モクレン属とは
基本情報
園芸部類 | 庭木・花木 |
形態 | 常緑樹 落葉樹 |
花の色 | 白、黄色、紫、ピンクなど |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 強い |
特性・用途 | 庭木 街路樹 薬用 花に甘い香りがある |
栽培の可否 | 可 |
「マグノリア」はモクレン属の総称
マグノリアとは、モクレン(マグノリア)科モクレン属の約210種類ある樹木の総称です。つまり、モクレンはマグノリアの1品種ということになります。モクレンは英語で”Magnolia(マグノリア)”なので間違いやすいのですが、マグノリアといえばモクレン属の植物のことを指します。
モクレン属の品種一覧と特徴
品種①モクレン
モクレン(木蓮)は木の枝にハス(蓮)に似た花をつけることからモクレンと呼ばれるようになりました。モクレンの花は赤紫色をしているため、シモクレン(紫木蓮)とも呼ばれます。花期は3~4日と短く、かすかに香りのある花が上を向いて咲くのが特徴です。モクレンは庭木や公園樹として植栽されます。
形態 | 落葉低木 |
樹高 | 3~5m |
分布 | 日本 中国 北米 ヨーロッパ |
開花時期 | 4~5月 |
花の色 | 赤紫 |
花言葉 | 「自然への愛」「崇高」「持続性」 |
品種②コブシ
コブシ(辛夷、拳)は早春に枝いっぱいに白い花をつけます。別名はヤマアララギ、コブシハジカミです。花が開く前のつぼみと果実が子どもの拳のように見えることがコブシの名前の由来です。コブシは庭木や街路樹として使われます。
形態 | 落葉小高木~高木 |
樹高 | 5~20m |
分布 | 日本全土(北海道、本州、四国、九州) 韓国(済州島) |
開花時期 | 3~5月 |
花の色 | 白 |
花言葉 | 「友情」「友愛」「愛らしさ」 |
品種③タムシバ
タムシバ(田虫葉)は別名をニオイコブシいい、コブシに似た花に芳香を持つのが特徴です。カムシバ(噛む柴)という別名は噛むと甘さを感じることに由来し、それが訛ってタムシバになったと考えられています。
形態 | 落葉低木または高木 |
樹高 | 3~10m |
分布 | 西日本(高木型) 東日本(低木型) |
開花時期 | 3~4月 |
花の色 | 白 |
花言葉 | 「友情」 |
品種④ホオノキ
ホオノキ(朴の木)の花は、大型で大人の拳ほどの大きさです。花には甘い芳香があり、午後に花を咲かせて一旦閉じ、翌日の午後に再度開花します。これはまず雌しべが成熟し、のちに雄しべが成熟することで、自家受粉を抑制するためと考えられています。
形態 | 落葉高木 |
樹高 | 30m |
分布 | 日本全土(北海道、本州、四国、九州)の山林 |
開花時期 | 6月 |
花の色 | 白~淡黄色 |
花言葉 | 「誠意ある友情」「自然の愛情」 |
品種⑤オオヤマレンゲ
奈良県大峰山に自生するオオヤマレンゲ(大山蓮華)は、ハスの花に似た白い花を咲かせるモクレン属の落葉低木です。雄しべはオレンジ~黄色で、別名はミヤマレンゲ(深山蓮華)といいます。
形態 | 落葉低木 |
樹高 | 1~3m |
分布 | 本州(谷川連峰以西、四国、九州、屋久島) 中国(安徽省、広西省) |
開花時期 | 5~7月 |
花の色 | 白 |
花言葉 | 「変わらぬ愛」「永遠の愛」 |
品種⑥シデコブシ
日本の固有種であるシデコブシ(幣辛夷、四手拳)は、花がしめ縄などにつけるシデ(四出)に似ていることに由来します。コブシの花にも似ているため別名ヒメコブシともいい、庭木や公園樹として利用されます。シデコブシは花びらが10~30枚と多いのが特徴で、花の香りは強くありません。
形態 | 落葉小高木 |
樹高 | 5~15m |
分布 | 日本(愛知県、岐阜県、三重県) |
開花時期 | 3~4月 |
花の色 | 白~ピンク |
花言葉 | 「友情」「自然の愛」「友愛」「信頼」「歓迎」「愛らしさ」「自らの愛」 |
品種⑦タイサンボク
タイサンボク(泰山木、大山木)はアメリカのミシシッピ州とルイジアナ州の州花で、とくにミシシッピ州に多く見られます。日本では公園などに植栽されます。よく枝分かれし剪定にも強い性質のため、庭木としても植えられることの多い常緑高木です。
形態 | 常緑高木 |
樹高 | 20m |
分布 | 北アメリカ南部(ノースカロライナ~フロリダ州) |
開花時期 | 5~7月 |
花の色 | 白 |
花言葉 | 「前途洋々」「威厳」 |
品種⑧ハクモクレン
ハクモクレンの白い花は、レモンやライムなどの柑橘系のような香りがするのが特徴です。上品でよく香る芳香は「高貴な香り」と表現されます。つぼみが大きくなるときに日当たりのよい南に向かって成長するため、花の先端が北を向きます。公園樹、庭木として重宝される樹木です。
形態 | 落葉高木 |
