オシロイバナとは
オシロイバナ(白粉花)は、学名をMirabilis jalapaというオシロイバナ科オシロイバナ属の植物です。別名をユウゲショウ(夕化粧)ともいいます。非常に身近なこの植物について、くわしくご紹介しましょう。
オシロイバナの名前の由来
オシロイバナの種の中には、後述する通り白い粉が入っています。これを化粧に使う「おしろい(白粉)」に見立てたのが、名前の由来です。名付け親は、江戸時代の博物学者である貝原益軒(かいばらえきけん)だといわれています。
オシロイバナの花言葉
オシロイバナの花言葉は、「臆病」「内気」「恋を疑う」です。「臆病」「内気」の花言葉は、夕方に咲いて翌朝にはしぼんでしまうところが、人目を避けたり、恥ずかしがったりしているように見えたのでしょう。「恋を疑う」は、一株から複数の色の花を咲かせる特徴を、不安で心が揺れ動く様子になぞらえたものです。
オシロイバナの種類
オシロイバナの花色の種類は変化に富んでいます。しかし品種名のないものがほとんどです。最も一般的な紅紫色の他に、白、ピンク、赤、橙、黄、絞り模様などがあります。絞り咲きや咲き分けのものでは、同じ株の中で複数の色の花が咲く種類もあるのです。学名のMirabilisはラテン語で「不思議な、素敵な」の意味で、「marvel of Peru(ペルーの驚異)」という英名を持っています。どちらも、一株に異なる色の花を咲かせる驚きを表現している名です。
この不思議な花色は、色の遺伝子(例えば赤の遺伝子と白の遺伝子)の間に優劣がないことが関与しているそうです。園芸種では、30cm以下にまとまる矮性の種類もあります。フタエオシロイバナは、がくのように見える総苞(そうほう)の部分も色づいて二重咲きに見える種類です。花筒が10cmほどになるナガバナオシロイバナ(ミラビリス・ロンギフローラ)という種類もあります。
オシロイバナの特徴
オシロイバナを身近でよく見かけても、観察したことはないという方が多いかもしれません。しかし実は、オシロイバナは面白い特徴を持った植物です。オシロイバナの特徴についてまとめていきます。
オシロイバナの分布
オシロイバナは、ペルーなど熱帯アメリカ原産の園芸植物です。日本には江戸時代に渡来し、現在では野生化したものも日本各地で多く見られます。丈夫で繁殖力が強く、種から簡単に育つ植物です。
草丈等の特徴
オシロイバナは、草丈30~100cmほどです。盛んに枝分かれして横幅30~100cmに広がり、生い茂ります。灌木状になりますが、木質化はしません。葉は三角状卵型で対生し、みずみずしい緑色です。オシロイバナは一般的に、一年草として扱われます。しかし、原産地での本来の姿は多年草です。暖地ではいも状になった根が地下で越冬し、翌年に芽を出します。
花の特徴
花びらに見えるのはがく
花期は6~10月で、直径3cm程度です。5cm程度の細長い筒のような部分の先がラッパのように広がった形になっています。しかし花びらのように見えるのは合着したがくで、花びらはありません。花の根元にあるがくのように見えるのは、葉が変化した「総苞(そうほう、苞ともいう)」です。花粉は大きく、低倍率のルーペでも観察できます。
夕方咲いて翌朝しぼむ
オシロイバナの花は夕方開いて、翌朝の午前中には閉じてしまう一日花です。別名の「ユウゲショウ」は夕方になると咲く特徴から名付けられています。「four-o'clock(4時)」という英名も、花が咲く時間に由来する名です。夏の間次々に花を咲かせ、さわやかな香りがあります。花筒が長く夜間に咲くので、夜行性で長いストローのような口を持つものしか蜜を吸えません。日本ではスズメガ、原産地ではハチドリが、受粉に貢献しています。
実の特徴と白い粉の正体
実に見えるのは偽果
オシロイバナは、6~7mmのお寺の鐘のような形をした黒い種をたくさんつけます。しかし実のように見えるのは偽果の一種です。偽果は、星形のお皿のように開いた総苞(苞)の上で熟し、コロンと転がり落ちます。
白い粉の正体は胚乳
偽果を半分に割ると、画像のように淡褐色の種子が入っています。淡褐色の種皮の中にあるのは胚乳です。胚乳はでんぷん質といわれており、発芽の際の養分となります。オシロイバナの胚乳は、種皮の下で更に、ぴったりと重なった2枚の子葉で二重に包み込まれていることが特徴的です。胚乳を砕くと、オシロイバナの名前の由来となった白い粉になります。
白い粉の正体は、種から芽が出る際の養分となる胚乳だったのね!子供の頃はこの粉でおしろい遊びをよくしたわ。主な成分がデンプンならば、安心して遊べるかしら?
オシロイバナには毒がある?
オシロイバナは全草、特に根や種子に窒素化合物のトリゴネリンという毒があります。誤食すると嘔吐、腹痛、激しい下痢などの中毒症状を起こすので注意が必要です。後述するように、子供が遊ぶ機会も多い植物ですので、誤って口に入れることのないように気をつけましょう。
オシロイバナには毒性があるのね。でも、だからといって子供に触らせないのではなく、安全に楽しく遊ぶ方法を教えてあげたいわ。次項ではオシロイバナの利用法や遊び方をご紹介しますね。
オシロイバナの利用法・遊び方
オシロイバナには薬効もあります。いも状の根は利尿薬や関節炎の薬として、葉は切り傷やたむしの治療に利用されました。現在ではもっぱら子供の草花遊びに利用され、親しまれています。
おしろい遊び
オシロイバナの種を使ったおしろい遊びは、女の子が大好きな遊びのひとつではないでしょうか。オシロイバナの種を割って採れる白い粉を肌に塗ると、まるでおしろいで化粧をしたように見えます。がく(花びらのように見える部分)を爪にこすりつけると、マニキュアのように爪が染まり、お化粧遊びが更に盛り上がるでしょう。毒性があるため、口元には塗らないようにし、遊んだ後はきれいに洗い流します。
色水遊び
オシロイバナのがくの部分で色水遊びもできます。咲き終わってしおれたものを使うとよいでしょう。ビニール袋に花がらを集めて、適量の水を入れます。袋を破らないように注意して袋の外から指でもむと、がくの部分から色素が出てきます。この色素はベタレイン系色素で、アサガオの花などに含まれるアントシアニン系色素とは異なります。
パラシュート遊び
オシロイバナのパラシュート(落下傘)も、子供に親しまれている遊びのひとつです。まず、オシロイバナの総苞の部分を外しましょう。次に、がくの筒状になった部分をそっと支えながら、根元のふくらんだ部分を引っ張ると、雌しべが引き出されてきます。強く引っ張り過ぎると雌しべが切れるので、力加減が大切です。高いところから落とすと、パラシュートのように落下します。
まとめ
オシロイバナは昔から身近にあり、子供のよき遊び道具になっています。身近すぎてよく見ることは少ないかもしれませんが、花や種の構造は独特で興味深いものです。野生化するほど丈夫で、夏の間の夕方から翌日午前中に次々と花を咲かせます。道端などにオシロイバナを見かけたら、観察したり子供と遊んだりしてみてはいかがでしょうか。
出典:写真AC