花粉症の人はバラ科の果物に注意!
果物によるアレルギーは、花粉症に罹患している人が多く発症することがわかっています。バラ科の果物の場合は、シラカバやハンノキなどのカバノキ科の花粉でアレルギーを起こす人のリスクが高くなっているのが特徴です。このように花粉症の患者が果物に対してアレルギーを起こすことを、口腔アレルギー症候群のなかでも「花粉・食物アレルギー症候群(PFAS)」と呼んでいます。
花粉・食物アレルギー症候群(PFAS)
花粉・食物アレルギー症候群は、花粉症の原因物質と果物や野菜に含まれている特定の物質との交差反応により引き起こされるといわれています。果物だけでなく生野菜や大豆などでも発症例があり、ほとんどの場合は口や喉周辺にかぎってアレルギー症状が発現し、数分ほどで治まります。ただし、まれに嘔吐や呼吸困難などアナフィラキシーショックという重篤な症状になる場合もあるため、軽いからといって油断はできません。
ボタニ子
生で食べるときに発症するのがほとんどなので、ジャムやアップルパイ、梅干しなどは食べても大丈夫ですよ!
交差反応とは?
花粉症のアレルゲン(原因物質)となるたんぱく質の分子構造は、特定の果物や野菜のたんぱく質の分子構造と一致しています。このため花粉症の人のなかには、アレルゲンの構造が一致している果物を花粉と勘違いして、アレルギー反応を引き起こすことがあるのです。このような状態を交差反応といいます。
花粉と果物なんで一見なんの関係もなさそうなのに、それぞれが持つたんぱく質の分子構造レベルで一致しているのね!
治療法は確立していない
花粉-食物アレルギー症候群は、アレルギー症状を投薬で抑えられますが、根本的な治療方法は確立されていません。
- 現状、明確な治療法はありません。
- しかしながら、抗原を含むエキスを舌の下に投与しアレルギー症状を軽快する舌下免疫療法や皮膚から投与する皮下免疫療法等を花粉-食物アレルギー症候群へ応用する研究が進められています。
ボタ爺
罹患している人が増えておるのじゃから、頑張って治療法を確立してほしいぞ!
植生によってアレルゲンとなる花粉が違う
花粉・食物アレルギーは、土地の植生によってアレルゲンとなる主な花粉が違ってきます。例えば北海道では、シラカバ花粉症とバラ科の果物によるPFAS(花粉・食物アレルギー症候群)が増加しています。関東地方では、ブナやシイノキの花粉症とバラ科の果物でのPFASが多いようです。一方西日本では、オオバヤシャブシの花粉症とバラ科の果物でのPFASが、シラカバなどよりも多く発生していると考えられています。
ボタニ子
シラカバとオオバヤシャブシはブナ目カバノキ科、ブナとシイノキはブナ目ブナ科です。仲間の種なんですね!
バラ科の果物にアレルギーがある人の注意点
バラ科の果物でアレルギーを発症する人は、果物だけでなく同じバラ科のアーモンド、特定の野菜、大豆などでも発症していることがわかっています。
注意点➀軽症だからと油断できない
花粉・アレルギー症候群の症状は、口や喉の軽い痒みや違和感から始まります。食べた直後から痒くなったりイガイガしたりしてもすぐに治まるため、アレルギーだと気付かないことも多くあります。しかし、少しの痒みだから大丈夫と勝手に判断してアレルギーを起こす果物を食べ続けるのは危険です。まれに全身症状が出てアナフィラキシーショックを引き起こすこともあるためです。違和感を感じた食べ物は、食べるのをやめましょう。
注意点②豆乳にも要注意!
バラ科の果物で花粉・食物アレルギー症候群になる人は、豆乳でもアレルギー反応が起きることが国民生活センターに報告されています。口や喉に痒みを感じてもアレルギーとは思わずに飲み続けた結果、アナフィラキシーショックを起こしてしまったというケースもあります。バラ科の果物でアレルギーが発症する人は、今後豆乳でもアレルギーになる可能性があることを十分注意し、症状が出た場合は速やかに医療機関を受診しましょう。
注意点③まだ症状が出ていない果物も慎重に
バラ科の特定の果物を食べてアレルギーを発症している人は、それ以外のバラ科の果物に対してもアレルギー症状が発現する可能性が高くなります。痒くなったり違和感を感じたりしなければ食べても大丈夫ですが、「もしかしたら発症するかも」という気持ちを忘れずに、少量ずつ食べるほうがよいでしょう。もし少しでもいつもと違う症状に気がついたら、食べるのを避けるのが安心です。
注意点④バラ科以外にも発症が広がることも
バラ科の果物や野菜でアレルギーが起きたら、アレルゲンに共通の構造をもっているほかの科の果物や野菜でも発症することがあります。例えば、シラカバ花粉症の罹患者がバラ科のナシやモモにもアレルギー症状を発現すると、ニンジン、パセリ、セロリなど同じような構造を持つ野菜にもアレルギー症状が発現する可能性があることがわかっています。
バラ科の果物 | 共通の構造をもつ果物や野菜 |
モモ、ナシ | セロリ、ニンジン、 パセリ、 |
サクランボ りんご |
ピーマン |
モモ、りんご、 ナシ |
大豆 |
例えばモモでアレルギーが起きたら、モモ以外のバラ科の果物や大豆、ニンジン、パセリ、セロリなどの野菜でも起こる可能性があるということね。
ボタ爺
残念ながら、PFASの症状が出たら食べられなくなる果物や野菜は増える一方だと考えられておるのじゃ。
おいしくてもバラ科の果物に気をつけよう
りんご、イチゴ、ナシ、モモなどどれをとっても、バラ科の果物には季節ごとにおすすめの種類がたくさんあります。花粉症の人で現在バラ科の果物に反応が出ていない人でも、たくさん食べることによって今後発症する可能性があります。バラ科の果物を食べるときは、口や喉に違和感がないか意識しながら食べることを心がけましょう。
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出典:写真AC