野菜の皮は食べたほうがいい?
野菜を調理する際、野菜の皮はむいて捨ててしまうことが多いです。最初から野菜の皮を「捨てる部分」と認識している方も多いでしょう。実際に皮がかた過ぎたり、まずすぎたりして食べられない野菜はあります。しかし「じつは皮も食べられる」という野菜が意外と身近に存在しているのです。
昔は皮ごと食べていた
昔は野菜の皮をむかないで食べる、またはむいても捨てずに調理して食べるのが一般的でした。現代ほど農業技術や保存技術が発達していなかった時代で、食材を安定して手に入れることが難しかったためです。野菜は皮ごと漬物などの保存食にしていました。果物ですが、柑橘類はむいた皮を干して、「陳皮(ちんぴ)」という漢方薬にすることで有名です。
現代は環境保護の観点から、野菜や果物の捨てる部分を極力なくし、ゴミを減らすことが重視されるようになってきているよ。
野菜の皮の栄養とは
栄養学的には、野菜は皮をむかないで食べる方法がおすすめです。野菜の皮は直接日光を浴びるため、光合成で生成される栄養素を果肉よりも多く含むからです。一方で紫外線から身を守るために抗酸化作用も持ちます。また、鳥や虫などの外敵から果肉を守るための香り成分も、すばらしい効能・効果を発揮することが多いです。このため野菜の皮は貴重な栄養素を多く含む部分となりました。
野菜は動物のような骨を持たないため、皮が骨に代わって組織を支える役目を担っています。
野菜の皮がかたいのは、組織を支えるために食物繊維を多く含んでいるからなんだよ。
皮も食べたほうがいい野菜9選
皮も食べたほうがいい野菜①大根
大根の皮は非常に栄養豊富です。大根に含まれているおもな栄養素のビタミンCは、じつは皮付近に特に多く含まれています。また、大根の皮は消化酵素ジアスターゼ、辛味成分のイソチオシアネートを豊富に含む部分です。大根の栄養を効率的に摂取するためには、皮をむかないで食べられる方法が効果的といえるでしょう。
ジアスターゼには消化促進作用、イソチオシアネートには解毒作用と血液をサラサラにする働きがあるんですよ。
大根おろしが効果的
大根の栄養を効率的に摂取するためには、皮ごと生で食べられる方法が有効です。特に有効なのは大根おろしでしょう。貴重な栄養素を豊富に含む大根ですが、栄養素の多くが熱に弱いという弱点があります。しかもビタミンCは水溶性のため、水に浸けるとほとんどが外へ溶け出してしまいます。ビタミンCとイソチオシアネートは時間とともに減少するため、食べる直前にすりおろしましょう。
大根おろしの辛味が苦手なら、皮ごとスライスしたものを細く切って、サラダなどにするのもおすすめだよ。
皮も食べたほうがいい野菜②カブ
カブは冬でも食べられる野菜の1つです。根だけでなく葉もおいしく食べられるため、人気があります。カブにはいろいろな種類があり、小ぶりなものは皮ごと食べられますが、大きなカブの皮はかたくて食感が悪いため、皮をむいて食べるのが一般的です。カブの皮には消化酵素アミラーゼが含まれています。アミラーゼには消化促進作用があり、胃腸薬に用いられるほどすぐれた成分です。
皮ごとおろすのが効果的
カブの皮に多く含まれているアミラーゼは熱に弱いです。そのため、皮をむかないで生で食べるのが効果的な摂取方法となります。大根おろしの要領で、カブを皮ごとすりおろしましょう。この食べ方なら、皮がかたい大きなカブでも問題ありません。カブおろしは大根おろしよりも甘味が強いため、ポン酢だけでもおいしいですよ。
カブおろしのほかにカブの皮をむかないで料理する方法としては、塩もみや漬物がおすすめですよ。
カブの皮をスープの素にする方法もおすすめだよ。カブの皮からは、いいだしがとれるんだ。
皮も食べたほうがいい野菜③人参
人参はβカロテンが豊富ですが、特に皮の近くに多く含まれています。また、人参の皮のすぐ下は抗酸化物質を多く含む部分です。βカロテンは免疫力を高める作用がある栄養素で、抗酸化物質は細胞の酸化を防止し、老化を防ぐ効果が期待できます。これらの栄養素を確実に摂取するためにも、皮をむかないで食べましょう。
サラダやきんぴらが効果的
人参は皮が薄いため、皮ごと食べるなら薄切りや細切りにして調理するだけで大丈夫です。βカロテンは脂溶性の栄養素なので、ドレッシングをかけるサラダや、きんぴらなどの炒め物にすれば栄養素の吸収率が上がります。ただし人参をすりおろしたり、ジュースにしたりする場合は、アスコルビナーゼという酵素が活性化されてしまうので注意しましょう。
アスコルビナーゼは人参に含まれている酵素の一種です。ビタミンC破壊作用があり、人参をすりおろすと活動が活発化します。
アスコルビナーゼは、加熱調理やレモン汁や酢で活動が抑えられるんだ。だから人参のジュースには、レモン汁を入れたほうがいいんだよ。
皮も食べたほうがいい野菜④カボチャ
カボチャは皮ごと食べるほうがよい野菜です。じつはカボチャの皮には貴重な栄養素が豊富に含まれています。カボチャは緑黄色野菜のなかでも、特にβカロテンやビタミン類を豊富に含む野菜として有名です。そしてカボチャの皮には、実の2倍以上のβカロテンが含まれています。
煮物が効果的
カボチャの煮物は皮をむかないで食べられる調理法として、昔から用いられてきました。皮がついたまま煮るのは、栄養を無駄なく摂取するほか、カボチャの実が非常にやわらかいため、煮崩れしないようにする目的もあります。煮物以外では、薄くスライスして焼いたり炒めたりする調理法もおすすめですよ。
皮も食べたほうがいい野菜⑤スイカ
スイカは果物のイメージが強いですが、植物学上は野菜です。意外と知られていない話ですが、じつはスイカの皮には貴重な栄養素が含まれています。その名を「シトルリン」といい、血管を拡張し、血流を改善する作用がある成分です。肩こりやむくみの改善、コレステロール値の低下など、さまざまな健康効果が期待できます。実際に漢方ではスイカの皮を薬の原料にしていました。
漢方ではスイカの皮を「西瓜翠衣(せいかすいい)」と呼び、生薬の原料に用いていました。
シトルリンはスイカの実にも含まれているんだけど、皮のほうがはるかに多く含んでいるんだよ。
浅漬けや炒め物が効果的
スイカの皮は昔から、実を取り除いてから浅漬けや炒め物にするのが一般的でした。スイカはウリ科の野菜なので、漬物や炒め物は相性のよい調理法といえるでしょう。ただし、近年の品種改良で生み出されたスイカの品種には注意が必要です。スイカの新品種のなかには、皮が非常に薄く食べられるほどの厚さがないものがあります。
次は「皮も食べたほうがいい野菜⑥アスパラガス」です。
食料が乏しく飢えることも多かった昔は、捨てる部分をなくす調理法も重要だったんですね。