分布 | 日本(本州、四国、九州) |
樹高 | 15m |
開花時期 | 3~4月 |
花の色 | 白 |
花言葉 | 「気高さ」「高潔な心」「荘厳」「崇敬」「崇高」「慈悲」「自然への愛」「自然な愛情」 |
品種⑨サラサモクレン
サラサモクレン(更紗木蓮)はモクレンとハクモクレンの雑種です。10~15cnほどの白から淡いピンク色の花びらをしており、下部が紫色がかっているのが特徴です。サラサモクレンは街路樹などにもよく見られます。
形態 | 落葉中高木 |
樹高 | 6~10m |
分布 | 園芸品種 |
開花時期 | 3~4月 |
花の色 | ピンク(基本) 白~紫 |
花言葉 | なし |
品種⑩キモクレン
キモクレンはキバナモクレン(黄花木蓮)とも呼ばれます。別名はキンジュ(金寿)です。北米原産のマグノリア・アクミナータがもとであり、ハクモクレンとの交配品種の黄色系の花をもつ園芸種を総じてキモクレンと呼びます。ほかのモクレンとの違い、葉が出た後に花が咲くのが特徴です。
形態 | 落葉高木 |
樹高 | 15~30m |
分布 | 園芸品種 |
開花時期 | 4月中旬~5月 |
花の色 | 黄 |
花言葉 | なし |
品種⑪ウケザキオオヤマレンゲ
ウケザキオオヤマレンゲ(受咲大山蓮華)は、オオヤマレンゲとホオノキの交雑種です。15~20cmほどのウケザキオオヤマレンゲの花は枝先で上を向いて咲きます。
形態 | 落葉高木 |
樹高 | 1~10m |
分布 | 本州(谷川連峰以西、四国、九州、屋久島) 中国(安徽省、広西省) |
開花時期 | 5~7月 |
花の色 | 白 |
花言葉 | なし |
品種⑫オオバオオヤマレンゲ
オオバオオヤマレンゲ(大葉大山蓮華)は、オオヤマレンゲの近縁種です。枝先に10cmほどの花が下向きに咲きます。白い花びらに紅色の雄しべがつき、雄しべの色の違いで見分けられます。市販される観賞用、園芸品種の苗はほとんどがこのオオバオオヤマレンゲです。
形態 | 落葉高木 |
樹高 | 1~10m |
分布 | 中国 韓国 |
開花時期 | 5~7月 |
花の色 | 白 |
花言葉 | なし |
モクレン属の用途・活用方法
用途①観賞用
花が美しいモクレン属の植物は、生け花の花材や庭木などの観賞用として重宝します。暑さや寒さに強く手入れも簡単なモクレンは、庭の鑑賞用として人気です。病害虫による被害も少なく育て方も難しくありません。
用途②薬用
コブシ
コブシ(辛夷)の花のつぼみを乾燥させると生薬シンイ(辛夷)になります。頭痛や頭重を伴う鼻炎や蓄膿症の薬として使用されます。
タムシバ
タムシバの花のつぼみは、コブシと同様に生薬シンイ(辛夷)として使われます。シンイは葛根湯加川芎辛夷(カッコントウカゼンキュウシンイ)、辛夷清肺湯(シンイセイハイトウ)などの漢方薬に配合されます。
漢方処方用薬:発散・排膿作用があり、頭痛・頭重をともなう鼻炎・蓄膿症などを治療する薬方に配合される。
ホオノキ
ホオノキの樹皮はコウボク(厚朴)として生薬になります。コウボクは腹痛や喘息を抑える目的として、桂枝加厚朴杏仁湯(ケイシカコウノクキョウニントウ)、半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)などの漢方薬に配合されます。
漢方処方用薬:気を下し、腹痛、脹満、喘咳に用いられる。
用途③食用・調理用
コブシの花・果実
コブシの花は砂糖漬けにするほか、赤い果実を氷砂糖とホワイトリカーなどで漬けこむと薬酒として楽しめます。
ホオノキの葉
ホオノキの葉は20~40cmと大きく、殺菌作用が認められるため、食材を包んだり食器代わりに使用したりします。火にも強いため、葉を乾燥させて味噌を包んで焼く「朴葉味噌」や「朴葉焼き」も利用されています。
用途④香料
コブシ
コブシのつぼみは芳香料として使用され、花は香水の原料になります。花やつぼみのほか、コブシの枝葉からも精油を抽出できます。枝葉から抽出した精油は花のような美しい香りを持つのが特徴です。
タイサンボク
タイサンボクの花にはほかのモクレン科の植物のなかでも特に花の香りがよいといわれています。香水や化粧品のマグノリアの香りといえば、ほとんどがタイサンボクの花の香りを指します。
用途⑤建材
コブシ
コブシの木の特徴は風流なおもむきと美しい木の形です。玩具や雑貨に加工されるほか、樹皮をつけたままの材木は茶室の床柱などに用いられます。
ホオノキ
ホオノキの木材は軽くてやわらかく、加工しやすいので細かな細工が簡単にできます。手触りもよいので、下駄の歯や彫刻、寄木、まな板などに利用されています。
モクレン属の多様性
モクレン属の植物は、香りのよい大型の花を共通としながらも、品種によって形態や樹高に大きな違いがあります。山野に自生するほか、街路樹、公園樹にも多く使われているので都会でも観賞できる多様性をもつ樹木です。