ヌルデはどんな樹木なの?
ヌルデは、雄雌異株の落葉高木です。道路脇や空き地で真っ先に生えてくるのがヌルデです。ヌルデの種子は土の中で長期休眠することも知られています。この性質により、ヌルデは自身の適した環境になると芽吹くという特徴があり、伐採が進んだ土地でも真っ先に生えてくることができます。典型的な陽樹でもあり、日が当たらなくなると枯れてしまいます。
基本情報
学名 | Rhus javanica |
分類 | ウルシ科ヌルデ属 落葉高木 |
分布 | 東南アジア、東アジア、日本 |
別名 | フシノキ、カチノキ |
花期 | 7月〜8月 |
学名に使われている「Rhus」は、ギリシア語の漆の古名をラテン語にしたものです。
樹皮の特徴
ヌルデの樹皮は紫褐色です。ですが、2年目、3年目と成長していくと、不規則に縦に割れ目がはいり、この割れ目が広がり、白い樹皮になっていきます。また、幹を傷つけると白い樹液が出てきますが、これは漆液ではありません。ヌルデはウルシの仲間ですが、漆塗りに使われる漆液が採取できるのはウルシだけです。
葉っぱの特徴
ヌルデの葉っぱは、互生で9~13枚からなる奇数羽状複葉です。葉軸には翼があり、この翼で他のウルシ科の植物と見分けることができます。小葉は長楕円形で葉っぱの回りにはギザギザした鋸歯があります。小葉の裏面と表面の葉脈上には毛がはえています。秋になると、赤く紅葉します。また、ヌルデの葉っぱにはヌルデシロアブラムシが寄生し、虫こぶをつくることがあります。
小葉の間に翼があるのがわかります。これがヌルデの大きな特徴です。
奇数羽状複葉とは
植物の葉っぱの付き方の一つで、小葉が左右に鳥の羽のようについていることをいいます。先端にも小葉がついているのが奇数羽状複葉、ついていないのが偶数羽状複葉といい、ヌルデは奇数羽状複葉に含まれます。羽状複葉はこの状態で一つの葉っぱです。
新芽の特徴
ヌルデの新芽は赤っぽい色をしています。姿は、タラの新芽に似ていますが、タラには幹に棘があることから見分けられます。また、ヌルデの新芽ですが、韓国では山菜として食べることがあるそうです。天ぷらにして食べることも出来ます。
花の特徴
ヌルデの花は、白い色の小さな花を円錐状に多数つけ、開花の時期は7月~8月です。花弁とがくはそれぞれ5枚あります。ヌルデの花は雄花と雌花があり、それぞれ特徴があります。
雄花
ヌルデの雄花の花弁は反り返っています。5本ある雄しべは花弁からつきでているためか、先端についている黄色いやくが目立ちます。
雌花
雌花の花弁は反りかえりません。雌花の中心に雌しべがあるが、柱頭は3つに分かれています。受粉後、雌花は赤みを帯び、すぐに丸く膨らみます。柱頭は黄色で、子房部は淡い紅色をしています。
果実の特徴
ヌルデの果実は核果(かくか)です。扁平な球体の形をしていて、外果皮には茶褐色の細い毛が密集しています。ヌルデの果実は、秋になると果実の下から白い液体のようなものが分泌されます。これは、リンゴ酸カルシウムの結晶です。この果実を食べるのではなく、表面を舐めると塩味を感じます。熟すと、褐色になり、この果実はイカルなどの鳥が食べることがあります。
核果とは
植物の果実の一つで、果実の中央に大きな種が入っている果実のタイプのことです。ヌルデもこの果実のタイプです。
ヌルデの紅葉
ウルシほど鮮やかではありませんが、秋になるとヌルデは紅く紅葉します。ヌルデを含めたウルシ科の樹木の紅葉は、モミジよりはやく紅葉することが知られています。また、紅葉が非常に美しいことからヌルデには「ヌルデモミジ」という別名もあります。
紅葉の時期
ヌルデの紅葉時期は、気温や日照時間にも影響されますが、残暑が収まるころから葉っぱが紅く色づき始めます。場所は問わず、道路脇のヌルデも緑から紅へ紅葉していきます。
ヌルデの用途
ヌルデには様々な用途があり、人々と関わってきました。その用途の中でも、代表的なものを紹介します。
五倍子
ヌルデの葉っぱは、ヌルデシロアブラムシが寄生すると虫こぶを作ります。この虫こぶは、タンニンを豊富にふくんでおり、幼虫が脱出する前に採取し、乾燥させたものを五倍子(ごばいし)と呼んで利用していました。
染料
虫こぶは染料として利用されていました。この虫こぶで染めた空五倍子色(うつぶしいろ)という灰色がかった淡い茶色は、伝統色になっています。この空五倍子色に染まったものを鉄分のある媒染液に入れることで、だんだんと黒く濃くなっていくことから喪服に利用されていました。
お歯黒
ヌルデの五倍子は女性の歯につけるお歯黒にも利用されていました。乾燥させた五倍子を砕き、粉にしたもをお歯黒の材料としていました。お歯黒は、虫歯の予防にもなっていました。
木材
ヌルデの樹皮は色が白く、材質が柔らかいです。そのことから、木彫のも木材や木箱に使われていました。ヌルデの別名であるカチノキは、聖徳太子が蘇我馬子に、物部守屋との戦に際し、馬子の勝利を祈願してヌルデで仏像を作ったことが由来となっています。その他には、水を吸いにくいことから、シイタケの原木にも利用されています。
ヌルデにつく虫
ヌルデには、ヌルデシロブラムシ以外の虫も寄生することがあります。ヌルデシロアブラムシが寄生すると、虫こぶは翼にできますが、フシダニの一種はヌルデの葉っぱに寄生し、そのまま葉っぱにボツボツができたように、小さな虫こぶをつくります。この虫こぶは珍しいものではありません。
ヌルデについてのまとめ
ヌルデは、道路脇では樹木ではなく、草本のような姿で生えています。他の植物よりも真っ先にはえてくる植物、ヌルデ。触ると被れることもありますが、ヌルデはウルシほどではありません。秋になると、そんな道路脇でモミジよりもはやく、美しい紅葉を見せてくれるかもしれません。そんなヌルデを、ぜひ探してみてください!
幹から葉柄が互い違いに生えていることがわかりますね。これが互生です。