弱酸性とは
弱酸性とは、中性よりの酸性の状態をいいます。「お肌に優しい」とか「汚れを落とす」という言葉で表現されることも多い弱酸性は、酸性より穏やかな性質をもっており、さまざまなものの調子を整えます。
弱酸性の意味
弱酸性とは、中性よりすこし酸性のほうに傾いた状態のことを意味します。酸性・アルカリ性・中性とは、「水素イオン」という物質の濃度による性質の違いです。これを「水素イオン指数」といい、水素イオンの濃度の単位はpHで表されます。
弱酸性の定義
水素イオン濃度はpH0~14までありますが、弱酸性はそのうちpH3~6の状態のことをさします。水素イオン濃度が高くなるとpHの値が下がり、酸性の性質が増します。一方、水素イオン濃度が低くなるとpHの値が高くなり、アルカリ性の性質が増します。
水素イオン指数(pH)表
pH | 性質 |
0~2 | 酸性 |
3~6 | 弱酸性 |
7 | 中性 |
8~11 | 弱アルカリ性 |
12~14 | アルカリ性 |
ボタニ子
水素イオン濃度が高くなるとpHは低くなり、水素イオン濃度が低くなるとpHは高くなるんだよ!ややこしい~
弱酸性と酸性との違い
弱酸性と酸性は同じ性質をもっているものの、濃度によって性質の強弱が違ってきます。酸性はpH0~2の状態であり、弱酸性はpH3~6の状態のことです。pHが低いほど酸性の性質が強くなるので、弱酸性は酸性の性質が弱まっている状態といえます。
酸性とは
酸性とは、中性よりpHが低く、アルカリ性と中和する性質のことです。強酸性には食物を消化したり、金属を溶かしたりする性質があります。また、雑菌の繁殖を防ぐ働きや、アルカリ性の汚れを防止する働きもあり、この性質を利用してたくさんの洗剤に用いられています。
違い➀食べ物
弱酸性と酸性では、酸味などによる刺激の強さが違います。酸性の食品としてはレモン、コーラ、梅干し、ワインなど、弱酸性の食品にはリンゴ、日本茶、牛乳、ヨーグルト、スポーツドリンク、醤油、ソースなどがあります。酸味が強いものほどpHが低くなり、さらにpH値が5.5より低くなると、歯のエナメル質を溶かす性質も強くなるのです。
違い②人の体
人間の体の中での弱酸性は、体の機能を正常に保つために必要な性質です。一方、酸性は老化を促進したり病気になりやすくしたりするので、排除したい性質です。人間の肌は弱酸性に保つことによって外からの刺激を防ぎ、細胞やウイルスが繁殖することを防いでいます。また、腸内も弱酸性を保つことで、腸の免疫機能が活性化されます。
違い③土壌
弱酸性は作物にとって理想的な状態ですが、酸性は作物にとって好ましくありません。弱酸性の土壌には、土の中に存在する微生物の働きを活発にして、作物の生育を良好にする働きがあります。しかし、酸性の土壌は水素イオンが多いことが原因となり、いくら肥料を入れても作物が吸収する前にどんどん抜け出てしまい、作物がよく育ちません。したがって、元気な作物を育てるために、アルカリ性の性質を用いた土壌改良が必要になります。
ボタニ子
土壌pHの測定方法や土壌改良の詳しい方法については下の記事を参照してくださいね!
作物のpH一覧表
作物には弱酸性の土壌が生育する環境として適していますが、その中でもそれぞれの作物の性質によって、好まれるpHに違いがあります。家庭菜園などで作物を栽培する場合は、pHを調整することによって良好な生育環境を作りましょう。
pH領域 | 作物 |
5.5~5.5 | ツバキ、つつじ、ベゴニア、洋ラン、アザレア |
5.5~6.0 | ブルーベリー、セントポーリア、プリムラ、じゃがいも |
5.5~6.5 | コスモス、マリーゴールド、梅、かき、リンゴ、イチゴ |
6.0~6.5 | バラ、ユリ、キク、シクラメン、スイセン、パンジー、フリージア、エダマメ、インゲン、キュウリ、トマト、ナス |
6.5~7.0 | ガーベラ、スイートピー、ぶどう、ほうれん草 |
弱酸性とアルカリ性の違い
アルカリ性はpH8~14の状態を指し、弱酸性と中和する性質をもっています。したがって、弱酸性や酸性の汚れはアルカリ性の性質で中和することにより、落とすことができます。
アルカリ性とは
アルカリ性とはpH8以上で、酸と中和する性質のことをいいます。アルカリ性には脂肪を鹸化(けんか)したり、たんぱく質を分解したりする性質があります。弱アルカリ性のものは触るとぬるぬるした感触があり、一般的に苦味があります。
違い➀食べ物
弱酸性や酸性の食品は歯のエナメル質を溶かしますが、アルカリ性の食品にはそのような作用がありません。アルカリ性の性質をもつ食べ物には、わかめやひじきなどの海藻類、ほうれん草、こんにゃくなどがあります。食品類で一番pHが高いのはこんにゃくです。
違い②洗剤
弱酸性の洗剤は、水垢や尿の汚れなどのアルカリ性の汚れを落とします。一方、アルカリ性の洗剤は、油汚れや皮脂汚れなどの酸性の汚れに効果を発揮します。弱酸性の洗剤は食器用洗剤や浴室洗剤など多くありますが、いずれも肌に優しいです。アルカリ性の洗剤は、直接触れると手肌が荒れてしまいます。ガスコンロなどの油汚れ用洗剤やカビを落とす漂白剤などにアルカリ性洗剤が使われますが、使用するときは手袋をして、手肌を守りましょう。
違い③温泉
お湯の性質がアルカリ性の温泉は、ぬるぬるとした肌触りが特徴です。一方、弱酸性の温泉は、お湯に触れると少しピリピリとした刺激を感じます。アルカリ性の温泉には皮膚のたんぱく質を溶かして角質を柔らかくし、肌をすべすべにする効果が期待されていますが、酸性のお湯には硫黄分が多く含まれており、殺菌効果やピーリング効果が期待されています。
メリットを生かして弱酸性を取り入れよう
弱酸性は肌の健康を保ち、水垢や尿の汚れを落とし、作物を元気に成長させます。一方、アルカリ性と酸性にもそれぞれのメリットや強い特性があり、状況によってそれらを味方につけることが、健康的で快適な生活を支えてくれる原動力になります。日常生活の中で、pHのメリットをいかして生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
出典:写真AC