いにしえより愛される藤の花
藤は古来より日本に自生し、愛されてきた植物です。古くは平安時代から和歌に詠まれ、有名な「源氏物語」にも登場しています。また、江戸時代では松尾芭蕉や与謝蕪村、明治時代では正岡子規などの著名な俳人にも和歌を詠まれており、日本の文化とはとても密接な関係にあります。
ボタニ子
魔除けの力があるとされる
藤の花には、魔除けの力があるといわれます。藤の発音が「不死」「不二」と似ており、縁起のよい花であるからなどが理由です。また、藤は子孫繁栄の象徴とされていることから、人間に害をなす悪霊などを除ける力があるとされたという説もあります。
藤の花には毒がある?
毒があっても食べられる
藤の毒のある部位は、「花」「豆」「さや」の部分です。その中でも豆とさやの毒性は強く、ふくまれているレクチンという成分により、多量に食べるとさまざまな症状が現れます。主な症状では吐き気や頭痛、めまいなどで、重症になると胃腸炎が発生する場合もあります。しかし、強い毒性のある藤は、十分に加熱を加えれば、花や豆は食べることが可能です。
ボタ爺
藤に似た毒性を持つ植物には、インゲン豆などのマメ科の植物があるんじゃよ
ボタニ子
インゲン豆はサラダなどにも使われるから、症状が現れないよう、食べるときはよく加熱しよう!
毒だけでなく薬効もある
藤には毒性だけがあるわけではなく、役に立つ薬効もふくまれています。薬効のふくまれている部位は、主に種子です。種子は古くから便秘などに効果的とされ、下剤として少量を煎じたものが使用されます。
藤の花の下処理
手順➀房から花を外す
藤の花の下処理をする際には、まず房から花を外します。このとき、一つ一つを外しているととても手間がかかるため、上から手でこそげ取るようにすると楽に外せます。また、種子のできかけている、すでにできている花がある場合は、毒の成分を避けるため取り除きましょう。
手順➁雄しべやガクなどを取り除く
房から花を外した後は、花から雄しべやガクなどを取り除いていきます。花を取って優しく開くと、その中にガクや雄しべ、花枝などがまとめてあるため取り外しましょう。花を一つ一つ処理していくので手間がかかりますが、雄しべやガクなどを取り除くことによって食感をよくできます。
手順➂よく洗う
雄しべやガクを取り除いた花は、ボウルで水を換えながらよく洗います。屋外で管理されていた植物には虫や菌がついている可能性もあるため、念入りに洗いましょう。洗い終わった花をすくうと、落ちたゴミなどがボウルの底に沈殿しています。それを取り除いてから、1時間ほどを目安に日光の下でさらします。
藤の花の食べ方
藤の花はジャムや砂糖漬けなど、簡単な調理法でも美味しく食べられます。手軽にチャレンジできるレシピが多いため、藤の花が多く取れる春にぜひ試してみてください。
食べ方➀藤の花の天ぷら
材料(1~2人分)
藤の花:手のひら分位
小麦粉:大さじ2〜3
水:大さじ2〜3
塩・コショウ:少々
作り方
- 天ぷらに使う油を、170℃ほどに熱する
- 小麦粉:水を1:1になるように混ぜ合わせ、塩やコショウなどで味付けをする
- できた衣をかき混ぜ、かき混ぜた際に浮いてくる泡をすくい、さらにかき混ぜる
- できあがった衣を、下処理をした藤の花につけ、きつね色になるまで揚げる
- 香りが抜けないよう、揚げ時間は短時間にし、衣が全体についたら引き上げる
ほかの山菜とも合う
藤の花は香りが高く、サッパリとした味わいのため、ほかの山菜ともよく合います。藤の花と癖の強い山菜と合わせると、癖がやわらぎ食べやすくなります。また初夏の山菜と一緒にかき揚げにしてみるのもおすすめです。
食べ方➁藤の花入り卵のあんかけ丼
材料(1人分)
ゆで竹の子:50g
干ししいたけ(カットしてあるもの):4g
ねぎ:1本
藤の花:ひとつまみ
三つ葉:2本
すりおろし生姜:一かけ分
卵:2コ
ご飯:1人分
•塩こしょう:少々
•ごま油:少々
•砂糖:ひとつまみ
•酒:大1
*チキンスープ:0.5カップ
*塩:少々
*しょうゆ:少々
*酢:大1
*ケチャップ:大0.5
*砂糖:大0.5
*水溶き片栗粉:大1+水1
しょうゆ(炒める時):少々
サラダ油:小1+大0.5
ごま油(仕上げ用):少々
作り方
- たけのこは細切りにし、干ししいたけを水で戻す
- ねぎを薄切りにした後、三つ葉をざく切りにする
- サラダ油小さじ1で、たけのこ、干ししいたけ、しょうがを炒める
- 炒めながら醤油を少々かけ、色づいたら皿にあげる
- 卵とねぎを混ぜ合わせ、サラダ油大さじ1/2で半熟に焼く
- 炒めたたけのこ、干ししいたけ、しょうがを焼いたものに加え、さらに藤の花を加える
- 丸く整えながら焼き、仕上げにごま油を少々かける
- *マークのついた材料を混ぜ合わせ、甘酢あんを作る
- 器にご飯を盛り、卵と三つ葉をのせたら完成
食べ方③藤の花のサラダ
材料(4人分)
藤の花:一房
ウド:1本
砂糖:大匙1/2
塩:大匙1杯
甘酢:大匙3杯
作り方
- 下処理をした花に、甘酢などお好みの酢を回しかける
- 10分ほど馴染ませたら、汁を切ってウドやお好みの野菜と一緒に器に盛り合わせる
- ドレッシングなどをかけ、完成
春のパワーサラダの彩りに
体調を崩しやすい季節の変わり目におすすめなのがパワーサラダです。藤の花は春~初夏の季節の変わり目によく取れるため、食材にぴったりです。ナッツやチーズなどの栄養満点なサラダに、アクセントとして藤の花を入れましょう。彩りも美しく、食欲をそそりますよ。
食べる際の注意点
藤の花はとても美味しく食べられる植物ですが、毒の成分に気をつけるなど、食べる際に注意点がいくつかあります。注意点を守り、藤の花を安全に食べましょう。
注意点➀しっかりと下処理をする
藤の毒は、とても強力です。どのような料理に使う際でも、お湯などでしっかりと加熱してから調理に使いましょう。死亡例はないものの、ふくまれている成分のレクチンは食中毒を引き起こすこともあります。きちんと洗い、加熱する手順は守りましょう。
注意点➁一度に多く摂取しない
藤にふくまれる毒の成分、レクチンは加熱すれば毒性がほぼ失われるとされています。しかし、加熱しても完全に毒性は消滅せず、大量に摂取してしまうとフジ毒の中毒症状が現れる場合があります。花を食べる際には何房もまとめて食べないようにし、豆を食べる際には10粒以内に抑えて食べてください。
毒に気をつけて藤の花を美味しく食べよう
藤は悪霊など怖いものから守ってくれるとされ、また山菜としても美味しく食べられる植物です。天ぷら、砂糖漬け、ジャム、サラダなど使うことも可能です。おもてなしの料理にもぴったりといえますね。自宅の近くなどに藤の花が咲いている場合には、毒に気をつけてぜひ食べてみてはいかがでしょうか。
源氏物語に登場する藤といえば「藤壺の宮」という、源氏の君の初恋の人が有名ですね!