は、チューリップに似た葉を持ち、他のヒメノカリスと比べて副花冠が小さく、長い花びらと飛び出したおしべがよく目立ちます。かなり個性的で人目を引く花です。
種類⑤ヒメノカリス・リットラリス・バリエガータ
葉にクリーム色の美しい斑が入るのが「ヒメノカリス・リットラリス・バリエガータ」です。スぺシオサによく似た白い花を咲かせます。花のない時期もカラーリーフとして楽しめるため、観賞価値が高い人気品種です。
まとめ
ヒメノカリスは、チューリップやスイセンほど知られた存在ではありません。しかし、甘い香りのクモのような花は、1鉢あったら「めずらしい花!」と人目を引くことでしょう。注意するのは、極端な暑さ寒さを避けて、必要な量の水やりをすることです。よく観察して大切に育てれば、初心者でも美しい花を咲かせられます。ぜひ、ヒメノカリスを育ててみてくださいね。