はじめに
四季があり、米作りには夏の暑さと豊かな水が必要です。そんな日本には、昔から災害と恵みの両方をもたらす雨と付き合いながら暮らしてきたために、雨に関する言葉が大変多いです。雨の種類を知りながら花をみれば、いつもと違う季節感が持てると思います。
春夏秋冬は何月を意味する?
それぞれの季節を月にわける時に、いくつかの分類方法があります。
気象学的な区分の種類
気象庁が定めた「時」に関する用語
春 | 3、4、5月 |
夏 | 6、7、8月 |
秋 | 9、10、11月 |
冬 | 12、1、2月 |
年度による区分の種類
春 | 4、5、6月 |
夏 | 7、8、9月 |
秋 | 10、11、12月 |
冬 | 1、2、3月 |
二十四節気(にじゅうしせっき)の種類による区分
春 | 立春2/4頃の前後の月 | 1、2、3月 |
夏 | 立夏5/6頃の前後の月 | 4、5、6月 |
秋 | 立秋8/8頃の前後の月 | 7、8、9月 |
冬 | 立冬11/8頃の前後の月 | 10、11、12月 |
雨の種類と季語
季節を短い五・七・五の文でよんだものが俳句ですが、そこには必ず「季語」という季節を表した言葉が入ります。雨の多い日本ならではの雨をあらわした季語がたくさんあり、おなじ状態の雨でも呼び名がちがったりと、奥行きが深いですよね。雨の呼び名の種類がたくさんあることに驚くと同時に、日本語の美しさに感動する雨の季語といえるのではないでしょうか。
春の雨の種類 8選
①春の雨(はるのあめ)
春、しとしと静かに降る雨のことをいい、新春から桜のころまでの雨の総称です。春の雨という響きだけでも心浮きたつ響きがあります。
②花時雨(はなしぐれ)
花の季節に降る、時雨のような冷たい雨ををあらわす呼び名です。時雨だけですと冬の季語になるので「花」をつけて花時雨というように種類を分けました。桜の花のころに花びらをさっとぬらして通り過ぎる雨の種類です。
時雨とは?
さっと、降ったかと思うとすぐに止んでします雨のことです。雨の種類で似たものとしては、「春時雨」があります。春になってから降るにわか雨の名称です。特に桜のころの時雨は、花時雨と風情のある名称が季語となっています。
③春雨(はるさめ)
春にしとしと降る細かい雨脚の雨の名称です。一雨ごとに暖かさをもたらし人々の気持ちを和ませ、木々や草の芽を成長させて花を咲かせる雨といえます。
春雨(しゅんう)
春雨(はるさめ)と同じ漢字を書きますが、こちらの呼び名は「しゅんう」といいます。春の雨をあらわすのは同じですが、音読みにすると少しあらたまった印象があります。
④春の長雨(はるのながあめ)
春先に天気がぐずつき、梅雨を思わせる雨がつづくことがあります。ちょうど移動性高気圧が日本の北寄りにすすみ、南岸に停滞前線がいるときに降りつづきます。菜の花の開花期のころなので「菜種梅雨」という呼び名でもよばれる長雨です。
菜種梅雨(なたねづゆ)
菜の花が咲く時期に降り続く雨の呼び名です。桜流しが桜の咲くころにたいして、菜の花のころにつづく長雨のことをいい、雨に煙る菜の花も風情があります。
⑤春霖(しゅんりん)
春の三月、四月ころに三日以上降りつづく長雨の名称で、「霖」という字は長雨を意味しています。
⑥桜雨(さくらあめ)
桜雨の呼び名は、まさに桜のさくころに降る雨のことをいいます。桜は日本人のいちばん好きな花であり、詩歌の世界では「花」といえば桜を指します。しかし、桜の咲くころは花冷えがあったりで風もつよく花を散らしてしまうことも多く、華やかさとはかなさが同居している雨といえます。
桜流し(さくらながし)
桜の花に降りかかり散らしてしまう雨のことです。鹿児島県肝属地方で使われている桜を散らす雨の名称で、「流す」というくらいなので何日も降り続く雨をあらわしています。
⑦春夕立(はるゆうだち)
春に降る夕立のことで、「春驟雨(はるしゅうう)」と同じ意味です。春から夏に近づくころになると積乱雲が発達して、夕立や雷を伴い激しく雨が降ることがあります。
驟雨(しゅうう)
驟雨は夏のにわか雨のことで、夏の季語になりますから春の季節の雨の種類ではあたまに「春」をつけて区別しています。
⑧リラの雨
リラ(ライラック)は寒冷地でよく育ちます。そのリラが咲く季節に、オホーツク海の冷たい高気圧から冷たい気流が流れこみリラの花をぬらす雨の呼び名です。寒さをともなうことが多く「リラ冷え」を生じることがよくあります。
夏の雨の種類 8選
立夏5月6日ごろから暦のうえでは夏となります。じっさいの区分では4、5、6月を夏として扱うので、5月新緑の美しい季節に降る雨は夏の雨として分類されます。五月雨と書いて「さみだれ」というくらいで、梅雨もはさみ雨が多い季節の走りといえます。
①夏の雨(なつのあめ)
夏に降る一般的な雨をいいますが、夏という言葉に明るいひびきが感じられます。なつあめ、なつさめという呼び名でよばれることもあり、この「夏の雨」も季語として使われます。
夏雨(かう)
夏の雨と同じですが、音読みで表すとすこし固く男性的で豪快な雨のふんいきが感じられます。夏雨(かう)と言うと梅雨末期にしばしば降る豪雨をあらわしています。
②青葉雨(あおばあめ)
木々の青葉に降りかかる雨のことをいいます。春萌え出た新芽がだんだん緑濃く、青葉のころを迎え、その頃に青葉をぬらして降るさまが初夏の風情を感じさせる季語です。同じような意味合いの雨の種類では翆雨(すいう)や緑雨(りょくう)、若葉雨(わかばあめ)という名称のついたものがあります。
翆雨(すいう)
青葉をぬらして降る雨で、緑雨または青葉雨と呼ばれています。「翆」という漢字が翡翠(ひすい)の漢字なので青葉のみどりが光り輝くようすが表されています。
緑雨(りょくう)
新緑の季節に若葉をぬらして降る五月の雨のことです。青葉雨、翆雨、若葉雨と同じ意味でつかいます。
若葉雨(わかばあめ)
緑の若葉をぬらす雨のことをいい、青葉雨、翆雨、緑雨と同じで意味でつかいます。
③五月雨(さみだれ)
五月雨とは陰暦の五月、梅雨時の長雨の名称です。田植えの時期でもあり、うっとうしいと同時に大変貴重な雨といえます。さみだれの「さ」は五月(さつき)のさであり、みだれは水垂れるからきています。
五月雨(さつきあめ)
五月雨(さみだれ)と同じで梅雨をあらわす雨の呼び名です。読み方で感じがちがいますが同じ雨のことを指します。
④紫陽花の雨(あじさいのあめ)
雨に煙る紫陽花は、長雨の梅雨どきの唯一楽しい景色です。紫陽花の雨は花をぬらして降る雨の呼び名です。紫陽花は導管が太く、半日陰の湿り気のある土地に適しているため神社や仏閣の敷地に多く植えられています。紫陽花の雨、かさをさしての紫陽花見物は梅雨の風物詩です。
⑤卯の花腐し(うのはなくたし)
卯の花はウツギの花のことで、ユキノシタ科の落葉灌木であり初夏の白い花をつけます。その時期に卯の花を腐らせるくらいに降り続く雨のことを卯の花腐し(うのはなくたし)という名称で呼んでいます。「卯の花降」とも「卯の花下」とも書きます。
⑥栗花落(ついり)
墜栗花雨(ついりあめ)ともいい、梅雨のはじまるころが、栗の花が落ちる時期と重なることから「あて字」にされました。栗の花は独特のつよい香りがし、強烈な印象でこのような名称が生まれました。
⑦半夏雨(はんげあめ)
暦の雑節(七十二候のひとつ)に半夏生(はんげしょう)があります。七月二日ころで半夏生の開花時期に降る大雨の名称です。雑節(ざっせつ)とは、季節の移ろいなどを動植物を使い短い言葉で表した暦です。
⑧涼雨(りょうう)
夏の終わりのころ涼しさを感じさせる雨のことをいい、季節の変わり目を予感させる雨です。
次のページでは、秋の雨(6種)をご紹介します!
出典:写真AC